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編集部2022年1月28日

江戸和竿職人「竿中」さん、タナゴザオを語る。その1(全2回)

タナゴ 河川・湖の釣り

45年間、竹と向き合う人生を送ってきた。たたき上げの江戸和竿職人である竿中さんが、タナゴザオの今と昔、こだわりのポイントを語る

竹と向き合う人生

写真と文◎編集部
この記事は月刊つり人2022年2月号の記事を再編集しています

45年間、竹と向き合う人生を送ってきた。たたき上げの江戸和竿職人である竿中さんが、タナゴザオの今と昔、こだわりのポイントを語る

竿師の道を志すまで

 竿中こと中台泰夫さんは千葉県千葉市に生まれ育った。60年代最後、70年代初頭の小学生のころから釣りキチで「ルアー少年のはしりです」と振り返る。自転車で雄蛇ヶ池に通いバスフィッシングに熱中し、その前は海川の小物釣りも楽しんだ。

saonaka (1)竿中さんは1959 年生まれ。平成にデビューした竹竿職人だ

「自転車で行ける距離に祖父の家があって、裏の竹林で時間を潰すうち竹が好きになったんです。竹ザオを作りたいという気持ちがムクムクと芽生えて。中学校3年生の時には竿師になりたいと思っていました。ちょうどその頃に千葉市が学校群制度を取り入れて、自分はその一期生だった。学校の格差をなくすため、学力が平均になるように合格者を勝手に振り分けるのが学校群という制度。進学したものの、行きたい高校に入れなかった。16〜18歳のティーンの一番いい時期を、学校のぐちゃぐちゃで埋もれたくない。自分で何かをやりたいと思って、1年間は高校に通いながら竿師の道を模索したんです」

 そして1976年、千葉県松戸市の「竿かづ工房」に入門。師匠と兄弟子に囲まれた25年間の修行を経て、師匠の引退とともに2001年に独立する。徒弟制度で学んだ最後の江戸和竿師といわれ、千葉県市川市に自宅と並ぶ工房を構えた。それから20年後の現在は江戸和竿組合の理事となり、21年3月には東京都の伝統工芸士に認定された。

saonaka (2)竿中の焼き印は真っ二つに割ると左右対称になるように工夫した

 

こだわり1:切り組みについて

「サオ作りは切り組みまでがほとんどの仕事です。竿かづ親方も切り組みが決まった時点でサオは90%できていると言っていました」

 切り組みとは対象魚や釣り方など諸条件を前提に適した原竹を選び、サオの全長とともに継ぎ数、仕舞寸法を割り出して一本の継ぎザオを組み上げる仕事である。

saonaka (6)切り組まれたタナゴザオ。全長40cm、50cm、55cm のサオだ。全長から各節の寸法を割り出して切り組む

「たとえば5本継ぎで組み上げるなら5本の節全部を4寸なら4寸、5寸なら5寸と同じ節間の竹で揃えたい。竹は節のすぐ近くで切ったほうがサオの調子もよくなります。8寸で切れる節間の竹で4寸のサオは作らない。切り組んだ節を見てもらえば、だいたい同じような大きさの節でしょう。これも竿師としてのプライドなんです」

 今と昔でタナゴザオの注文は大きく変わったそうである。まず長さが違う。昔のタナゴザオは一口に8寸切り。ほとんどの釣り場に対応できる10本継ぎの需要も高く、5本、6本と釣り場に応じた長さの継ぎ数にして、替え手元を作ったり、込み(継ぎザオの継ぎ部)を持って使う人も多かった。それが現代は4寸切り、5寸切りといった短いサオが人気だ。

saonaka (12)1698寸切りの10本継ぎに替え手元が2つ。昔は10本の継ぎザオを求める人が多かった

「タナゴザオの穂持ちは『分無し(ぶなし)』が基準でした。一分(いちぶ)は約3mmだからそのちょっと手前の2.7mmくらいの太さの竹を選んで、各節を切り組むのが昔のスタイル。それが作りやすいし、竹を調達する竹屋さんも一分を目安に採ればよいから仕事がしやすかった。お客さんに対してもタナゴザオは8寸切りの5本継ぎ、6本継ぎが定番と言えば聞き入れてくれた。それが今は全長50cm、もしくは45cmが欲しいと全長から指定する注文が多くなりました。で、何本継ぎにするの? と聞けば4本継ぎ、5本継ぎと指定してくる。だから切り組みの計算を全長から割り出さなくちゃいけなくなった。昔のように単純じゃなくなりました」

saonaka (13)こちらは全長57cm のタナゴザオ。一節は16.2cmで作られている

saonaka (3)「面白いノベがあります」と見せてくれたのは手元が杖のような恰好をしている。根の自然の造形を生かした手元で人差し指と中指で挟んで保持できる

 

次回は調子・塗りのこだわり、竿づくりのこれからについて語ってもらいます。

江戸和竿職人「竿中」さん、タナゴザオを語る。その2(最終回)

 

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