酷使する釣り竿とリールをきちんとメンテナンスしているだろうか? 道具は愛情をかけるほど助けてくれる場面は多い。ここでは、自分でできる釣り竿とリールのメンテナンスを、毎釣行後に行なうべき基本に加えて一歩踏み込んだ部分まで紹介します。
これで長持ち! 自分でできるメンテナンス
編集部=まとめ
酷使する釣り竿とリールをきちんとメンテナンスしているだろうか? 道具は愛情をかけるほど助けてくれる場面は多い。ここでは、自分でできる釣り竿とリールのメンテナンスを、毎釣行後に行なうべき基本に加えて一歩踏み込んだ部分まで紹介します。
目次
◆スピニングリールのより詳しいメンテナンスはこちらをどうぞ!
自分でできる! スピニングリールのメンテナンス
◆レイン、ライジャケ、ウェーダーのメンテナンスはこちら!
釣り用ウエアのお手入れ方法/レイン、ウエーダー、ライフジャケット
サオのメンテナンスは「フィッシング相模屋」の小澤淳さんに聞いた。磯担当で多彩な釣りに精通! リールメンテナンスはソルトルアー担当の石井広海さんが突っ込んだ方法を解説してくださった。同店はJR 相模線「番田」駅のすぐ側に位置しオールジャンル豊富な品揃えのメガストア。神奈川県相模原市中央区上溝407-1/℡ 042-778-4991
リールハンドルの内部までメンテナンスをすることは稀。でもきれいにすると驚くほど快適な巻き心地に!
釣り竿の手入れ:水洗い
磯ザオなどガイド付きの振り出しザオを水洗いする際に「絶対にやってはいけないのが、サオ尻から水を入れる行為」と小澤さんは言う。ガイド付きロッドはトップガイドが栓をした状態、また磯ザオは穂先部分がソリッドであることも多い。となると穂先付近に溜まった水が抜けず、持ち重りの原因にもなりうるという。しっかり乾燥できないと塗装内部に気泡が溜まる「ブリスター」現象を引き起こす恐れもある。なお水よりもぬるま湯をかけたほうが汚れは落ちやすい。
▼尻栓を取って水洗いの準備
▼ガイド部分に水をかける。とくにガイドの付け根部分は汚れが残る
▼塩が残ったガイド。特に付け根部分は残りやすく青サビの原因
▼そこで歯ブラシなどのブラシを使って丁寧に磨くこと
▼穂先から順次伸ばして水拭きを 尻栓を取って水洗いの準備する。寄せエサなどが付いている場合は念入りに磨く
▼ガイドと同じく重点的に洗いたい部分がリールシート。スクリューシートであれば全開に下げて水をかけスポンジで汚れを落とす
▼元ザオにはこのような剥きだしの金属部も多い。青サビが出やすいので真水をよくかけて塩抜きを忘れずに
釣り竿の手入れ:乾かす
ガイドロッドは各節を抜いて乾かすことができない。乾拭きをしてもサオを畳めば内部に溜まった水気が付いてしまう。そこで小澤さんがおすすめするのが、掃除機を使った乾燥方法。尻栓を取ってノズルを挿しハイパワーで吸い取ると、ものの3 分でサオの中がしっかりと乾くのだ。そんなこと奥様に怒られる! という人もいるだろうが、小澤さんは多量の水滴が付いたロッドを乾かし続けてウン十年、掃除機が壊れたことはないそうだ。▼尻栓を取ったサオ尻に掃除機のノズルを押し当て
▼ノズルとサオ尻の間に隙間ができないように手のひらで包む
▼乾燥したい節を少し伸ばして吸い取ると周囲に空気の抜け道ができ、乾かしたい節の水分を重点的に吸い取ってくれる
釣り竿の手入れ:仕上げ
ガイドやリールシートにはボナンザなどのフッ素樹脂コーティング材を振りかけておくとイト滑りがよくなり撥水効果も高まる。ちなみに小澤さんが全体にコーティング剤を塗ったほうがよいと言うのが「タモの柄」である。タモは振り出した時に滑りがよくないと取り込みにもたつく。釣行毎のメンテナンスを心掛けると快適な取り込みにつながる。
▼快適な釣りをするためにガイドのコーティングは特に重視
▼サビやすく汚れの溜まりやすいリールシートもフッ素コーティング剤を挿しておきたい
▼ロッドコーティング剤各種。小澤さんのおすすめはシートタイプ。まんべんなく塗ることができる。ちなみにシートが乾くまでは何度も使えるそうだ
スピニングリールの手入れ:水洗い
石井さんは海で使うリールは釣行毎にきちんと水洗いをすることが第一という。特に重点的に洗いたいのがラインローラー。歯ブラシを使って溝の中の塩水をしっかり掻き出すこと。ここに汚れが溜まるとイトが傷む原因にもなりうる。特に磯釣りで使う場合は寄せエサなどのカスも入りやすいので要注意。なお洗浄後の乾燥は長くて3日。陰干しが基本だ。
▼ドラグを締める
▼ローターおよびハンドルが回らないように保持して持つ。ハンドルを回すと水を内部に引き込んでしまう恐れがあるので注意
▼流水をかける。サオと違ってリールにお湯をかけるのはNG。内部のグリスが溶け出してしまう
▼ラインローラーにもしっかり水をかけ
▼歯ブラシを使って汚れを掻き出す。細い溝は取れにくいので爪楊枝を使ってもOK
▼スプールを外して内側も水洗いするとベター
スピニングリールの手入れ:ハンドルに注油
リールハンドルは釣り人が最もよく触れる部位なので回転をよくすると驚くほど釣りが快適に感じる。なお低価格帯のリールはハンドルノブを取り外すことができないモデルもあるので注意。ここからの項目はオイルとグリスの使い分けも出てくる。特徴としてオイルは揮発しやすく、グリスは粘度が高くほぼ揮発せず潤滑性が長持ちする。しかし粘度があるので回転時の抵抗感が増す。高速回転するベアリングなどのパーツはオイル、ゆっくりと回転するギヤもしくは回転しないがベアリングと密着するようなカーボンプレートはグリスの注油と覚えたい。
▼下準備。リールをボディー、スプール、ハンドルと分解
▼精密ドライバーでハンドルノブキャップを取り外す
▼ハンドルノブキャップを開けると再びビスが現われる。このノブとアームを接続しているビスがヒトクセある。というのもビスの山に緩み防止剤(ロック剤)が塗布されているのだ。プラスネジだがロック剤で固着したビスはプラスドライバーを使うとナメる。最初に緩める時、最後に締め込む時は必ずビスのサイズに合った「マイナスドライバー」を使用するのがキモ
▼マイナスドライバーでトルクをかけ、ビスが緩んだ所でサイズの合った精密プラスドライバーに持ち替えて取り外す
▼取り外したビス。色が濃くなった(青色をしている)部分がロック剤
▼ノブを外すとビス⇒ワッシャー⇒べアリング⇒ノブ⇒ベアリングという感じに分解できる。なおハンドルノブにベアリングが組み込まれているのはミドルクラス以上の機種が大半。低価格帯リールはベアリングではなく樹脂カラーと呼ばれるプラスチックリング(写真下)が組み込まれている機種が多い
▼前後のベアリングにオイルを注油する。注油のしすぎは逆効果で油膜によりベアリング内部の隙間がなくなり円滑に回りにくくなってしまう。このため1滴垂らすくらいの気持ちで、ごく少量付けるのがキモ
▼ハンドルアームのシャフトはオイルではなく、グリスを使用。粘度の高いグリスは長持ちする。シャフトは軸であってベアリングのようにそれ自体が回るパーツではない。よってグリスを塗る
▼余分なグリスはキムワイプなどの毛羽立たないペーパーでふき取る
▼ベアリングをハメ込みシャフトにハンドルノブをセット
▼この際もまずは精密プラスドライバーで締めた後
▼仕上げにマイナスドライバーを使用。時計の針の5分くらいの位置まで回してトルクをかける
▼ノブキャップをセットして終了
スピニングリールの手入れ:スプールシャフトに注油
ハンドルメンテナンスは頻繁にする必要はないが、スプールシャフトへの注油は手間もかからないのでマメにやったほうがよいだろう。ローターを回して全体にオイルがいきわたるように行なう。
▼スプールを取り外してシャフトに付いた汚れをペーパーなどで落とす
▼シャフトにオイルを注油してやる
▼ハンドルおよびローターを回して全体に馴染ませる
スピニングリールの手入れ:ドラグのグリスアップ
ドラグの滑りが悪い、効きぐあいにムラがある、調整幅が狭いという場合はドラグ専用のグリスを注油するのもおすすめだ。ドラグは金属、フエルト、カーボンと異なる材質のワッシャーが組み重なった構造である。ワッシャー間に汚れが溜まったりグリスが溶け出したりすると滑りも悪くなってしまう。
▼ドラグのパーツはスプールから抜け出さないように5角形ないしは6角形のバネ金具で止めてある。これをピンセットなどで取り外す
▼ドラグワッシャーを取り外していく。
▼写真のように金属⇒フエルト⇒金属⇒フエルト⇒金属というぐあいにワッシャーが取り外せる。各ワッシャーをきれいに洗浄してから、ドラグ用グリスをたっぷり塗って元に戻せばOK
▼ドラグ専用グリス。基本的にはリールと同じメーカーの純正品を使ったほうがよい
ベイトリールの手入れ:水洗い
水洗いは流水で行なうのが基本だが、電動およびカウンター付きリールをのぞくシンプルな機構のベイトリールであれば、バケツや洗面器に張った水にドブンと浸けて軽くハンドルを巻く塩抜き方法が効果的。「海水をたっぷりと浴びるオフショアの釣りでは構造的に必ずといってよいほどボディー内部に海水が侵入するんです。ギヤのグリスが落ちる恐れもありますが、それ以上に塩ガミを防ぎたい。そんな釣行を重ねるヘビーユーザーにおすすめなのが水に浸す方法です。ベイトはスピニングに比べ水が抜けやすく乾きやすい。グリスが落ちない程度の短時間で行なうのがキモです」と石井さん。なおこうして洗った後はスプールを取って、よく振って内部の水を出し陰干しでしっかり乾燥させること。
▼ドラグを締める
▼バケツに水を張り、その中にリールを入れる
▼ハンドルを1、2回巻いてギヤの入った内部まで真水を入れる
▼リール下部の水抜き穴から空気が抜け内部に水が浸入し塩を抜く
ベイトリールの手入れ:ベアリング&スプールシャフトに注油
スピニングリールの項目でもふれたとおりベアリングに挿すオイル(もしくは低粘度のベアリング用グリス)は少量(1滴程度)注油するのが基本。ここではオイルではなく低粘度のベアリング用グリスを使用
▼サイドプレートにあるベアリングを取る。飛び出しを防ぐバネ金具をマイナスドライバーやピンセットで取り外す
▼ベアリングの掃除には油落とし用のパーツクリーナーがあると便利。隙間のゴミを吹き飛ばしてくれる
▼ゴミを吹き飛ばしただけでもベアリングの回転はだいぶ変わる
▼ベアリング用グリスおよびオイルを一滴垂らす
▼ベアリングが密着するサイドプレートのカーボンプレートも掃除する
▼写真は歯ブラシで磨いているが、綿棒を使うのが好ましい
▼高粘度のグリスを刷毛に付け
▼カーボンプレートにグリスを塗る
▼ベアリングをプレート内部に戻す。綿棒など材質の軟らかいものではめ込むのがベター
▼ピンセットなどでバネを組み込み
▼シャフトから横に出たピンの部分はグリスを注油しておく
▼スプールシャフトにはオイルを注油。仕上げにペーパーでまんべんなく塗り付ける
▼ギヤの入ったボディー内部にもグリスを少量注油。写真の穴の奥にボールベアリングが入っている。写真はシマノのベイトリールだがメーカーによって構造は異なるので注意。これでスプールを再びセットしてメンテナンス終了
ベイトリールの手入れ:レベルワインダーのメンテナンス
忘れがちなのがレベルワインダーのメンテナンス。ゴミが溜まりやすいのでヘビーユーザーは3釣行に1 回くらいは注油したい。
▼汚れがあれば綿棒などで掃除する
▼オイルを吹きかけ
▼ハンドルを回して全体にいきわたらせる
ベイトリールの手入れ:メカニカルブレーキのメンテナンス
スプール回転を調整するベイトリールの要のひとつ「メカニカルブレーキ」内部にもベアリングが入っている。ここにも1、2滴オイルを挿してあげたい。汚れた油が溜まりやすいのできれいにしよう。
▼ブレーキキャップを外して
▼ベアリングにオイルをごく少量挿す
▼キャップ内部はカーボンプレートが組み込まれている
▼キャップ内部に残った汚れた油をきれいに拭き取る
▼カーボンプレートにグリスを塗って、元に戻せば完成
メンテナンスグッズ
▼ダイワ&シマノのリールメンテナンスアイテム。グリス、オイルともに粘度の違う製品がありパーツに応じて使い分けること。なお各社リールの純正を使うのが基本。交じると性能が落ちる恐れもあるので注意
▼石井さん小澤さん一押しのオイルが「ナスカルブ」。吹き付けると金属同士の接触箇所から電気イオンによる分子層の皮膜が発生。油というよりもこの添加剤が凄い性能。従来のオイルより潤滑性が長持ちし防錆効果も高くなる
◆この記事は『つり人』2020年1月号でも読むことができます。
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