「渓流ベイトフィネス」というスタイルが定着して久しい。フィッシュマンの『Beams blancsierra(ビームス ブランシエラ)』シリーズは、ブームの火付け役と言ってよいだろう。今回は、私が今年買って使ってみてよかったと思う同社のアイテムに触れながら、読者の皆様を“沼”の入り口にご案内したい。
フィッシュマン『ビームス ブランシエラ4.8UL』で渓流ベイトフィネスの沼へ
文◎池田仁
「渓流ベイトフィネス」というスタイルが定着して久しい。今や各メーカーから専用タックルがリリースされ、ラインナップも充実している。そんななかでも、フィッシュマンの『Beams blancsierra(ビームス ブランシエラ)』シリーズは、ブームの火付け役と言ってよいだろう。今回は、私が今年買って使ってみてよかったと思う同社のアイテムに触れながら、読者の皆様を“沼”の入り口にご案内したい。
筆者プロフィール
North Angler’s編集部:池田仁/2021年2月つり人社入社。長野県出身。新卒の初任地が北海道で、カラフトマスの釣りに魅了される。北海道外に転勤後も何度か旅行で訪れていたが、思い切って移住を決断。釣り歴20年。
渓流トラウトあるある?
北海道では「まさかこんな所に⁉」と思うような小さな流れにも50cmを超えるトラウトが潜んでいる。彼らは往々にして狡猾で、水中の倒木や岸際のアシ、ボサ下に身を隠していることがほとんど。魚との距離が物理的に近いとはいえ、釣りあげるのは非常に難しいのである。
ごく小規模な渓流にも、色鮮やかなトラウトたちが棲息している。まさに「トラウト王国」の北海道
森に囲まれた小渓流を川伝いに釣り上がっていると、どこに隠れていたのか、川幅にそぐわない大きさの魚が猛スピードで足元をかすめるように泳いで行く……。私はそんな光景を目の当たりにして、しばしば悔しい思いをしていた。ズカズカとウェーディングする癖を直したり、丁寧な釣りを心掛けたりすればマシになるのは分かっているのだけれど、しがない週末アングラーに時間的な余裕はない。釣り急いで泣く泣く有望そうなポイントを潰してしまっていることだって多々あった。
そもそも悔しいと感じるのは、大物がいるのは分かっているのに“狙えない”ポイントがあるから。それなら課題は明確。キャスティングの精度を向上させればよい。ただ、これを実現するためには個人の鍛錬だけでなく、より自分に合ったタックルを模索するべきなのか?
そんな私の悩みを解消してくれたのが、フィッシュマンの『Beams blancsierra(ビームス ブランシエラ)』というベイトロッドだった。同社のロッドはかねてから数本所有していたが、こと渓流用のスペック「5.2UL」を手にしたのは2020年の春。ちょうど「渓流ベイトフィネス」のスタイルが定着しつつあった時分だ。ベイトタックルの優位性についてはここでは割愛するが、間違いなく『Beams blancsierra(ビームス ブランシエラ)5.2UL』は、渓流ベイトフィネスの人気を加速させた立役者の一つだろう。一文で表現するならば、私にとっては「渓流ルアーフィッシングがもっと楽しくなるロッド」だ。
渓流ルアーフィッシングがもっと楽しくなるロッド
だいぶ前置きが長くなってしまったが、今回紹介するアイテムは、今年リリースされたフィッシュマンの『Beams blancsierra(ビームス ブランシエラ)4.8UL』だ。先述の5.2UL(または先代の『Beams sierra(ビームス シエラ)』)で心を掴まれた渓流ベイトマンにとっては待望のモデルで、私も発売を心待ちにしていた。
※ブランシエラシリーズは現時点で「3.9UL LIMITED」、「4.8UL」、「5.2UL」の3機種。つい最近「4.8UL LIMITED」の情報が公開された
話は昨年夏に遡る。
『渓流2022(つり人3月号増刊)』でフィッシュマンの小野智恵美さんを取材した際、代表の赤塚ケンイチさんも同行していた。撮影の合間、赤塚さんが手にしていたロッド(5.2ULよりも短く、無塗装のブランクス)が気になり、聞いてみると「来年(2021年)出すブランシエラのプロトタイプ」だと言う。3gに満たないセミルアーを低弾道でキャストし、対岸の倒木際スレスレを流す姿が印象的だった。
「これ(4.8UL)は自信作だ」と赤塚さんは付け加えた。
恐れ多くもそのプロトを触らせてもらうと「かなり張りがある」というのが第一印象だったが、曲げてみると非常にしなやか。つまり、よく曲がるが収束が抜群に早いのである。このあたりは5.2ULゆずりだが、より一層元に戻ろうとする力が強い。それでいて5.2ULよりも急激にティップが入る。なるほど軽量ルアーのピンポイントキャストが決まるわけだ。
それから約1年が経ち、予約していた4.8ULが届いた。(渓流のハイシーズンを前に怪我をしてしまった私は、図らずして待望のロッドをさらに2ヵ月ほど温存することになったのだが……)意気揚々と向かったのは道東エリアの湿原河川。ちょうどアメマスが盛期を迎える時季だった。
使用感は5.2ULとは異なるが、キャストを繰り返すうちに慣れ、あのとき見た低弾道のキャストが再現できるようになってきた(ような気がした)。ルアーの軌道が安定する分飛距離が伸び、5フィート台のロッドと比較しても遜色はない。張りが強い分ミノーやトップウォーターの操作性にすぐれるだけでなく、柔軟なティップの恩恵でバイトを拾いやすいため、スプーンやスピナーなどタダ巻きを多用する釣りにも向いている。「渓流域はこの1本で勝負できるのでは?」とすら思えてしまうほどだった。
結局のところ小~中サイズのアメマス数尾で、客観的によいとは言えない釣果であったが、収穫は大きかった。これ(4.8UL)があれば、かつて“見て見ぬ振り”をしていた際どいポイントにも果敢に挑戦できる。それ以前に、キャストが決まればアタリがない時間も苦ではない。さまざまなプラス思考が作用し、『Beams blancsierra(ビームス ブランシエラ)』は「渓流ルアーフィッシングがもっと楽しくなるロッド」だと改めて感じさせられた。
対岸のボサ際にキャストが決まると、すぐにグッドコンディションのアメマスがヒットした
【5.2ULと4.8ULのベントカーブ比較】
※それぞれ同じ負荷(100g)をかけた5.2UL(写真上)は#2辺りから曲がり込むが、4.8UL(写真下)はカーブが緩やか。4.8ULのほうが全体的に張りが強いが、ティップセクションの柔軟性は両方とも顕著
『Beams blancsierra(ビームス ブランシエラ)4.8UL』のここに注目!
このロッドに対する個人的なツボが3つある。
①バットセクションのコスメ
バット部分のブランクに施された、ワインレッドのカーボン調コスメがカッコイイ。日光に当たると印象的な輝きを放つ
②シャープなデザイン
5.2ULより12cm短いが、それにしても細身(シャープ)な印象を受ける。その要因は#2と#3の継ぎ方にある。5.2UL(写真上)は並継ぎであるのに対して、4.8UL(写真下)は逆並継ぎ。全体的にすっきりとしたデザインは「ザ・渓流ルアーロッド」という感じがしてそそられる
③高感度なリールシート
リールシート周りがブランクタッチ。もともと張りが強い分アタリ感度もよいが、その特徴を活かすための仕様になっている
支持されるFishmanの“世界観”
『渓流2022(つり人3月号増刊)』の取材以降も何度か赤塚さんとお話しする機会があり、私はその度に感銘を受けている。
「僕は釣り人のストレスや悩みを解消するための提案をしたい。そのためには採算度外視でも、とにかく自分が納得できるものじゃなきゃダメ。一度企画した商品はとことん突き詰めて、妥協は一切しない。」
その言葉は新製品として具現化される。
ブレないコンセプトに魅了される。
知らず知らずのうちに“沼”にハマって、気付けば次回作を心待ちにしている。
つり人社編集部員が買ってよかったアイテム2022
◆つり人社編集部員が愛読書を紹介