テンカラ釣りは身軽だ。スリルに満ち、シンプルだからこそ奥も深い。「源流のイワナはどんな毛バリだって食う」そう言うファンも中にはいるが、より精度の高い釣果を出すべく突き詰めたこだわりを持つ人も当然多い。ここでは新潟県中津川水系をホームにするテンカラ歴40年のこだわり派を紹介。
遺伝子レベルで刺激するイワナ毛バリの探究者
写真・文◎編集部
テンカラ釣りは身軽だ。スリルに満ち、シンプルだからこそ奥も深い。「源流のイワナはどんな毛バリだって食う」そう言うファンも中にはいるが、より精度の高い釣果を出すべく突き詰めたこだわりを持つ人も当然多い。ここでは新潟県中津川水系をホームにするテンカラ歴40年のこだわり派を紹介。
この記事は月刊『つり人』2017年9月号に掲載したものを再編集しています
◆関連記事初めの一歩・渓流釣りスタートガイド >>
目次
トンボに抱かせて釣れる毛バリを研究
新潟県十日町市に住む小林彰さんは40年前、30代のころにテンカラ釣りを始めた。
「テンカラの名手は10人10派のこだわりがあります。地域や川によって正解がいくつもある。私は自分なりに簡単に釣れる毛バリや釣り方はないものかと研究してきました」
小林彰さんの本職は友禅染色の職人。清津川や中津川水系、奥志賀の谷にも通じる
そう言う小林さんはまず「毛バリとゴミの違いは何か?」を考えた。魚が毛バリをエサと思うかゴミと思うか、その決定的な違いを見つめ、気付いたことが体節だった。イワナが食べる水陸の多彩な虫はもちろん、太古の虫にも共通しているのは頭や胴に節目があること。これを体節といい、腹部にはしる幾筋もの線を腹節という。魚が毛バリを虫と認めるひとつの要素は、この体節、腹節と考えたのだ。小林さんの毛バリは胴部を目立たせ、体節となる筋がハッキリと見えるように工夫されたもの。胴の素材はクジャクの羽根。最も色の多い中心部を抜き取って使用する。羽根を意識したハックルはグリズリー。どこから見ても胴が目立つように少なめに巻き、アイに対して直角に立つようにする。アイの付近は虫の目を意識して赤い補修糸を巻く。こだわりのひとつが自己融着テープ。胴のボリュームを出し、沈めやすくする。
水面下で勝負する小林さんの毛バリ
「自宅の庭はオニヤンマやギンヤンマの通り道になっています。昔よくやった実験がトンボに毛バリを抱かせること。風のある日に毛バリにイトを結んでたなびかせていると、トンボが獲物と思って毛バリを抱く。どれだけ長く抱いているか、その時間をいくつかの毛バリで何日も比較しました。自己融着テープを巻くのは沈みをよくするだけでなく、胴部を軟らかくする意味もあります。硬い胴と軟らかい胴では、明らかに軟らかい胴の毛バリを長く抱いた。イワナもまた胴がふっくらとして軟らかい毛バリのほうが食い込みがよいと思うのです」
こだわりのボディーはフトコロがややカーブするところまで巻く。胴部は曲線があるもので、これも「遺伝子を刺激する要素」と小林さんは言う。
小林さんの毛バリ作り
フライフック「TMC102Y」#9をメインに使用
スレッドをフトコロの曲がりの途中まで巻き、その上から4mm 前後にカットした自己融着テープを軽く伸ばしてから巻き付ける
クジャクの羽根の色の多い中心部から2、3 本抜き取る
スレッドと一緒にクジャクの羽根を合わせて縒り、重ならないように粗めに巻く。体節を作るイメージ
毛足の短いグリズリーハックルの先端部を使用する
アイに対してハックルが直角になるように巻きつける
アイ付近に巻く赤の補修糸。3本に縒られており、うち1本を使用する
チモトから補修糸を全体のバランスを見て最大2mm幅くらいまで巻き付ける
逆立った毛バリを切って成形。ハリから均等に出ているか注視する
完成。アイの補修糸は虫の目を現わし、ボディーはフトコロのカーブまで。ハックルはパラリと薄く。小林さんは「ハエパターン」の毛バリと言い、シーズンを通じて使用する
後編「毛バリを引っ張らない軽いラインを使う」へ続く……
- 1
- 2
渓流のポイントガイドブックの決定版
『「いい川」渓流ヤマメ・イワナ釣り場』
令和版が発売になりました!!
・首都圏「いい川」渓流ヤマメ・イワナ釣り場
・岐阜・愛知「いい川」渓流アマゴ・イワナ釣り場
・岩手・秋田「いい川」渓流ヤマメ・イワナ釣り場
・山形・新潟「いい川」渓流ヤマメ・イワナ釣り場
・栃木・群馬「いい川」渓流ヤマメ・イワナ釣り場
・長野「いい川」渓流ヤマメ・イワナ釣り場