今号の目玉である付録DVDでは、南アルプスの赤石沢完全遡行のようすを収録。南アルプスの秀渓を、臨場感あふれる映像で見ることができます。
どんな仕事にも邪魔されず、スマホの電子音から解放される場所
つり人オンライン=まとめ
「……はい、もしもし。……それでは本日中に送ります。……よろしくお願いします」
技術の進歩というのは、ありがたいもの。スマホのおかげで旅先だろうが、土日に家族と出掛けていようが、いつでも急な仕事が飛び込んでくる。
しかしせっかくの休みなんだから、本当なら電話ごときに邪魔されたくないもの。どこでも電波がつながるようにしてくれたキャリアの努力には感謝しかないが、ようやく釣れた魚とのやり取りを着信音で邪魔されると、ため息のひとつもつきたくなる。
つり人社なんかに勤めていると、各地の海や川へしょっちゅう出掛けることになる。たいていの釣り場は電波が届くので、仕事ができない言い訳にはならない。後で上司に「オマエさあ、なんで電話に出ないんだよ!?」と言われても、すいませんとしか言いようがない。
しかし誰にも、どんな仕事にも邪魔されず、あのいまいましいスマホの電子音から解放される場所がある。源流だ。
道などない川を上流目指して歩き、場合によっては山を越え、ようやくたどり着く源流。そこでは令和の時代になっても、スマホ画面に「圏外」の2文字が表示される。
「明日から3日間源流取材です」
鬼上司にそう告げれば「しょうがねえなあ、行く前に仕事片付けろよ」と言われはするものの、とりあえず束の間の解放感を味わえるのだ。日本に残された、数少ない「圏外」という自由の国。それが源流なのである。
源流の魅力はたくさんある。
「滝を上って、ひょいっと淵をのぞいたら、イワナがみんなこっちに寄ってきてじっと見てるんだよ。人間なんか見たことないからサ。……え? そりゃ釣れるに決まってるだろ。入れ食いなんてもんじゃないよ。釣るのがバカらしくなるから」
「でっかいマイタケが採れて、毎晩マイタケ三昧。そのうちゲップまでマイタケの香りがして……。スーパーに売ってるって? ああ……天然のヤツを食べたことないのね。まあ、一度食べれば分かるよ」
「なんてったって焚き火だよ。炎をぼーっと見てるだけで癒されるから」
筆者の話を聞いていると、山越えのしんどさとか、雨の日の不快感とか、アブやヤマビルのうっとうしさは忘れて、また源流に行きたくなる。
というわけで源流の魅力はあまたあるが、なかでも個人的に「ああ、また行きたいな」と思う大きな理由は、満天の星空が見られるということ。べつにロマンチスト気取りなのではない。まあ、写真を見てもらえば分かってもらえるのでは。
天の川を見ながら呑む酒は、やっぱり格別だ。……いや、もしかしたら旨い酒が呑めるというのが、源流に行く最大の理由かも。
価格:本体2,000円+税
A4変型判164ページ+DVD
2020年は、『渓流』創刊35周年という節目の年。春号と夏号、ともに付録DVDを入れた豪華版として発売します。今号の目玉である付録DVDでは、南アルプスの赤石沢完全遡行のようすを収録。南アルプスの秀渓を、臨場感あふれる映像で見ることができます。ぜひチェックしてください!