バズベイトの個性を決定付けるペラ・ワイヤー・ヘッドの構造とその機能について、泉和摩さんに話を伺った。今回はバズベイトの性能とペラの役割編!
バズベイトの個性を決める要素とは・・・?
◎Basser編集部
この記事は『Basser』2020年9月号に掲載したものを再編集しています。
バズベイトの個性を決定付けるペラ・ワイヤー・ヘッドの構造とその機能について、泉和摩さんに話を伺った。今回はバズベイトの性能とペラの役割編!
(プロフィール)
泉 和摩(いずみ・かずま)
1955年9月30日生まれ。東京都在住。
HMKL代表。ハンクルミノーなどを手掛けるルアービルダーでありがら、今なおJBTOP50に参戦するトーナメントアングラー。東京都小平市にあるショールームは一見の価値あり。
「目立つ物体である」ことが前提条件
――この記事では、バズベイトの基本構造と、ペラ、ヘッド、ワイヤーなどの各パーツ、あるいはそれらの組み合わせが、バズベイトの機能や個性にどう影響してくるかを泉さんに教えていただきたいです。
泉 私でよければぜひ。よろしくお願いします。フフフ。
――まず、バズベイトの開発を考えた際、どのパーツありきで設計が進んで行くのでしょうか。ペラですが? ヘッドですか?
泉 バズベイトの使いどころを考えればよくわかります。あくまで私にとっての場合ですが、バズベイトはキャスト&リトリーブを繰り返すルアーであり、ほかのルアーにはない強いアピール力でバスにスイッチを入れるルアー、という認識です。
そして、基本的にはバスにチェイスさせて食わせるルアーというよりも、カバーなどに潜むバスのすぐ近くを通して食わせるイメージのルアーです。
昔、私がアメリカのトーナメントにコ・アングラーとして出場していたとき、ボーターだったポール・アライアスが100mほどのワンストレッチを1日中バズベイトで延々往復しながら釣っていました。
結果は5尾で24Lbオーバーのビッグウエイトです。後ろでほかのトップウォーターやソフトベイトを投げていた私にはまったく釣れませんでした。
しかも、ポールが使っていたのはアピール力の高いノッカータイプのバズベイト。このとき、「バズベイトのアピール力は遠くのバスを寄せるためだけではなく、すぐ近くにいるバスに強く訴えかけるためにも必要なんだ」と感じました。
話が逸れてしまいましたが、とにかく、私にとってのバズベイトは「バスに強烈にアピールできるリーリングベイト」という位置づけ。そのため、まずはテンポよくアプローチするための安定した飛距離、つまりある程度のヘッドウエイトが必要です。
10~14gはほしいところですね。重量のあるヘッドを素早く浮き上がらせることができ、なおかつアピール力もほしいとなると、それなりに大きなペラを搭載することになります。
重量のあるヘッドに、それとバランスを取れる大きめのペラ。これが私的なバズベイトの基本的な設計思想です。ここから、音質や細かい機能を追求していく作業になります。
最初に断っておきたいのは、バズベイトの性能は各パーツそれぞれの特徴だけでなく、あくまでそれらが組み合わさったときのバランスで決まる、と言うことです。
ペラの持つ役割と特徴
――ペラはバズベイトの象徴的なパーツです。どのようなものにどのような特徴があるのでしょうか。
泉 ひと昔まではパテントペラが主流でしたが、特許が切れてからは各社オリジナリティーのあるペラを搭載したバズベイトを発売していますね。どんな特徴のペラであれ、それが回転することで揚力を発生することでバズベイトがトップウォータープラグとして機能し、サウンドや波動を生み出してバスにアピールすることには変わりません。ではまず、羽の枚数と素材お話からしましょうか。
――いきなり興味深い話です。
泉 羽の枚数は、現在は2枚のもの、そしてアルミ製のものが主流です。では、羽の枚数が増えると何が起こると思いますか?
――すみません。わかりません……。
泉 羽の枚数が3枚、4枚と増えるにしたがって、回転がスムーズになります。そして素材がアルミからプラスチックに変わるとペラが軽くなるため、さらに軽い力でも回りだし、レスポンスが上がります。
――いいことのように聞こえますが、そういった3~4枚羽のペラやプラスチック製のペラは現在あまりないように感じます。
泉 その事実こそが、バズベイトに何が求められているかを表わしています。
スムーズに軽く回るということは、そのぶんバイブレーションが弱い、つまり同じサイズのペラで考えたときにアピールが劣ってくるということです。
2枚ペラのほうがいい意味での不安定さがあり、そのバイブレーションとも相まってバスにスイッチを入れる力を持っている、と言うことです。綺麗にくるくる回ればいい、と言うわけではないんですね。
羽の枚数や素材にかかわらず、バズベイトのペラは「スムーズまわすのか、不安定にガクガクと振動させながらまわしたいのか」という考えが設計上重要になってきます。
――オフセットタイプとセンターバランスタイプの違いを教えてほしいです。
一般的なセンターバランスタイプのペラ。アームが回転軸の中心を通っているためスムーズに回りだす。
オフセットペラは回転軸が傾いているため滑らかには回りづらいが、そのぶん強いバイブレーションを得られる
泉 センターバランスタイプはペラの中心をシャフト(アーム)が通っているタイプ、オフセットタイプはシャフトがペラのセンターを外れて通っているタイプです。
前者がスムーズに回り出しやすいのに対し、後者は回転軸が中心からずれているためスムーズに回り出しにくいぶん、ガクガクと強いバイブレーションを発生しやすいという特徴があります。
ただし、センターバランスタイプのペラでも羽のサイズなどを左右非対称にすることで意図的にバランスを崩し、バイブレーションを発生させるものもあります。
――ペラのサイズに関してはどうでしょうか。
泉 ペラのサイズに関しては、皆さん想像しやすいように、大きければ大きいほど水を掻く量が増し、アピール力が上がります。
また、揚力も上がるので着水後の浮き上がりも早くなる傾向があります。また、揚力が高いということはスローリトリーブにも対応できるということです。
反対に、ペラの小さいバズベイトは沈みやすいため、水面で使うにはそれなりのリトリーブスピードで巻くことが必要になってきます。ペラが大きいことのデメリットは、空気抵抗が増すことで飛びづらくなったり、空中でくるくる回ってしまい着水点のコントロールがしにくくなる、と言うことが挙げられます。
ただ、これらすべてはペラ単体の形状で見た際の傾向であって、ヘッドやワイヤーとの組み合わせ次第ではまた別の特徴が出てくる場合もあります。
――前後にふたつのペラが付いている、ダブルペラタイプの特徴を教えてほしいです。
前後に逆回転する2枚のペラがセットされたタイプ(写真はバブルトルネード)。直進性が高く、飛沫やバブルを多く発生する
泉 ダブルペラタイプの強みは、直進性の高さにあります。
シングルのペラではどうしても回転によって左右どちらかにトレースコースが曲がってしまうところを、前後が逆回転するよう設計されたダブルペラはまっすぐ進んできてしまいます。
また、シングルペラよりも多くの羽で水を掻くので、複雑な水流や波動のアピールができるのも特徴です。
――ペラをほかのパーツに接触させて音を出すノッカータイプやクラッカータイプに関してはどうでしょうか。
ノッカータイプ(写真はダイナモバズ)。回転するペラがヘッドに当たり、甲高い金属音を発する。ワイヤーの開き幅を調整することで音の強弱を調節したり、当てないようにしてノック音を消すこともできる。
クラッカータイプは金属板が稼働するため、ノッカータイプよりややヒット音は小さくなる傾向にある
泉 回転するペラをヘッドの一部に接触させるものをノッカータイプ、ワイヤーに小型の金属板を取り付け、それに接触させるタイプをクラッカータイプと一般的に呼びます。
どちらも金属同士が接触して大きな音を出すためアピール力が高いモデルとなりますが、ノッカータイプのほうがより大きな音が出やすいです。
うちのダイナモバズベイトもこのタイプですね。また、これらのタイプはペラが回ることを阻害するパーツが付いているため、先ほどお話した「いい意味での回転の不安定さ」も生まれます。
ペラの特徴まとめ
■ペラの数
シングル
→左右どちらかにやや逸れながら進む
ダブル(逆回転するふたつのペラが前後にセットされているもの)
→直進性が高い
■羽根の枚数
・少ない
→スムーズに回りだしづらいがバイブレーションが強い
・多い
→スムーズに回るが、バイブレーションは弱い
■羽根のサイズ
・大きい
→浮き上がりが早い。高速回転はしないが水押しは強い。低速巻きに対応
・小さい
→浮き上がりは遅い。高速で回転するが水押しは弱い。中速以上の巻きスピードが基準
■回転の中心軸
・センターバランスペラ(ワイヤーがペラの中心を通っているもの)
→スムーズかつ高速で回転しやすい。バイブレーションは弱め。ペラの形状が左右非対称になっている場合はこの限りではない
・オフセットペラ(ワイヤーがペラの中心軸を外れて通っているもの)
→周り出しはややもたつくが、バイブレーションが強い
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