冬になると思い出すあの味。寒さが極まるほど旨くなる魚。この時期ならではの釣りの楽しさ。とっておきの寒の味はまさに十人十色。今回は神奈川県相模湾の「ヤリイカの塩辛」をご紹介します。
ヤリイカの甘い身とスルメイカの濃厚なキモの絶妙ハーモニー
解説◎葛島一美 (かつしま・かずみ)
この記事は月刊つり人2021年3月号の記事を再編集しています
冬になると思い出すあの味。寒さが極まるほど旨くなる魚。この時期ならではの釣りの楽しさ。とっておきの寒の味はまさに十人十色。今回は神奈川県相模湾の「ヤリイカの塩辛」をご紹介します。
葛島一美 (かつしま・かずみ)
東京都台東区在住。スポーツ新聞の釣り 欄に約20 年間在籍した後、釣り&魚料 理のカメラマン・ライターとして独立。『和竿大全』など著書多数
冬のおすすめ。ヤリイカの塩辛
スルメの濃厚なキモが決め手になるヤリイカの塩辛。熟成したら刻んだ柚子の皮を散らし、あしらいにはニンジンとキュウリの千切りを添えて
イカ釣りは四季に応じて、登場してくる種類が変わる人気ターゲット。その中でウインターシーズンを代表するのがヤリイカで、甘く歯切れのよい身は何といっても、糸造りなどの刺し身が絶品だ。
そしてもう一品、酒の肴として楽しみにしているのはヤリイカの塩辛造り。沖釣りファンならご存知のとおり、ヤリイカのキモは水っぽくて淡泊過ぎるので塩辛には不向き。そこで本来塩辛に使われるスルメイカの濃厚なキモを拝借してしまおうという魂胆である。
とはいえ、夏型のスルメイカはオフシーズン。それでも本命のヤリイカをねらっていると、力強く潮鉄砲を吹き上げて海面を割る季節外れのスルメイカが混じってくることもしばしばある。食い意地の張った釣り人ほど本来は外道のスルメイカを歓迎するのはそのためだ。塩辛造りには2〜3バイも釣れてくれればしめたもの。沖釣りファンの特権で、冬場限定のヤリイカの塩辛造りに精を出す。
個人的には食感の違いを味わうため、胴の身だけではなく、ゲソやエンペラも少量ずつ加えるのが好み。日に日に熟成していく塩辛を味見するのも楽しみのひとつで、食べごろの熟成期間は3日後から1週間だ。
胴の身のほかにゲソとエンペラも加えると食感に変化が生まれて楽しめる。塩漬けしたキモは裏ごしして滑らかにするのがコツ
食のワンポイント
スルメイカのキモは墨袋を取り除き、粗塩をたっぷりと振って半日塩漬けに。ザル付きのボールを使い、余分な水分を落とすとよい
分量はヤリイカ2ハイに対しスルメイカのキモ2 〜3 個が目安。ヤリイカは刺し身用にさばき、薄く塩を振って2 〜3 時間風干しする。
キモは墨袋を外して粗塩をたっぷりと振って半日塩漬けにしたのち裏ごしをする。細切りのヤリイカの身と合わせ、粗塩小さじ1、日本酒少々を
加えて混ぜる。熱湯消毒した広口ビンなどに詰め、日に1〜2回かき混ぜて熟成を促す。釣りのワンポイント
透き通るように美しいヤリイカは冬の使者
ヤリイカ釣りは水深100 〜200 mの中深場をねらい、関東エリアでは東京湾湾口から相模湾一帯が一大漁場になっている。
定番タックルは極先調子のヤリイカザオと、PE ライン3〜4号が300m巻き込める電動リールの組み合わせ。プラヅノ11㎝ 5 〜6 本のブランコ仕掛けが一般的だが、近年は直結仕掛けを使う人も増えている。オモリの号数は120 号か150 号。ヤリイカの乗りアタリは小さく、サオ先を注視しながら聞き上げの誘い操作を繰り返すことがセオリーだ。神奈川県の長井周辺の船宿は周年イカをねらっており、この時期はヤリイカねらいで出船している。
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