春先はマブナ釣りやタナゴ釣りで賑わう水郷・霞ヶ浦。梅雨に入る頃から楽しめるのが湖岸のテナガエビ釣りだ。日除けの麦わらやキャップを用意したら、足場がよい釣り場でのんびりサオをだせる。
東京から日帰り可能&足場がいいおすすめテナガスポット:霞ヶ浦
つり人編集部=写真と文
春先はマブナ釣りやタナゴ釣りで賑わう水郷・霞ヶ浦。梅雨に入る頃から楽しめるのが湖岸のテナガエビ釣りだ。日除けの麦わらやキャップを用意したら、足場がよい釣り場でのんびりサオをだせる。淡水湖のテナガエビ
霞ヶ浦は茨城県で最大、日本でも琵琶湖に次いで2番目に大きい湖。「浦」という名前が示すとおり、元は海と繋がっている入江や潟の集まりだ。1963年に流域に常陸川逆水門が完成したことで、海水との交流が遮断。現在のような完全な淡水湖になった。
テナガエビは本来、海水と淡水が入り混じる汽水域を生活の場にする。ところが地域によっては、淡水域で繁殖できるように適応するものがいて、霞ヶ浦のテナガエビはそうした能力を獲得したと考えられている。ちなみに霞ヶ浦のテナガエビは、長野県の諏訪湖や山梨県の西湖に移植された歴史があり、大正時代に移植が行なわれた諏訪湖では漁業資源として定着。現在、諏訪湖漁協の遊漁券(日釣券が1000円)を購入すれば釣りができる。漁協のHPにも案内が出ていて、サオ釣りのおすすめ時期は5月~7月中旬だ。
一方、霞ヶ浦のテナガエビ釣りは無料で楽しめる。これは霞ヶ浦が海区(海)という扱いになっているため。ただし、茨城県の定める保護水面(禁漁区)などのルールは守らなければならない。保護水面や釣り禁止区域には、その区域を示すために湖岸に標柱、沖合に点滅ブイなどがあるので目印にする。もちろん、乱獲や迷惑駐車をしないなどのマナーはどこでも変わらず守りたい。
左が鈴木さん。このように護岸の手前をねらえばOK。沖をねらうより仕掛けも安定する
鈴木さんに小ブナ釣りとタナゴ釣りを教わって以来、小もの釣りの楽しさに目覚めた田所幾江さんも見事に立派なオスのテナガエビをゲット
鈴木さんの小もの釣り仲間も次々とヒット
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暑さ対策と飲料水を充分に
霞ヶ浦の南岸、稲敷市の鳩崎周辺を訪れたのは7月上旬。近くに住み、一年を通じて霞ヶ浦周辺の小もの釣りを仲間と楽しんでいる鈴木清さんから「そろそろテナガが釣れ始めたよ」との知らせを受け、快晴の湖に足を運んだ。のんびり朝10時前に到着すると、鈴木さんたちや地元の釣り人が足場のよい護岸に思い思いに釣り座を構えている。霞ヶ浦のテナガエビ釣りは、川の釣りと違って潮の干満で釣り場のようすが変わることがない。その点、初めてであっても釣りに行くタイミングに迷わなくてすむのがうれしい。
「ここのテナガエビは毎年5月頃になると少しずつ釣れ始めて、6~7月が数も大きさもそろいやすいハイシーズン。5月にまずオスが釣れ始め、日を追うごとにメスも接岸してきてよく釣れるようになるね」と鈴木さん。注意点としては、湖沿いは日陰が少ない分、天気がよいと日中はどこもかなり暑くなること。釣り道具のほか、帽子や充分な飲料水は必須アイテムだ。
石組の間をねらい撃ち
釣り方はテトラポッド周りの「穴」や「斜面」をねらっていくシンプルなもの。サオは6尺(1.8m)がおすすめ。ねらうポイントは手前だが、大きいテトラポッドが入っていることもあり、手前から思いのほか水深がある場合も多いからだ。これで仕掛けは余りを少し出すくらい(サオ全長+10㎝ほどの長さ)にする。
鈴木さんはミチイトに市販のシモリ玉4個を付けたシモリ仕掛けを愛用。ひと工夫として、オモリはガン玉ではなく中通しオモリを使って、テナガエビがエサを持っていこうとした時に抵抗を感じさせない遊動幅を持たせている。ハリは中通しオモリの下側のストッパーにもなっている丸カンに市販のハリス付き海老バリを結ぶ。
中通しのオモリは20㎝ほどの幅で遊動する。上側のストッパーはウキ止メゴムを楊枝の先で固定したもの
複数のシモリ玉は水面直下でカーブを描くようにウキ下を調整。テナガエビが反応すればウキがスライドするように動く
「テナガエビはテトラポッドの重なった隙間や斜面にいるから、仕掛けが用意できたらあとはシモリ玉がすべて水面下に入るようにウキ下を調整して、いろんな穴をさぐっていけばいい。普通はそれでウキが動くけれど、たまに居食いしているのもいるから、反応がなければ定期的に仕掛けを上げてチェック。エサは常に新鮮なほうがいいね」と鈴木さん。
「朝だけよく来ています」という地元の常連さんは2本ザオ。1本は手に持ち、もう1本は足もとに置いてたまにチェック。テナガエビ釣りでは数を伸ばすのに効果的なスタイル。釣ったテナガエビは持ち帰るまでフラシの中で生かしていた
常連さんの仕掛け。玉ウキは小さいサイズでオモリはウキが沈む程度に軽い板オモリ
このほか、活性の高いテナガエビは宙層を泳ぎ回って積極的にエサを捜していることもあるそう。そんな時は玉ウキ仕掛けを使って、エサを底から20㎝ほど離した状態でねらってみるのも面白いそうだ。また、鈴木さんの釣り仲間にはタナゴ釣り用の仕掛けをそのまま使っている人も多い。板オモリの量を少し増して、親ウキが水面下に沈むようにしておけば、そのままテナガエビ釣りに使える。テナガエビは食欲旺盛。近くにエサが落ちてくればまず反応するので、仕掛けもこれでなければいけないというものはほとんどない。あとは「もしテナガエビが隙間に入り込んで、根掛かりのようになってしまったら、無理に引っ張らないで少し緩めてやるとエビのほうから出てきますよ。シンプルな仕掛けといっても、切っちゃったらやっぱりもったいないからね」という鈴木さんのアドバイスも覚えておけば万全だ。
霞ヶ浦の湖岸は鳩崎周辺に限らず広範囲でテナガエビがねらえる。鈴木さんのおすすめ実績ポイントは地図に記したとおりだ。6月上旬の時点で、今年もテナガエビは順調に釣れ始めたとのこと。ビンビンという心地よいキックバックを味わいに、ぜひ出掛けてみてほしい。
テナガエビはエアーポンプをセットした小型クーラーで生かしておくと、帰宅するまでにドロも抜けて美味しく食べられる。暑い日はペットボトル氷も入れて水温の上昇を抑えてやるとなおよい
立派なロングアームを持つオスとメスのペア。美味しく食べられる分だけを持ち帰ろう
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2019/6/17