リールメンテナンスというと、工具を用意して分解、パーツを洗浄してグリスアップ……というのは過去の話。現在のリールの中には取説に「分解禁止」と書いているものまである。じゃあユーザーはどうすればいい、というのをまとめてみた。
ユーザーがやっていいこと、ダメなこと
SEABASS Life 編集部=まとめ
リールメンテナンスというと、工具を用意して分解、パーツを洗浄してグリスアップ……というのは過去の話。現在のリールの中には取説に「分解禁止」と書いているものまである。じゃあユーザーはどうすればいい、というのをまとめてみた。
◆この記事は『SEABASS Life』No.04でも読むことができます。
目次
海で使った釣り竿&リールをお手入れする方法
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STEP1 水洗い:外部のパーツに付着した塩分を洗い流す
冷水のシャワーを弱めにかけてやる冷水のシャワーをリールの上からさっとかける。普通に使っていて海水が付く以上の部分まで水を回すのは不要だ。後ろから強いシャワーをかけるとローターの中まで水が回るが、使用中ローター内に海水は入らないだろう。「水洗い可能」が言われ始めたころボディに水抜き穴が設けられてことがあり、内部を洗浄するものと思っている人がいるかもしれないが、普通に使っていてギアやベアリングのすき間に海水は入らないし、入ってしまったらシャワーでは取り除けない。あくまで外部に付着した塩分を洗い流すためと心得よう。
▼外部に付着した塩分を洗い流すため、弱めのシャワーをさっとかける。温水はグリスやオイルを流す恐れがあるため使用しない
STEP1 水洗い:水の浸入を防ぐためドラグノブを締めておく
パッキン付きでも要注意リールの取説には水洗いの前にドラグを締めるよう書いてある。ドラグノブのパッキンは垂直なスプール内壁に対し直角に当たっているので、ドラグの締め具合は防水性に関係なさそうだが、締め付けが弱いとパッキンが傾いて水が入ることがあるためだ。パッキンは軟らかいゴムなので、強烈なシャワーを前面からかけるのも避けたほうが良い。パッキンの付いていないリールは極力水が入らないようにシャワーをかけ、シャワー後すぐにノブを外してティッシュなどで水滴を取り除くとよいだろう。
▼シャワリングの前にドラグノブを締め込んでおく。シャワー後は水の浸入チェックを兼ねてスプールを外して乾かすとよい
STEP1 水洗い:風通しの良い日陰で乾燥させる
洗浄直後は回さないのがベターシャワーをかけ終わったら、強く振って水を切る。ハンドルをブンっと回してベール周りの水を切るのもよい。乾いたタオルなどで水分を取り除いたら、風通しの良い日陰で数日置いて乾燥させる。水がオイルやグリスに混じり込むため、濡れた状態でハンドルは回さないほうがよい。例えばBB入りのハンドルノブを洗浄直後に指ではじいて回してみると、いつもより高い音がするはずだ。これは水でオイルが薄まっているためで、数日乾燥させると元に戻るから心配はないが、乾燥前にあまり回転させるのは好ましくないだろう。
▼リールを振って水を切ったらタオルなどで乾拭きし、風通しの良い日陰で乾燥させる。直射日光は避ける
STEP2 注油:メーカー純正のグリスをパーツに注す
全箇所グリスでもOK乾燥が終わったら外部の可動パーツに注油する。現在ダイワ・シマノともスプレー式の純正オイル&グリスを出しているのでこれを使う。グリスがダメなのは内部のワンウェイクラッチだけなので、外部の可動パーツはグリスだけでもOK。オイルのほうが回転は軽いが、販売されているグリスは低粘度なのでそれほど変わらない。大雨などでハンドルノブ支持部やパッキンなしのリールのメインシャフト・ピニオン摺動部に水が入ると、回転に引っかかりが出ることがあるため、より耐水性の高いグリスのほうが安心だ。
▼ダイワとシマノの純正グリス&オイル。後述するカシメ部の防錆はオイルのほうが良いが、それ以外はグリスでOK
STEP2 注油:回転部分をチェックして注油する
水の浸入する部分を重点的にハンドルノブ支持部は水の入りやすい元側のすき間にスプレー。ハンドルノブは分解して注油してもいい。メインシャフト(スプール軸)がピニオンの口から出たり入ったりする部分のうち、パッキン付きの高級品はよほど乾いていない限り大丈夫。パッキンなしのものは黒くなったグリスをぬぐってグリスを注してもよい。ハンドルを外してドライブギアを支持するBBにグリスをスプレーしてもよいが、ピニオンの5~6分の1しか回らないので必要性は低い。むしろ防水のためパッキンに薄くグリスを塗っておこう。
▼水の入りやすい元側の支持部にグリスをスプレーする。ノブの先側に穴のないものは水が入らないのでごくたまにで大丈夫
▼ハンドルノブは失敗の心配も少ないため、分解して中の軸受けに注油してもよい。ワッシャーやBBの順番に注意
▼ハンドル根本の部分はBBよりも防水パッキンが適度にグリスで濡れているようにしておくのが大切
STEP2 注油:ベール支持部にグリスを注す
ただし分解はボディ以上にダメ意外に動きが悪くなっているのがベールだ。サイドのすき間からグリススプレーを吹き込むと、作動が軽やかになる。となると、分解して支持部をクリーニングしてグリスアップするとさらに気持ちがよさそうだ。しかし、この部分を外すのはやめた方がいい。現在ほとんどのリールのローターは樹脂製で、ベールはタップネジで組み付けられている。スペース上この部分のネジは首下が短く、取り付け取り外しを繰り返すと、早い段階で緩みやすくなり、最後には接着せざるを得なくなる。外からのグリス注入にとどめよう。
▼ベールアームのすき間からスプレーグリスを吹き込む。反対側の支持部にも同様にグリスを吹き込んでやる
▼タップネジは繰り返しの着脱に向かないのに加え、ベールまわりのものは首下が短いため、分解は極力避ける
STEP2 注油:ラインローラーはモデルに応じて
タイプによってさまざま最新のダイワ「マグシールド」、シマノ「Xプロテクト」はオーバーホール間の1シーズンはメンテフリーでいいはず。いずれも内部の特殊な油脂類を流すので外部からの注油は不可。ダイワのマグシールドなしは外からスプレーグリスを吹いて浸み込ませる。BBまで届かなくても、パッキンがグリスで濡れれば防水になる。シマノの旧タイプ「コアプロテクト」もメーカーの言う1シーズンのオーバーホール間はもつはずだが、同社「Xプロテクト」の別売りグリスを入れてもよい。筆者は純正グリスを注しているが問題はない。
▼ダイワのマグシールドなしのモデルはローラーの両側のすき間からスプレーグリスを吹き込む普通のメンテでOK
▼「Xプロテクト」の「特殊撥水グリス」は購入も可能。このグリスを「コアプロテクト」に入れてしまうのも手だ
STEP2 注油:異種金属の接触部やカシメ部のサビをオイルで防ぐ
アルミのパーツは要注意80年代初め、各社が軽量化のためアルミパーツの使用を増やしたころ、部品が割れるトラブルが多発した。アルミは錆びると白く粉を吹きながら膨張する。特にカシメ部分はカシメで出来た微細な亀裂に海水が浸みこんで錆び、サビが亀裂を押し広げるのを繰り返す。さらにステンレスとの電解腐食も加わって、膨張したアルミの軸でラインローラーが割れたりハンドルノブがもげたりするケースもあった。現在のリールはそこまではいかないが、アルミのカシメ部や異種金属との接触部は、オイルを少量塗っておくとより安心だ。
▼アルミの接触部やカシメ部はオイルで防錆。アルミではないがベールアーム反対側のカシメ部のすき間もオイルを注しておこう
STEP2 注油:ドラグのグリスは専用品が必要
水が入ったら空気にさらして乾かしてやるドラグに水洗いなどでうっかり水が入ると、グリスの潤滑性が落ちてシャクリが出始める。ドラグに限らずグリスには水を排出する性質があるようで、数日空気にさらせば白濁が消えて元に戻る。したがって、水が入ってシャクリの出たドラグも、ワッシャーを空気にさらせば元に戻るはずだ。それでもダメな場合、グリスアップとなるが、注意したいのはドラググリスは店頭で販売されているスプレー式のものとは違うこと。サービスパーツ扱いになるので、取り寄せるかリールごとサービスに出すことになる。
▼水が入るとドラググリスが白濁してシャクリが出るが、空気にさらせば元に戻るので、バラして数日乾かすとよい
▼ドラググリスは専用のものが用意される。同一メーカーでも使用グリスが違うものがあるのでHPなどで確認のこと