北海道・朱鞠内湖で釣り人が行方不明。クマの関与も。釣り人として必要な心構えは?
釣り人としての心構えは?
つり人オンライン=まとめ
2023年5月14日(日)、北海道・朱鞠内湖で釣りをしていた男性が行方不明になる事件が発生しました。
報道によると、イトウをねらいに同湖を訪れた男性は、早朝にガイドのボートでポイントに渡り、ひとりで釣りをしていました。午前10時ごろ、ガイドが迎えのボートを出したところ、ポイントに男性の姿はなく、周辺でクマの足跡とウェーダーをくわえたクマが目撃されたということです。
状況から見て、クマに襲われた可能性が高く、15日現在、警察による捜索が行なわれています。
近年、全国でクマ出没のニュースが相次いでいます。
昨年、秋には北海道・道南地方にて「North Angler's」取材班がヒグマに遭遇しました。上記の動画はその一部始終を映したものです。
本州以南でもツキノワグマとの遭遇に注意が必要です。
渓流釣りなど、クマのテリトリーに入る釣りではどんな心構えが必要でしょうか?
まずは、目撃情報のある地域には近づかないなど、クマとの接近を可能なかぎり避けることが重要です。
クマと遭遇しやすい時期にも傾向があります。
NPO法人日本ツキノワグマ研究所理事長・クマ研究者の米田一彦さんが、1993件もの人身事故例を徹底的に分析した著書『熊が人を襲うとき』によると、釣り人が襲われたケースは6月と8~9月が多いのです。
同書のp108~109から引用します。
※p108~109から引用
この季節には特に入念なクマ対策が必要と言えるでしょう。
もし遭遇してしまったらどう対処するべきか?
対処法をひと言で説明するのは不可能です。クマが若いのか成熟しているのか子供を連れているのかなど、状態によって習性が変わってくるうえ、人間側の行動によってもその後の反応が変わるからです。
ただし、過去の事例を読み解くことで少しでも生存率を上げる方法が見えてきます。
たとえば、同書では意外にも、うつぶせで“死んだフリ”をするのが有効と結論付けられています。
人間の体の前面は加害に弱く、攻撃は背で受けて凌ぐべきだ。我々も怖く感じる大グマほど攻撃は短時間で終わり、悠々と森に隠れる。闘うよりも現代の高度医療に頼るべきだ。
※P154~155より引用
迷信と思われがちな “死んだフリ”ですが、人体の弱点を晒さない、クマを刺激しにくい、足場の悪い山の中で転倒して無防備になるリスクが減るなど、結果的に生存率を上げることにつながるようです。
クマの習性や過去の事例を知ることで防げる事故があります。参考のために、つり人社のクマ関連本を紹介します。
熊が人を襲うとき
定価:本体1800円+税
著者:米田 一彦
四六判並製224P
熊を追いかけて46年になるツキノワグマ研究家が、長年のフィールドワークで培った圧倒的な知見をもとに過去の事故例を独自に分析、解説。 人はいつ、どこで、どのようにして熊に襲われてきたのか。熊から逃れる術はあるのか。被害を最小限に抑える方策は!? 過去1993件/2255人の人身事故例から「熊が人を襲うとき」の核心に迫る。 また平成28年5~6月に秋田県鹿角市で起きた重大事故(タケノコ採り4人が死亡、4人が重軽傷を負った国内第3規模の獣害事件)にも言及。 熊の分布域がかつてないほど広がりを見せる昨今、人と熊の遭遇はもはや山奥だけではなくなった。登山者、釣り人、山菜・キノコ取り、すべてのアウトドア・ファン必携の書。
人狩り熊 十和利山熊襲撃事件
定価:本体1,600円+税
著者:米田 一彦
四六判上製272P
2016年5~6月、秋田県鹿角市郊外でツキノワグマに襲われ4人が死亡・4人が負傷する本州未曾有の事件が起きた。 襲われて絶命した犠牲者は体を食害されたことも判明し、その衝撃は日本列島を駆け抜け市民を震え上がらせた。
青森・秋田県境に近い北東北の辺境の森でいったい何が起きたのか?
かつては秋田県庁職員、現在はフリー研究者であるクマの第一人者・米田一彦は事件の真相を解明すべく、現場に足を運んだ。
危険な笹薮に入り、遺族や関係者の証言を集め、現地のタケノコ採りに話を聞き、現地の特異な農業形態を調べ…散らばったパズルのピースを1つずつ集めて見えてきたものは。
クマ追い歴47年の著者が、事件の真相を後世に残すべく己のすべてを懸けて実像に迫った渾身のドキュメント!
熊!に出会った 襲われた
定価:本体1,111円+税
著者:つり人社書籍編集部・編
B6判並製160P
専門家によるツキノワグマ解説のほか、登山家、山岳ガイド、クマの生息地に暮らす方の視点、そして「クマに出会った」16人・「襲われた」4人の実体験を収載。 本書を読み込むことで、「現代のツキノワグマ」に対する知識や、どうすれば出会わずに済むのか? 出会ったときにはどう対処すべきか? 等のヒントがきっと得られるはず。 また国内最大の野生獣・北海道のヒグマ目撃体験談も収載。 釣り人や登山をはじめとするアウトドアファン、山菜取り、クマ出没地に暮らす人たちのサバイバル必読の書!
熊!に出会った 襲われた2
定価:本体1,111円+税
著者:つり人社書籍編集部・編
B6判並製160P
数メートル先に出てきたクマに肝を冷やした人、追いかけられた人、襲われた人、撃った人、戦った人…本州のツキノワグマから北海道のヒグマ、さらには海外での体験談も加え、前作をはるかにしのぐリアリティーでお届けする「クマ・サバイバル」第2弾。 釣り、山菜取り、登山、山スキー、狩猟、クマ研究家、さまざまな目的で山に入る人たちの視点と出会いの体験が、現代のツキノワグマとヒグマの実像を照らし出す!