水中カメラマンの尾崎幸司さん・DASH海岸アドバイザーの木村尚さんが話す、変わりゆく東京湾
水中カメラマンの尾崎幸司さん・DASH海岸アドバイザーの木村尚さんが話す、変わりゆく東京湾
東京湾に潜り続けて60年の水中カメラマン・尾崎幸司さんの書籍『東京湾 生物の不思議・最前線』が発売されました。先日開催された「東京湾大感謝祭」の会場では、尾崎さんと日テレ・DASH海岸のアドバイザーを務める木村尚さんをお呼びしてトークライブを行ないました。湾内の生息魚種や水中環境の変化について、尾崎さんと木村さんが語ります。司会は弊社会長の鈴木康友。このトークライブを収録した動画を公開しましたのでぜひご覧ください。このページでは冒頭5分間の内容を書き起こしています。
南の魚やサンゴが増えている
鈴木:今日お話ししていただく尾崎さんは、60年間東京湾に潜り続けている方で、いま75歳で現役です。それから、日本テレビのTV番組「鉄腕ダッシュ」のダッシュ海岸でTOKIOの先生役をやっていらっしゃる木村先生にもお話をしていただきます。一般的な東京湾のイメージと全然ちがう素晴らしい部分や、今起こりつつある問題な部分のお話をしていただけると思います。この『東京湾 生物の不思議・最前線』には東京湾で撮影された、マンボウやザトウクジラ、ジンベイザメなどの写真が巻頭に載っています。こういった南の海の魚が近年東京湾に入ってきているのですね。まずは尾崎さんにこの話題からお話しいただきたいと思います。東京湾は変わってきているのですか?
尾崎:東京湾はここ10年くらいの間に非常に変わってきています。以前は東京湾に流れ着いた南の魚は寒い時期には死んでしまってだいたい姿を消していたんですが、最近は東京湾周辺に定着して産卵して増えている魚がいます。いちばんの理由は東京湾の平均水温が約2.5~3℃くらい上がったということなんです。以前は一時的に水温が上昇してもすぐに下がっていたのですが、今は平均すると上がったままになってしまうものですから、南の魚が死滅せず、姿を見られるようになったんです。原因としていちばん考えられるのは地球温暖化による水温の変化です。漁師の人たちからも「なにしろ年間を通して水温が高いんだよ」という話を聞きますから、これははっきり言えることだと思います。
ちなみに、沖縄から南の魚が東京湾に入ってくるまでに早いと1週間以内でながれて入ってくるんです。
釣りの対象の魚でも、アカハタ、オオモンハタ、コショウダイなど10年くらい前の分布図にはなかった魚がどんどん勢力を伸ばして、数も多く大きさも完全に成魚になって居着いているんですね。
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鈴木:この本の副題に「江戸前の海がサンゴ礁の海になる」とあります。東京にお住まいの人たちでもあまりご存じないかもしれないですが、もともと黒潮が当たっている館山にはサンゴ礁があると言われています。
この本にはさらに面白いことが書かれていまして、房総半島の内陸からサンゴの化石が見つかるといいます。地球にはものすごく暖かい時代があったので、かつては房総半島もサンゴ礁だったのだろうと考えられますね。
尾崎:館山の周辺に行きますと、いろいろなサンゴの化石がたくさんあります。
鈴木:田んぼを掘ったらサンゴが出てくることがあるそうですね。
尾崎:掘りました。大きいものは1mくらいのサイズの化石もあって、それがもういたるところにありました。
鈴木:東京湾は将来その時代に戻っていくということですか?
尾崎:そうですね。ここ最近はサンゴの仲間でも下に台がついている形状のテーブルサンゴが勢力を伸ばしているのが目立ちますね。それが年間で12~14cmほど大きくなっていて、そういったようすがいたるところで見られるようになっています。
もうひとつ言わせていただくと房総半島の金谷エリアのとある岬にサンゴモドキという生き物が生息しているんですが、もしかしたらサンゴもあるのではないかと潜って泳いでみたら、周辺に小さなサンゴの群落がいくつか見つかりました。岩井エリアの沖には大きな群落がありまして、あれだけ大きな群落なので、おそらく産卵しているはずだということでTV番組でその様子を撮影することができました。それから東京湾のサンゴについての考え方がずいぶん変わりました。
鈴木:東京湾のサンゴというと外海だけにあると思っていたんですが、内湾にもあったのですね。
……このあとも東京湾の変化を実際に目で見てきた尾崎さんならではのお話が続きます。また、それを受けて木村尚さんによる専門家の視点での問題提起や、東京湾をよりよくしていくための提案なども必見の内容です。東京湾を身近に感じている方はもちろん、環境に興味のある方はぜひご覧ください。
続きは動画でどうぞ!
NHK「ダーウィンが来た!」をはじめ、さまざまなTV番組に映像を提供するなど、水中カメラマンの第一人者として活躍を続ける伝説のダイバー=著者が、「故郷の海」東京湾に棲む生物を紹介する。60年間にわたって東京湾の海に潜り続けてきた著者だけが知る、驚くべき生物の生態と近年の海の変化。それらを貴重な多数の写真と文章で綴ります。
また、さまざまな立場で東京湾の海にかかわる方たちに、著者がインタビュー。都心の老舗江戸前寿司店、船宿、釣り具メーカー、漁協、博物館スタッフ、釣り専門出版社、ダイビング雑誌元編集長との縦横無尽なトークも収載しました。
2020年東京オリンピックを間近に、注目が高まりつつある東京湾。その海の本当の素顔は、しかし、意外に知られていません。本書に触れれば、この海が本来もっている豊かな生命力にぐんぐんと心をひかれるはず。
水族館より不思議で楽しいダイナミックな「東京湾の生物のライブ」を凝縮した一冊です!
定価:本体1,600円+税
著者:尾崎 幸司
出版年度:2019
A5判並製160P
2019/8/29