一貫した自社生産スタイルでどこよりもプロト制作に恵まれた環境にあるにも関わらず2年もの制作期間を経て、ようやく完成した渾身のビッグベイト『コノフラット』。その全貌をDUO社CEO&チーフデザイナーの安達政弘が本音で語る。
フラット系ジャークベイトの新たなるスタンダード
一貫した自社生産スタイルでどこよりもプロト制作に恵まれた環境にあるにも関わらず2年もの制作期間を経て、ようやく完成した渾身のビッグベイト『コノフラット』。その全貌をDUO社CEO&チーフデザイナーの安達政弘が本音で語る。
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優秀すぎる『ビッグバンディット』を超えるために
「10年くらい前から、ずっと“作ってくれ”ってヨーロッパのアングラーや代理店から言われてた。ウチだけじゃなくて、他のメーカーさんも言われてる。それぐらい向こうでは需要がある」そのルアーとは、パイク(ノーザンパイク)用のフラットサイドのジャークベイト。ヨーロッパでは、パイク用の定番カテゴリーとして数十種類も存在する大きなマーケット。だが、ずっと制作する気にはなれなかったと本音を漏らす安達。理由は、日本で売っても売れないからだ。
「パイク用のド定番ルアーの『バスタージャーク』(ストライクプロ)みたいに、ぐちゃぐちゃって動くルアーは日本では皆さん、なかなか受け入れてくれない。日本ではキレイに動かないとね。それはミノーも一緒。曲がって泳いだりするのを皆さん、嫌がる傾向にある。バランスをギリギリ崩すルアーって結構、釣れるんですけどね。だけど、そういう理由があってそれをメーカーがねらってやるっていうのは、なかなかできないわけですよ。でも、『バスタージャーク』の大きい『ビッグバンディット』は超優秀で泳ぎがキレイなんですよ」
これまで乗る気になれなかった安達が、どうして『ビッグバンディット』が気になる存在になったのか?
「4~5年前から東京湾のオフショアでビッグベイトのS字系の釣りやビッグペンシルの釣りがコノシロパターンで流行り出した。そして、フラットサイド系のルアーも日の目を見てきた。俺も昔から、東京湾ではやってたんだけど、そこまでこの釣りには興味がなくて……でも、情報だけは追いかけてはいた。そのフラット系が流行ってるしシーバスがよく釣れるという情報だから、実際に俺も行って使ってみた。『ビッグバンディット』も使ってね。そしたら、これがいい動きするし釣れるし……。だから、本当のこと言うと東京湾でもマーケットとしてあるからやることになった。俺は正直、流行りもんだからやりたくなかった。流行り物は終わるものも早いしね。でも、これは定番として残りそうな気がした。海外にもマーケットはあるからね。でも……俺の読みが甘かった。『ビッグバンディット』が優秀すぎて、なかなか超えるものが作れない。これは、台湾のメーカーなんだけど、元々は北欧かどこかのハンドメイドで、どこかのメーカーさんが買って広めたもの。ウッドのハンドメイドって作りやすいフラットサイドが多いんだけど、これはそのプラスチック版。きっと、これは偶然できたものだと思うんだけど……すごいよくできてる」
デザイナーでありプロデューサーでもある安達は、これまであらゆるタイプのルアーを500モデル以上削ってきた。だが、そんな百戦錬磨の安達を唸らせることとなる。
無垢のABS樹脂から安達が削り出したマスターたち。「まずは脳内で適当に考えてテストサンプルを作るんだけど、その時に最初のイメージの精度が高ければ高いほど後が楽。つまり、デザインの精度が高いほど開発は楽になる。やってみたけどゴミでした、っていうのが続いても、これは作らないといけない。だから、最初のイメージで8割9割はカタチにはしたい。でも、今回は残念ながら気に入らないところが多くて7割ぐらいのものが続いた。やってみて予想通りのところもあったし迷走したところもあったけど勉強にはなったね」
「結局、後から出すのにスペックだったり使いやすさだったり釣果だったりを落とすわけにはいかないじゃん。ウチはあんまりやらないけど、よく海外の秀作なルアーを日本のメーカーが作るっていうのはよくある話、特にバス系はめちゃくちゃある。もちろん、それは国内メーカー同士でもあるけどね。で、それが圧倒的にオリジナルよりも勝ってるかっていったら、意外とそうじゃないケースが多い。例えば、『ザラ』(ヘドン)を目標としたペンシルは山ほどあるけど、『ザラ』を超えるペンシルは作れないわけよ。シンプルだから。俺は『ザラ』を超えるペンシルは知らない。それと同じ理屈で海外の名もなき秀作を日本のメーカーが作り直したルアーはいっぱいあるわけよ。それと一緒でしょ、って言われたらそうかもしれないけど、やる以上は日本の皆さんに受け入れられるものを作らないといけない」
安達はABS樹脂片手にデザインしハンドカービングを試みる。体高の高いもの細いもの、フラットもあればややラウンドのもの。2フック、3フック……のマスター(マシンカットする前の手削りの原型)を結果的に6体ほど作ることとなった。
「昔は機械がなかったからルアーの内部も全部、手で削ってたから何個もできなかった。今は削ったものをデジタル計測して形状データを作って、内部のウエイトやピンの位置を自由にアレンジして、オペレーターが微調整して機械で削れる。それがマシンカットね。昔と比べたら何十倍っていう量が作れるようになった。やれる幅も広がったし精度も上がった」
「いろいろ試行錯誤した結果、ものすごい量を作ることになった。マスターだけで6体かな。それを3D計測機でスキャンしてマシンカットするんだけど、そのプロトは数十作った。普通じゃありえない量ですよ。これは、リップがないんで、ボディー形状とウエイト配分で大体のアクションが決まってしまう。水の抵抗で動くからね。だから、何かパッとしないっておもったら全部、削り直さなきゃいけない。リップがあったら、リップとウエイトの位置を替えれば終わりだけどね。それができないからイチから削り直し。いちいち、マスターをハンドカービングして作らないといけない。じゃないとテストになんないから。しかも、デカいし。だから大変なの。ここまでやったの久々だね」
後編:条件は誰が使っても釣れるルアーであること
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『ビッグベイトシーバス』
一度はこれでシーバスを釣ってみたい──。 潜在的にこの釣りに憧れているアングラーの数は多い。そして実際にシーバスを引っ張り出す潜在能力の高いカテゴリーがビッグベイトシーバスゲームだ。 どんどんサイズアップしていくビッグベイトもあれば、スタンダードな方向へライト化していくビッグベイトも動き始めた。今、もっとも最先端であり熱いゲームがここにある。
一度はこれでシーバスを釣ってみたい──。 潜在的にこの釣りに憧れているアングラーの数は多い。そして実際にシーバスを引っ張り出す潜在能力の高いカテゴリーがビッグベイトシーバスゲームだ。 どんどんサイズアップしていくビッグベイトもあれば、スタンダードな方向へライト化していくビッグベイトも動き始めた。今、もっとも最先端であり熱いゲームがここにある。