冬になると思い出すあの味。寒さが極まるほど旨くなる魚。この時期ならではの釣りの楽しさ。とっておきの寒の味はまさに十人十色。今回は北海道室蘭港のカジカ鍋をご紹介します。
冬の絶品ナベコワシで身も心もあたたまる!
解説◎中川貴宣
この記事は月刊つり人2021年3月号の記事を再編集しています
冬になると思い出すあの味。寒さが極まるほど旨くなる魚。この時期ならではの釣りの楽しさ。とっておきの寒の味はまさに十人十色。今回は北海道室蘭港のカジカ鍋をご紹介します。
解説◎中川貴宣
(なかがわ・たかのり)
北海道余市郡在住。姉妹紙ノースアングラーズで活躍する釣り好きサラリーマンライターでカメラも玄人はだし
冬のおすすめ、カジカ鍋
ケムシカジカの鍋。合わせる具材は白菜などの葉もの野菜やキノコ、お豆腐に大根、ニンジンなどお好みで
全国的にはマイナーながら、北海道民に愛されてやまない鍋料理がある。そのメイン食材はカジカ。『魚』へんに『秋』と書くように、寒くなる秋〜冬に接岸してくる。全国的には川の魚と認識されているようだが、北海道では海の魚なのだ。昔はグロテスクな見た目から流通も少なく、味噌仕立ての漁師料理として一部の人だけが食していたそうだ。
私の実家では釣り好きの父が釣ってくることもあり、40年以上前から冬の定番鍋料理としてカジカ汁が食卓を飾っていた。夕方に出かけ、夜中に帰ってくる父。朝起きると台所のシンクにはカジカが無造作に置かれていた。生命力の強い魚で、水がなくても数時間は生きていられ、子どもだった私は、シンクに水をためて泳がせるのが楽しみだった。そんなカジカも夜には鍋の具材に……。
旨味が染み出て濃厚な汁。子どもながらに肝が美味しいため、鍋底に残っているのを探してまで食べていたのが懐かしい。今では家庭料理として定着し、スーパーでもカジカは手に入るが、ほとんどが人気のあるトゲカジカ。確かに美味だが、私としてはシーズンの早いケムシカジカが冬の訪れを感じる魚。毎年、気温が一桁になり息が白くなると、無性に食べたくなって釣り場へと向かってしまう。
鋭い歯がびっしり並んでいるので、絶対に指を入れないこと。口をこじ開けるのが容易でないほど顎の力は強い
こちらはトゲカジカ。北海道で「マカジカ」と呼ばれるほどメジャーなカジカで市場やスーパーで売られているのはほとんどがトゲカジカ。エラブタに4 本のトゲがあり、尾ビレの先が白いのが特徴
食のワンポイント
だしはカジカから旨味成分が出るので、薄めでOK。カジカはぶつ切りにし、熱湯をかけて臭みを取る。味噌仕立てで煮込むが、肝の半分をすりつぶして汁に溶かすことで濃厚な味に。北海道ではジャガイモを入れるのが定番。
あまりの美味しさに「箸で鍋底を突いて壊してしまいそうになる」ことから、ナベコワシの異名を持つカジカ。身はもちろん、肝がこれまた美味!
釣りのワンポイント
イカゴロをエサに投げ釣りでねらうのが一般的だが、防波堤周りで釣れることから、近年はルアーによるロックフィッシュスタイルでねらうのも人気。ハイシーズンは産卵で岸寄りする秋から冬にかけて。室蘭港では晩秋にケムシカジカ、雪が降るころにはトゲカジカがねらえる。
シーズン初めは水深のある沖防波堤で釣果がよく、日を追うごとに港内奥でも釣れ出す。大食漢のためアピール力の高いルアーがマッチするが、積極的にルアーを追わないため、スローな誘いが合う。
しっかりボトムを取ってスローに探る。朝夕マヅメの時合になると急にアタリも増えて、連続ヒットすることも珍しくはない。カジカは大型になると3㎏以上にもなるので、ロックフィッシュ用などパワーのあるタックルを使いたい
友人で室蘭在住の吉野崇憲さんが釣ったケムシカジカ。根掛かりリスクを考えるとワームでねらうのが無難だが、ビッグベイトやクランクベイト、ディープダイバーなど、ハードルアーへの反応もよい
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