雷魚の口には鋭い歯が並んでおり、しかもアゴの力も強いこともあって、無闇に指を差し込むとケガをする危険をはらんでいる。必ず専用に開発されたフックオフツール、マウスオープナー、ロングノーズプライヤーなどを携帯して慎重に作業を行なおう。
雷魚のランディングは魚体のケアを第一に
写真と文◎伊藤 巧
手軽さとは対極に位置する雷魚ゲーム。なぜ手軽ではないのか。それは雷魚を大切に思う先人たちが培ってきたスタイルを踏襲して現在のスタイルが確立されているからだ。元気な雷魚と出会うたびに、まるで宝物を見つけたかのような気分を味わえる。そんな特別な雷魚ゲームに入門しよう
この記事は月刊『つり人』2021年9月号に掲載したものを再編集しています
◆関連記事トップウォーターでねらう!ナマズ釣り入門 >>
前編
後編
オープンウォーターでの雷魚の釣り方
現在の整備の行き届いた用水や小規模河川は、その大半がオープンウォーターである。まずは障害物などに寄り添って浮いている雷魚を捜し、気配を悟られないよう近づいて、鼻先に絶妙のタイミングでフロッグを通してヒットに持ち込む。すなわちキャストの必要はほとんどない。雷魚がフロッグに好反応を示すのはファーストキャスト。繰り返し投げると警戒心を高めて沈んでしまう。プレッシャーを与えないように一発で食わせるのだ。
水深が30 ~ 50cmの用水を重点的にチェックしていく。用水が狭いほど、浅いほど、差していれば雷魚の反応はいい
そのためにも雷魚がアタックしやすいコースにフロッグを通さなければならないわけだが、無理にキャストしてライン取りに失敗すると、気配を察知した雷魚は姿を消してチャンスを潰してしまう。そこで、キャストしやすい位置に雷魚が泳いでくるまでひたすら待つこともザラだ。ねらえる位置まで泳いでこなければ、そのまま投げずに撤収し、日をあらためて再びねらうこともある。プレッシャーさえ与えなければ、雷魚はその場所から大きく移動する可能性は低い。サイズが大きくなるほど慎重にキャストのチャンスを伺いたい。これがオープンエリアでの雷魚釣り。投げないことも、また雷魚釣りなのである。
こうして高井さんは、排水機が盛んに水路に溜まった雨水を汲み出して徐々に水位が下がってきた午後、ねらいを定めて入った小さな用水で75cmほどの元気な雷魚をキャッチした。イメージどおりに雷魚を手にし「これだから雷魚釣りって楽しいんですよね。フィールドのポテンシャルと魚に感謝です!」と、張りのある魚体に見とれた。
流れ込みの周辺は水が動いているので気温の上がる午後は見逃せない。小さなトンネルの中に身を潜めていることも多い
気温が35℃に達した午後2時に食ってきた雷魚。流れていたとはいえ用水もお湯のように温まっていたはず。そんな炎天下でも我々を興奮させてくれた。食わせた高井さんも「よく、こんな暑い中で食ってきましたね…」と驚いていた
キャストとリトリーブさえ正確にこなせれば、雷魚をヒットさせること自体は難しくはない。浅い用水ならば、いれば高確率で反応してくれる。ちなみに用水の主なポイントは流れ込みと橋の下。水が動いている場所と、他より水温の低い場所だ。なお、先行者がいた場合は探るまでもないので次の場所を目指そう。ちなみに用水の両側にクモの糸が渡っていたら、そこは誰もフロッグを通していない証だ。いつアタックしてきてもおかしくないので集中しよう。
用水の水のコンディションや水位、流れぐあいを見ながら移動を繰り返す。この日も車の機動力を生かして20ヵ所ほど釣り場をチェック。よさげなら車を降りて確認し、イケそうと判断したらようやくサオを取り出すという流れ
簡単にまたげる狭い用水も、太めの用水や河川に直結していれば雷魚が入っている可能性は充分ある。水が動いていれば要チェックだ。しかも想像以上の大型が食ってくる
雷魚のランディングは魚体のケアを第一に
アタックがあったら即アワセだ。アワセが遅れてフロッグが口の奥まで呑まれてしまうとフックオフに要する時間も長引くので雷魚を弱らせかねない。スッポ抜けはご愛嬌だ。見事に雷魚がヒットして無事に足もとまで寄せたらランディング。可能であればホールド性に優れるハンドランディングをしてほしい。足場が高くて手が届かない場所ならば、慎重に抜き上げるかラバーネットですくう。持ち方は、エラ蓋とアゴをつなぐ部分に袋状の膜があり、そこに中指を挿入してから親指で反対側の頭部を押さえ、挟み込むようにしっかりホールドする。
雷魚にはエラ蓋とアゴをつなぐ部分に袋状になっている膜があり、そこに中指を差し込んで親指で頭を押さえる
足場の高い用水では一気に抜き上げる。なお、抜く際には雷魚を置く場所を決めておくこと。手の届く場所まで降りられるなら魚に優しいハンドランディングが望ましい
ランディングできたらコンクリートや砂利などを避け、柔らかい草の上などに置くこと。近くにそういった場所がない場合は、ランディング袋と呼ばれる厚手で大きな専用のビニール袋に入れて安全な場所まで移動する。
そしてフロッグを口から外すフックオフ。雷魚の口には鋭い歯が並んでおり、しかもアゴの力も強いこともあって、無闇に指を差し込むとケガをする危険をはらんでいる。必ず専用に開発されたフックオフツール、マウスオープナー、ロングノーズプライヤーなどを携帯して慎重に作業を行なおう。
元気な状態で水に戻すためにランディングからリリースまでは手早く行なう。フロッグの取り外しは、必ずフックオフツールを使うこと。雷魚の歯は鋭いので、無闇に指を入れるのは危険
手順はマウスオープナーで口を開けてからプライヤーや鉗子でフロッグをつまみ、軽く押すか左右に振りながら押す。フッキングした方向が合っていれば、簡単に外すことができる。掛かりどころが分からなくても焦らないこと。バーブレスフックなので、方向さえ分かればスッと外れるはずだ。時間が掛かりそうな場合は、ビニールやバケツで用水の水を汲んでは雷魚にかけてやる。
リリースは優しく。濡らした両手で持って水に馴染ませ、自発的に泳ぎだすのを待つ。尾ビレで叩いた水を顔面で受けることもあるが、それは元気に戻せた証拠だ。
撮影する前に取り込んだ雷魚が不要なダメージを負わないようバケツに汲んだ水をかけて落ち着かせる
- 1
- 2