北海道の冬は寒くて長い。アウトドアでは、なおさらその厳しさを感じる。そこで今回は、暖を取るための炎を特集。寒風吹きすさぶ真冬でも、これさえあれば快適なキャンプになる。
冬の釣りキャンプの楽しみは「火」
Photo & Text by Masao Okumoto
北海道の冬は寒くて長い。アウトドアでは、なおさらその厳しさを感じる。そこで今回は、暖を取るための炎を特集。寒風吹きすさぶ真冬でも、これさえあれば快適なキャンプになる。
Profile 奥本昌夫
1969年、豊浦町生まれ。ソロキャンプ歴35年。1996年より北海道と海外とでフライフィッシングとソロキャンプ生活を行なう。『North Angler’s』、『FlyFisher』で連載多数。著書『北海道の鱒釣り』(つり人社)、DVD『イトウ戦記』など。キャンプとフィッシングガイド「Fish Camp」主宰。ウェブサイトはwww.fishcamp.jp
冬のアメマス探索釣りキャンプ
例年、12月になると川の釣りはほぼアメマスねらいになる。ガイドの仕事をしているため、できるだけ良型がいる川を把握する必要がある。成魚放流に依存するニジマスと違って、天然のアメマスはほぼ決まって例年どおりというケースが多い。だから安全パイの川で、ここぞというポイントをいくつか回ると、たいていはアメマスを見つけることができる。とはいえ、あくまでも自分が過去25年くらいの間に見つけたポイントだけなので、まだまだ知らない場所は多いはず。これからの釣り人生を考えると、探索する楽しみが残されていることは素直に嬉しい。
初冬のアメマス釣りはスイングかルースニング、またはアウトリガー。その違いで釣り分けながら楽しむというのも一興である
といっても日が短い12月は、釣りができる時間はちょっとしかない。そのうえ魚の活性が低いことが多いので、過度な期待は禁物。釣りに行け、川に立てただけで満足。魚が釣れたら幸運くらいの気持ちで、ちょうどいいのである。
さて、こんな季節でも釣り場探索の際にはキャンプをしてきたのだが、実は寒いなりに楽しみがある。それは、「火」である。
日が落ちて夕マヅメをねらうよりも、ストーブの燃える炎を見ているほうが幸せを感じる釣りキャンパー
産卵を終えて下流部でエサを取っていたであろう初冬のアメマス。このサイズが釣りキャンプでヒットできたなら、充分すぎる釣果といえよう
テント・シェルター内の暖房はストーブで
キャンプで火をおこすといえば、やっぱり焚火だ。炎には不思議な魅力がある。特に寒さが増す時期の火は格別だ。もちろん、夏でも秋でも火に変わりはないけれど、寒さの増すこの時期は、一層特別に感じる。12月のキャンプを体験してみると分かるが、日が落ちた後はかなり冷え込み、氷点下になるのが普通だ。夏場のキャンプと違うのは、この寒さ対策が必要だという点である。
田舎暮らしだけをしていると気づきにくいが、やはり薪が燃える姿を直に見るというのは、現代社会では立派な贅沢。だからキャンプが流行るのだろう
何年酷使しても壊れないスノーピークの焚火台。いくつかのパーツが別売りになっているが、火床のサイズは本体よりも小さくするという使い方もある
多くの場合、冬のキャンプでは大型のテントやシェルター(ソロキャンプでも数人用のもの)にテーブルやチェアなどを入れ、中だけで快適に過ごせるようにする。寝る場所も当然中だが、焚火だけは外という形式になる。
ここで問題になるのが、シェルター内の暖房。焚火をシェルター内で燃やすとどうなるかは想像がつくと思うが、炭火でさえ内部はかなり燻され、煙臭くなる。そのうえ換気をしっかりとしないと一酸化炭素中毒になる。
これは過日の冬キャンプ風景。初代の薪ストーブにティピ型のテントで釣りキャンプ中。明るいうちはテント内が薄暗いので、外で焚火と薪ストーブの火遊びダブルヘッダーで楽しむ
これは中型サイズのトンネル型テント内で、薪ストーブをインした様式。少々手狭で、実際にストーブを焚くとかなり高温になる。その調整になかなかの技術が必要。煙突ダンパーと呼ばれる空気の調整弁や、薪の大きさや種類で火加減をする。慣れてくると火を弱めにして、ジンギスカン鍋を適度に焼くことも可能になってくるはず
小型の一酸化炭素警報機。シェルターやテント内で火を使い、どうしても密閉しがちな冬キャンプの必須のアイテムとして考えたい。安全は買うことができる
最も簡単なのは灯油ストーブを使うこと。風が出るファンヒーターではなく、昔ながらの対流式ストーブであれば、ジンワリとした熱で温めてくれるだろう。きちんとした製品であれば火器としては安全だし、最近ではキャンプメーカーでも販売している。ただしこれも一酸化炭素中毒の危険はあるので、換気には充分に気をつける必要がある。
私にとって最もキャンプらしいストーブは、携帯型の薪ストーブ。携帯型といっても、あまり小さいと機能が損なわれるので(ストーブ内の空間が大きいほど燃焼力は増す)、それなりに大きいものが使いやすい。煙突があるので、煙がシェルター内に充満することはない。薪が燃えて爆ぜる音は聞いていて心地いいし、最近のストーブには窓ガラスが備えられていて、炎がよく見える。やっぱりこれが見えるのと見えないのとでは気分的にだいぶ違う。揺れる炎は、癒しなのだ。火が弱くなったら、ふたを開けて薪の位置を調整してあげればいい。
最新式のポータブル薪ストーブ。正面と横に窓ガラスが備えられており、燃える炎が見えるという仕組み。ここ3年ほどでこのタイプが普及した。キャンプの薪ストーブは世界的な流行の兆しが見えており、これは台湾メーカーの中国製。サイズも3種類、これは中間のMサイズで、38cmの薪がくべられる
この炎が見たくて、薪ストーブは3代目になる。だが使っていると数時間で、窓がススで曇って見えなくなることが判明した……
4本の脚は収納式。このおかげで使用時の安定性は抜群。収納性もいい
平均仕様の煙突は、すべて中に入る。煙突は直径が6cmほどで軽いステンレス製。オプションで90度、45度に曲げられるパーツもある。このキャンプトーブのためだけに作られている専用設計であり、その馬鹿さ加減がまたよろしい
これもオプションの専用湯沸かしタンク。ストーブは空気が流れていく煙突周辺部が非常に高温になり、そこへスッポリと収まる専用タンクというわけである。4ℓほど入るが、火が回るとあっという間に沸く。湧いた後はストーブの左側に下ろして引っ掛けるようになっている。よくもいろいろと機能を考えるものだ
英国アネヴェイ社のフロンティアストーブは、日本での冬キャンプブームの立役者でもある。ポータブルなお洒落ストーブなのだが、残念なことに窓がない
ストーブの形状は半円がいいようだ。内部の空気が回りながら煙突に吸い込まれていくため、熱効率がいい。冬場の枯葉は薪を燃やす点火剤になる
ストーブの上で調理をする際は、火力の強い薪をくべてやる必要がある。キャンプで使えるタイプの薪ストーブで安定した火力を維持するのは、実は簡単ではない。その分、うまく調整しながら燃やすことができれば、満足度は高い。どこか釣りの楽しさに通じるものがあるようにも思う。ようするにこれは、単なる暖房器具ではなく、使うことで愛着と楽しさが増す相棒なのだ。
暖を取るキャンプグッズその他。ちょっと前まではこうしたカセットガスなどを利用した便利グッズが主流だった。たしかに暖は取れるしガスも調理用と共通にできて便利なのだが……。やはり焚火や薪ストーブのような、手のかかる癒しのグッズとは根本的に違うのである。どちらに人気が集中しているかを考えると、今のキャンプブームの理由と本質が分かるような気がする
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