海のルアー釣りでまず知っておかなければならないことに、ターゲットの習性、生態がある。どのような行動をするのか、産卵期はいつなのか。学者のようにこと細かに深く理解する必要はないが、ルアーで魚を釣る目的を達成するためには、ターゲットが主に何を食べているのか、ルアーを選択するうえでも最低限理解しておきたい。
ねらいの魚を釣るために知っておくこと
写真&文◎新保明弘 まとめ◎つり人オンライン
海のルアー釣りでまず知っておかなければならないことに、ターゲットの習性、生態がある。どのような行動をするのか、産卵期はいつなのか。学者のようにこと細かに深く理解する必要はないが、ルアーで魚を釣る目的を達成するためには、ターゲットが主に何を食べているのか、ルアーを選択するうえでも最低限理解しておきたい。
※この記事は『海のルアー釣り入門』(新保明弘著/2014年出版)を再編集したものです
目次
- ルアーでねらえるターゲットは主にフィッシュイーター
- マッチ・ザ・ベイトを常に意識しよう
- 大潮は水位の変化が大きい。小潮は小さい
- 大潮が必ずチャンスとは限らない
- 光量の変化で水中のようすが変わる
- 基本的に魚は強い光を嫌う
ルアーでねらえるターゲットは主にフィッシュイーター
フィッシュイーターの捕食シーン。イワシ類を追いかけていると思われる
ターゲットの多くは、フィッシュイーター。日本語に直訳すれば、ズバリ、魚を食べる魚である。したがって多くのルアーは、彼らがエサとする小魚をイメージして作られてきた。
現在の多様化した海のルアー釣りでは食性の理解が一段と進み、エビやカニなどの甲殻類、イカなどの軟体動物、ゴカイなどの多毛類、アミエビやカイアシ類(海のミジンコの仲間)などのプランクトンに似せたルアーまで登場している。逆に、ルアーで釣りにくい魚は、海藻などの植物性のものを主食とする魚や、エサを丸のみにするのではなく、小さな口でかじり取ったり、ついばんで食べる魚である。
マッチ・ザ・ベイトを常に意識しよう
イワシは海の代表的なベイトフィッシュ(エサとなる小魚)の1つ
海のルアー釣りで、使用するルアーを選択する目安となるのが、マッチ・ザ・ベイトである。エサに合わせる! これが最も重要である。イワシなどを捕食していれば、大きさや色形、イワシの泳いでいる層(レンジ)を引けるルアーを。エビやカニの場合は、それに似せたルアーを選択するのが重要な要素となってくる。マッチ・ザ・ベイトで難しいのは、同じ魚でも季節や地域で主食のエサが変化すること。1つ例を挙げれば、シーバス、スズキである。彼らは一般的にイワシやアユ、イナッコ(ボラの幼魚)などの小魚を捕食する。ところが東京湾のように干潟が存在する地域では、春先に多毛類、ゴカイが産卵期を迎え、水中を漂うようになると、動きの遅いこのゴカイばかりを捕食する。そのため小魚をイメージしたルアーでは全く釣果に繋がらないこともある。
今、どのルアーがマッチ・ザ・ベイトなのか、どのような動かし方、アクションが合っているのか、それを判断して釣果に繋げることが、海のルアー釣りの醍醐味でもある。
大潮は水位の変化が大きい。小潮は小さい
河口近くの河川の干潮時のようす。満潮時は写真手前まで水位が増える
海釣りの要素で外せないのは潮汐、干満による海面昇降の変化だ。干潮と満潮は通常1日に2回ずつ。干潮から次の干潮まで、もしくは満潮から次の満潮までの時間は平均約12時間30分。干満の時刻は毎日約50分~60分ずつズレていくため、干潮か満潮が1日1回ということもときどき起こる。
ここから先は旧暦での説明となる。月初めの新月や中頃の満月の前後には、月、太陽、地球が一直線に並び、月と太陽の引力とが重り合うため、潮の満ち引きの高低差が大きい大潮となる。上弦の月(各月の1週目から2週 目にかけて)や下弦の月(3週目から4週目頃)にかけては、月、地球、太陽が直角に並び、各引力同士が打ち消し合う。そのため潮の満ち引きの高低差が小さい小潮となる。小潮の終わり近く、上弦、下弦を1、2日過ぎた頃(各月の10日、25日頃)は干満の変化が緩やかに、長く続くようになり、長潮という。長潮の翌日からは新しい潮回り。潮が若返るという意味も込めて若潮とよぶ。そして、大潮と小潮の間の潮を中潮という。
大潮が必ずチャンスとは限らない
。釣行当日の潮汐はあらかじめ潮時表で確認しておこう
ビギナーの方からよく「やっぱり大潮がいいんですか?」と聞かれる。答えは「そうとは限らない」だ。確かに大潮という響きでたくさん釣れそうな気はするが、海面昇降が大きく、潮流が速いので、ターゲットやねらうポイントによっては不向きな場合もある。干満の影響で陸になったり、水中に沈んだりする範囲を潮間帯と呼ぶが、普段は深場にいて捕食時に浅場へ入ってくるターゲットの場合、大潮では浅場の水深がベストの時間が短い。
もちろんよい場合もある。大潮時に産卵行動を起こす魚は、大潮回りかその前後、岸近くに寄って盛んに捕食活動をする時がねらいめ。また、潮が引く際には浅場から深場へ潮が流れるが、潮でベイトが流される時は、その流れにフィッシュイーターが集まる。つまり、ターゲットや状況に応じてよい潮回りは変わってくる。そして釣り人は自分で潮回りの影響や時合を考え、実際に釣り場へ出て釣果に繋げていく。この時に得られる達成感は、非常に大きいのである
光量の変化で水中のようすが変わる
光量の少ない朝、夕マヅメは魚の警戒心が薄れ、捕食活動も盛んになるチャンスタイムだ
海のルアー釣りに限ったことではないが、釣りには魚がエサを盛んに捕食する時間帯、釣りやすい時間帯=「時じ合あい」というものがある。ターゲットによって、または季節、地域、その日の状況などによって時合はさまざまあるのだが、基本的に昼と夜との境目、マヅメ時は1つの時合である。海のルアー釣りのターゲットのほぼすべてがマヅメ時に時合を迎えるといっても過言ではない。その理由としては、ベイト、エサとなる生物の行動パターンが変わることが挙げられる。
日光が海面を照らしている日中、水面近くには植物プランクトンが多く存在している。夕マヅメを迎えて光量が減ると、今度は植物プランクトンを捕食するために動物プランクトンが水面近くに現われる。それを小魚が捕食するために現われ、さらにその小魚をねらって大型のフィッシュイーターが現われる……という食物連鎖が起こる。
朝マヅメに関しては、暗→明と逆になるが、朝マヅメは浅場や岸近くにいた小魚やベイトが深場へ移動したりするため、それをねらってフィッシュイーターの活性が上がる。
基本的に魚は強い光を嫌う
大型魚、フィッシュイーターは普段から光量の弱い水中で生活している。彼らはエサを捕食するために、視覚だけではなく、体の横にある側線という器官で流れの変化なども感じとって捕食活動を起こす。また、目はより獲物を捕らえやすいように、光を強く感じるようになっている。そのため日光、強い光を嫌う傾向がある。海のルアー釣りのターゲットは、明るい時間帯よりも、薄暗い、暗い時間帯のほうが捕食活動をしやすい=チャンスが多いということを押えておこう。