手軽さとは対極に位置する雷魚ゲーム。なぜ手軽ではないのか。それは雷魚を大切に思う先人たちが培ってきたスタイルを踏襲して現在のスタイルが確立されているからだ。元気な雷魚と出会うたびに、まるで宝物を見つけたかのような気分を味わえる。そんな特別な雷魚ゲームに入門しよう
リリースまで完璧にこなして完結
写真と文◎伊藤 巧
手軽さとは対極に位置する雷魚ゲーム。なぜ手軽ではないのか。それは雷魚を大切に思う先人たちが培ってきたスタイルを踏襲して現在のスタイルが確立されているからだ。元気な雷魚と出会うたびに、まるで宝物を見つけたかのような気分を味わえる。そんな特別な雷魚ゲームに入門しよう
この記事は月刊『つり人』2017年9月号に掲載したものを再編集しています
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前編
後編
雷魚はどんな魚?
東南アジアを原産とする雷魚は、明治から大正時代にかけて食用として日本に持ち込まれた。100年という長い時間をかけて稲作が盛んな風土に溶け込みながら広がり、現在は都市近郊の田園地帯でその姿を拝むことができる。
現在、日本にはカムルチー、タイワンドジョウ(ライヒー)、コウタイという3種類の雷魚が存在する。タイワンドジョウとコウタイは生息地域が限定され、中部東海以北で雷魚といえば一般的にカムルチーを差していると考えて差し支えない。80cmを超えてもなお成長する大型種である。
雷魚釣りとは?
雷魚釣りには、ストイックにも徹底された流儀があり、雷魚を愛するすべてのアングラーが自発的に実践している。今回フィールドに繰り出したラッティーツイスターの高井主馬さんも「雷魚は身近な魚ですが、雷魚釣りは手軽ではありません。手軽さをうたう釣りが受ける中、時代に逆行していますが、そこが魅力なんだと思います。譲れない部分にこだわってサオを振る。だから1本を手にした時の喜びもひとしおなんです」と、その敷居の高さこそが雷魚釣りの魅力だと言い切った。
雷魚釣りはトップウォーターゲーム。フロッグルアーと呼ばれる中空ソフトベイトを用いる。なぜトップウォーター限定なのか。それはフロッグゲームが最も雷魚の魅力を体感できる釣り方だから。水面に浮かべてアクションを加えたフロッグに襲い掛かる。そのヒットシーンは迫力満点。ヒシやハスで覆われて水面が見えないような場所でも、下からカバーを突き破って飛び出してくる。静から動に一変する釣趣を味わえば、きっとフロッグゲームに魅了される。
目の前に雷魚が浮かんできて呼吸した。この呼吸した瞬間をねらって鼻先にフロッグを通せればヒットすることが多いが、小さかったのでそのままスルー
そして、雷魚との激しいファイトの末に見事ランディング! と、ここで終わらないのが雷魚釣りである。雷魚を必要以上に傷つけないよう扱い、弱らせる前に手早くリリースして一連の手順が完了する。ダメージを最小限に抑えて確実にリリースすることが、雷魚釣りにおいてはスマートとされる。確実なランディングとリリースが求められるため、どうしても専用のタックルが必要になる。ゆえに他ジャンルのタックルを流用して、とりあえず体験してみるという行為も避けたい。全くスタイルは異なるが、魚の取り扱いはフライフィッシングやカープフィッシングに近い。
ベストシーズンは夏
雷魚は深山幽谷の源流域ではなく、人々の生活が感じられる都市近郊に生息している。基本的に全国津々浦々、人の生活圏のどこにでも生息といえるくらいに多い。中でも平野部の田園地帯ならば遭遇率は高い。
ベストシーズンは夏。しかし、猛暑が続くと狭い水路では水温が上昇して水質も悪くなり、雷魚の活性は著しく下がる。もともと淀んでいる都市近郊の用水では顕著だ。そんな状況下でフィールドに繰り出してもフロッグにアタックしてくる雷魚は少ない。夏の釣行タイミングはズバリ雨後。水路や河川に流れ込んだ雨水が、滞った汚れた水を流して酸素を供給してくれるのだ。水がきれいになって適水温まで下がると、雷魚は積極的に動いてエサを求める。夕立など短時間の降雨でも状況が好転するケースが多いので、とにかく雨後はチャンスだ。
沈水植物や浮葉植物が見られれば、遭遇率は跳ね上がる
高井さんがフィールドに出向いたのも、まとまった雨を降らせた台風3号が通過した翌日だ。小規模河川や用水をチェックして回った。実は何日も前からフィールドをチェックして当たりはつけていたそうで、雷魚にスイッチが入る恵みの雨を待っていたのだ。その間まともにキャストはしていない。
雷魚釣りのロッド
ロッドは専用に開発された雷魚ロッドを使う。フィールドのロケーションごとに特化したモデルが開発されているので、自分が通うフィールドに合わせて選びたい。硬ければよいというものではない。
オープンの用水ではあまりに硬いサオは使わない。雷魚ロッドの中でもティップの追従性に優れるモデルがよい。棒のように硬いサオはバラシが増えるばかりか、フッキング時に雷魚を痛めてしまう可能性もある。適材適所のセレクトが重要
雷魚釣りのリールとライン
リールは大きめのベイトリール。堅牢で頑丈な耐久性に優れるモデルが好まれるのはパワーゲームならでは。8号のラインが90m巻けるラインキャパシティが理想だ。そしてラインはPEラインが必須。雷魚用として6~12号が各メーカーより発売されている。細いラインは激しいヘッドシェイクや根ズレで切れる可能性があるので、慣れないうちは強度的に安心できる8号を使うのが賢明だ。
以上が雷魚タックルの基本だ。もちろんライトタックルでねらえるような場所でも雷魚タックルを使うこと。ブラックバスやナマズの延長で楽しむものではなく、あくまでも雷魚釣りという独立したジャンルと考えてほしい。
高井さんがこの日身に付けていたアイテムと使っていたタックル。コンパクトにまとめた中にも雷魚を傷つけないためのアイテムが目立つ
雷魚釣りのルアーはバーブレスフックのフロッグ
フロッグを結んだタックルを片手にフィールドに分け入る雷魚釣りは、子どもの泥んこ遊びの延長線上にあるような、どこか懐かしさを感じる釣りだ。シンプルな釣りではあるが、その世界観を壊さないために培われたルールやマナーが存在する。それが入門の敷居になっているわけだが、実践すれば納得することばかり。ぜひ柵を跳び越えて雷魚デビューを果たしていただきたい。
PEラインとフロッグの接続方法はいくつもあるが、最も手軽なのがビミニツイストで大きなチチワを作り、フロッグにトックリ掛けする方法だ。ビミニツイストによるチチワは非常に簡単なので、自宅で練習してみよう。
※リンク先はキハダマグロ向けの解説のため強化チューブを使っていますが、雷魚では通常使いません
フロッグに反応したものの食ってこなかった場合は、すぐにフロッグを交換する。同じフロッグを投げてもプレッシャーを高めるばかり
バーブレスフックは雷魚釣りの基本。カエシのないダブルフックはトラブルも少なく、雷魚へのダメージを最小限に抑えられる。堅い口にも刺さりやすく、同時に外しやすい。このダブルフックを標準装備したルアーが、雷魚用のフロッグ(中空ソフトベイト)だ。バス用フロッグは、必ずカエシを潰すこと。
なお、市販されているフロッグは基本的に浸水対策を施したりアイを強化しないと使えない状態で売られている。ウエイトバランスを調整したりアトラクターを装着するなど、自分好みにチューニングするのだが、この工程が何とも楽しい。
フロッグのチューニング
高井さんが基本的なフロッグのチューニングを披露してくれた。市販されているほとんどのフロッグに対応できるので、ビギナーの方は参考にしていただきたい。
チューニングして初めて使えるようになるフロッグ。作業は簡単なので、お気に入りを作ろう
用意するもの
フロッグ、熱収縮チューブ、シーリング剤、スレッド&ボビンホルダー、ブレード&ブレードクリップ、ラジオペンチ、ハサミ、ライター、ニードル、イージープル、爪楊枝、瞬間接着剤、スプレープライマー(硬化促進剤)
手順①ウェイトの位置調整
ボディからフックとフックアイを引き抜いたら、フックに巻いてある鉛のウェイトを後方にズラしてペンチでかしめる(このウエイトの位置によってフロッグの浮き姿勢が変わる)
手順②ウェイトの固定
しっかりかしめたら、ウエイトより少々大きくカットした太めの収縮チューブを被せてライターであぶって固定。さらに細い収縮チューブをシャンク部に被せてあぶり、ウエイトのズレを防止する
手順③アイの強化
アイが溶接されていない場合は、開かないようアイにPEラインを何重にも巻きつけて瞬間接着剤を垂らし、硬化促進剤を塗布して強化する
手順④シーリング
フックをボディに戻してアイとボディがズレないようスレッドを巻いて固定し、ライターで熱したニードルをフロッグのお尻に刺して空気抜きの穴を開ける。爪楊枝を使ってシーリング剤を隙間に塗っていく。乾かしては3回ほど重ね塗りする
手順⑤アトラクターのセット
何も付けない「ダンゴ」と呼ばれる状態のフロッグ(トップウォーターでいうところのペンシルベイト)で使うことも多いが、ブレードやラビットファーなどのアトラクターを装着することで、攻め方のバリエーションが増える。今回はブレードクリップを介してブレードを追加
シーリングが完全に乾いたら水槽や浴槽に浮かべて浮き姿勢をチェックする。立ち姿勢ほど水押しが強くて手前への移動が少なく、ヒシのポケットなどピンポイントで粘りたいときに威力を発揮する。そして、横姿勢に近づくにしたがってスライドアクションが大きくなる。クリークなど護岸に沿って手早くチェックしていく場合は、こちらのフロッグが効率的だ
後編「オープンウォーターでの雷魚の釣り方」へ続く……
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