編集部2021年11月5日

北海道のトラウトゲーム 細流探索の楽しみ方 後編

イワナ ニジマス 魚種別釣りガイド NorthAnglers

規模の小さな流れは魚と釣り人との距離が近くなるため、魚に警戒心を与えないよう、釣り上がる人が多いだろう。が、矢野さんはしばしば釣り下りを選択する。前出のポイントのようにピンスポットを探る必要がある場合、下流側からアップで撃つと、オイシイスポットで魚にルアーを見せられる時間はごくわずか。

1.8gのマイクロスプーンに巨大な影が

Photo & Text by Hiroki Hirasawa

 近年は人気河川に釣り人が集中するが、河川の規模にこだわりがなければ、新しいポイントを捜してみよう。もしかすると、そこは楽園かもしれない。

 

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釣り下るアプローチで60cmオーバーが

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釣った本人も、橋の上のギャラリーも、安堵した瞬間 

 規模の小さな流れは魚と釣り人との距離が近くなるため、魚に警戒心を与えないよう、釣り上がる人が多いだろう。が、矢野さんはしばしば釣り下りを選択する。前出のポイントのようにピンスポットを探る必要がある場合、下流側からアップで撃つと、オイシイスポットで魚にルアーを見せられる時間はごくわずか。そのため、ルアーが浮き上がってしまうとしても、クロス~ダウンで撃ってピンスポットにルアーをステイさせる。そうして一点でアピールを続けていると、「魚がしびれを切らして食ってくることがあります」と言う。

 この日は、数日前の雨でやや増水気味。秋の雨は水温を下げ、魚の活性を低下させることが少なくない。アップで撃っても魚はルアーを追わないと考え、じっくり誘えるクロス~ダウンが有効だと判断した。

 ポイントから充分な距離を取り、慎重にキャスト。極小のスナップスイベルにセットされているのは1.8gのマイクロスプーン。魚が付いているボトムを直撃せず、表層に誘い出して食わせるという算段。ボトムを直撃して根掛かりすると、すべてが台無しになるからだ。

 1投目は少し核心部から離れてしまい、すぐに回収して2投目。表層で流れを受け、木の葉のようにヒラヒラと舞うマイクロスプーンを目がけ、大きな陰が浮上した。と思ったら、ルアーをくわえて反転。その一部始終が橋の上からはっきりと見えた。

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ファイト中、その顔つきから、オスであると分かった。トラウトアングラーなら誰もが憧れる存在。緊張感が高まる

 その刹那、リールのドラグがジーッと鳴る。小河川とはいえ、早瀬が待ち受ける下流に走られると厄介。矢野さんは上流側にロッドを倒してプレッシャーを掛けながら自らも下流に走る。と、魚は自らの棲みかである深みに突っ込んでいく。土管に対してほぼ正面、ランディングに適した浅場に構え、魚を徐々に寄せる。

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ここまできてもあわてず、基本に忠実に頭側からすくう

 引きの強さからも分かっていたが、想定サイズよりも遥かに大きく緊張感が伝わる。それでも落ち着いてネットですくったのはオスの素晴らしいニジマス。紅葉をまとったような頬がとても奇麗だ。サイズは60㎝をわずかに超えていた。エサが少ないせいか、細流で出会う大ものは全長があっても細い個体が多いと感じるが、このニジマスは本流から差してきたのか見事なコンディションも目を引いた。

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真紅に染まった頬と帯、尖ったヒレ。黒点の多さも印象的だ。素晴らしいワイルドレインボーに出会えたことに感謝。スプーンは1.8g、フックはがまかつ『ランカートラウト』8号で自作。掛かりは浅かったが、何とか耐えてくれた

小型軽量マイクロスプーンにこだわる理由

「北海道は小さな流れでも侮れない大ものが潜む」。本誌でたびたび、そんな類の一文があるが、今回の一尾はまさにそうだった。一番驚いたのは釣った矢野さん本人かもしれない。

 釣り歩いてもノーヒットだったり、意中の魚に出会えないと、ポイント開拓の時間が無駄だと思う人もいるだろう。しかし、いろいろな流れを釣っているうち、川の性質や状況などから「魚のいる川」「意外な大ものが潜む川」みたいなことが分かってくるはず。そうするとポイント開拓が面白くなり、自分の予想が当たったときは満足感もひとしお。中身の濃い釣行になる。

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思いがけず、細流の愛すべき住人、オショロコマもヒット。なお、サケ・マスが遡上する川は、産卵床に注意して釣り歩きたい

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使用タックル。ロッドはシマノ『カーディフ ネイティブスペシャルS54UL』、リールは同『ステラC2500XG』、ラインはPE0.8号、リーダーはナイロン8ポンドを1mほど


 最後に、マイクロスプーンについて。小型軽量にこだわるのは、次のような理由からだ。河川規模が小さくなるほどエサが少ないと考えられ、大ものになるほど落下するエサに依存しやすくなると矢野さんは思っている。そのため、水深のある大場所でも表層の攻略を重視する。重めのルアーだと、どうしても着水時のインパクトが大きく、百戦錬磨の大ものに警戒されてしまうのではないか。その点、小型軽量なマイクロスプーンの着水インパクトは、本物の昆虫などのようにナチュラル。そして「食べやすい大きさ」ゆえ、フッキングミスが少ないのも利点という。

 マイクロスプーンにマッチするフックは、バランス的に小さくなるが、太軸であればそれほど問題ない。細流でロッドを曲げるのは基本的に小型が多い。それをふまえるとサイズの小さいフックが合っている。

 釣り人が多いと嘆くなら、誰もいない流れを捜して入ってみよう。小規模でも伸び伸び釣りが楽しめ、もしかすると驚くほどの大ものが潜んでいるかもしれない。

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 正午前には川を上がり、山ブドウ採りを楽しんだ。せっかく自然の中にいるのだから釣りだけじゃもったいない

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