夏も近づく八十八夜にはほんの少し早い4月の後半でこれだけの反応が得られる東京湾のシロギス。夏のトップシーズンに向けてますます面白くなる!
夏も近づく八十八夜にはほんの少し早い4月の後半でこれだけの反応が得られる東京湾のシロギス。夏のトップシーズンに向けてますます面白くなる!
写真と文◎編集部
金沢“新”景のポップな船宿
江戸後期の浮世絵師・歌川広重の代表作のひとつが、風光明媚な景勝地として知られた武蔵国黒城郡(現在の神奈川県横浜市金沢区)の四季折々の情景を描いた『金沢八景』である。
そのうちの二景が洲崎晴嵐で描かれた洲崎神社と瀬戸秋月で描かれた瀬戸神社で、その両神社に挟まれた平川湾奥に店を構える船宿が『荒川屋』だ。
そんな江戸情緒とは裏腹に、新店舗の建物は驚くほどポップでカラフル。「案内されなかったらお洒落なカフェかと素通りしちゃうところでした(笑)」
そう話すのは、この日が沖釣りデビューの鳳山えりさん。釣り自体もほぼビギナーで「9歳になった息子が釣りをしてみたいというのでニジマスの管理釣り場に連れていったら大人もめちゃくちゃ楽しんじゃって」と笑う。
もうひとりの釣り人が萩原真一さん。船のシロギス釣りは昨年に続いて2度目ながら、ライトアジからSLJまで船の釣りは幅広く楽しんでいる。また、岐阜県下呂市出身で幼少の頃から釣り名人の父親の影響で馬瀬川や益田川でアユやアマゴを釣ってきた筋金入り。
この日はふたりとも電車を利用。徒歩5分の船宿には更衣室もあり、女性も安心してフィッシングウエアに着替えることができる。
あいにくの雨だが風は弱く、気温も平年並み。身体まで濡れてしまえば楽しさも半減してしまうが、濡れない装備で挑めば、むしろ暑すぎず寒すぎず日差しや紫外線も気にならない釣り日和になる。
若女将がお出迎え。乗船名簿を記入したら受付を済ませ釣り座もここで決めていく
トイレの横には着替えのできる更衣室もある。準備が済んだら二階の待合室へ
広い待合室では桟橋のようすがライブ配信されていて混雑具合などもわかるほか、事前予約をすればレンタルキッチンで料理やレンタルスペースで会食も楽しめる
瀬戸橋のたもとのウッドデッキから乗船する
ウッドデッキ側から望むこの景色こそ歌川広重が描いた金沢八景のひとつ瀬戸秋月の舞台のあたりだ
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雨を好きになるといいことがある?
周年シロギス船を出している荒川屋では、平日は1日船、土日は午前午後の半日船を出すほど人気の看板ターゲットだが、それでもやはり終日雨の予報とあって「貸し切りみたいなもんですから気を使わないで目いっぱい楽しんでくださいね」と和田雄太船長。8時に河岸払いすると25分ほど走って中ノ瀬へ。
右舷ミヨシ側に鳳山さんと萩原さんが並んで座り、その両隣にシップスマストスタッフの山口英樹さんと古川牧樹子さんが座って、ふたりをサポートする。
「東京湾の船キスは片テンビン仕掛けとドウヅキ仕掛けがあって、今はドウヅキが多いですね。特に水深が深い冬場は船下を探る釣りなので仕掛け絡みが少なくて感度もいいドウヅキ1本バリ仕掛けがおすすめです。私は夏場も含めて通年ドウヅキです」
とは、この釣りに詳しい古川さん。船宿の推奨もドウヅキ仕掛けで、和田船長いわく「PE先端に先イトを介する人が多いけれど、幹イトがその役割をしますので感度を優先してPE直結でいいと思いますよ」とのこと。
片テンビンを使わないドウヅキ仕掛けは回転ビーズを使ってハリスを潮にたなびかせる釣り。小さいアタリも幹イトにダイレクトに伝わる
タックルはスピニングかベイトかは好みでいい。「水深も15m前後とまだそこまで浅くないですし、遠投してサビくよりも船下に落として絶えず誘ってやるほうが有効ですから、鳳山さんはベイトでやってみましょう」と山口さん。ベイトリールの操作法を教わると鳳山さんもさっそく釣りを開始。
一方、経験者の萩原さんは「やっぱりキャスト自体が楽しい」とスピニングタックルをチョイス。華麗なアンダーハンドキャストで斜め前方に遠投していく。
まずは山口さんと古川さんがコンスタントにキャッチ。やはり積極的に誘い、掛けアワセを入れると数が伸びるようだ。少し遅れて萩原さんにも本命が登場。
アユやアマゴは子どもの頃からという釣り好きの萩原さん。「江戸前の小物釣りは勉強中です(笑)」と言いながらいいペースで連発
「ええ、なんでなんで?」
ひとり出遅れた鳳山さんが焦り始めた。この日はアタリがそれほど多くなかったが、それにしてアタリが少ないようす。オモリでトントンと小突く基本の誘いをしているが、少しだけエサが浮き気味なのかもしれない。山口さんからそんなアドバイスを受けると、すぐにサオ先がククンっと震える。
「来た? 掛かってる? キスだ! ヤッター、美味しそう~」
鳳山さんの満面の笑みと大きなリアクションで船上がパッと華やぐ。低く垂れ込めた空からポツリポツリと雨粒が落ちてきたが、ふたりのテンションはまったく落ちない。
「エサは大きく付けたほうがいい?」
「今のガツガツはフグ!?」
「え、ツ抜けしたってナニ?」
ビギナーだけに、当初は半日船をと考えたが、1日船でも集中力を切らさない。
キスを釣ってはこの笑顔、フグを掛けても大騒ぎ
予報どおり、昼前からはしっかりと粒の大きな雨が断続的に降ってきたものの、フードをすっぽり被ったふたりの釣りペースはまったく変わらない。釣りの所作もすっかりぎこちなさは消えていた。
「初めての沖釣りでしたが、楽しくてハマりそうです。次も美味しい魚を釣ってみたいです」と鳳山さん。
「装備しだいで雨の日の釣りがこんなに快適になるとは知りませんでした。人も少なめでむしろねらいめかもしれませんね」と萩原さん。
図らずも梅雨入り前に雨の日の釣行が嫌いではなくなったようだ。
鳳山さんは女性専用デザインのShipsmast のマリンジャケットとマリンサロペット、萩原さんはユニセックスのSHIPSMAST.U のPVC ジャケットとPVC サロペットを着用。どちらも一般的なPVC レインよりも薄い0.3mm 素材を使用しているため非常に軽いのに、水も風も通さない。フロントファスナー下にも生地と同じ防水素材の布を配置し、ボタンとマジックテープで内側からしっかり留めることで胸元への浸水を防ぎ、雨でもストレスなく釣りができる。ユニセックスのフロント下部はセパレートになって、より動きやすさがアップしている
女性専用デザインならではのフィット感や着心地を追求したShipsmast
ジェンダーフリーで誰が着ても快適かつ恰好よさを追求したSHIPSMAST.U
※このページは『つり人 2024年7月号』を再編集したものです。