「アユルアーで入れ掛かりを楽しむためにはレンジやトレースコースを把握することが大切」と語る上州屋圏央道厚木インター店の村上英樹店長に再現性を楽しむためのフロロカーボンライン使いを教えてもらった。
「アユルアーで入れ掛かりを楽しむためにはレンジやトレースコースを把握することが大切」と語る上州屋圏央道厚木インター店の村上英樹店長に再現性を楽しむためのフロロカーボンライン使いを教えてもらった。
写真と文◎編集部
鮎ルアーAMS フロロ
耐摩耗性が高く水に沈む特性を持つフロロカーボンラインにマーキングを施したアユルアー専用ライン。一般的なフロロカーボンに比べてしなやかなのでスプールへの馴染みもよく、リーダーを組む必要がないためトラブルを気にせず釣りに集中することができる。クリアラインに15㎝のイエローグリーンと25㎝のピンクでマーキングされ、その間にブラックを挟むことによってハッキリとコントラストを認識することができる。75㎝ごとにクリア部分とマーキング部分が分かれている。ラインナップは1、1.25、1.5、1.75、2 号の5 種類。価格は1800 円+税
しなやかな「鮎ルアーAMS フロロ」はスピニングリールのスプールにも馴染みがよい。ベイトリールなら7 か8 ポンド(1. 75、2 号)、スピニングリールなら4 か6 ポンド(1、1. 5 号)が扱いやすい
クリアな部分を切ってマーカーが水面からちょうど出るくらいに調整するのが村上流。マーキング部分にはルアーを結ばないようにしているという。ラインの色の有無でアユの反応が変わるかどうかは分からないが気持ちの問題だそう
視認性が高いマーキング付きフロロなら再現性が高いアユルアーを楽しめる
関東屈指のアユルアー河川
相模川は山梨県・山中湖に源を発し、神奈川県を経て相模湾に注ぐ一級河川。山梨県内の流域は桂川と呼ばれ、神奈川県からは相模川と呼ばれる。相模湾から遡上してくる豊富な天然アユと相模川漁連の大規模な放流によって関東屈指のアユ河川として名を馳せている。津久井湖下流から河口部までを管轄している相模川漁連の木藤照雄会長は
「去年は凄まじい遡上量を記録し、多くのお客さんに足を運んでもらえました。今年も引き続き遡上状況が良好ですので期待できるのではないかと感じています」
と語る。相模川漁連は本流の昭和橋から湘南大橋まで、支流である中津川の才戸橋から本流との出合いまでをアユルアー使用可能区間として設定。濃密な魚影だけでなく、たくさんの釣り人が同時に釣りを楽しめる広大な区間設定も人気の理由のひとつだろう。
「相模川でアユルアーを楽しんでいる釣り人は年々右肩上がりで増え続けていると感じています。人口が増えるほど釣法やタックルなどもどんどん進化しているので今後が楽しみなジャンルですね」
こう語るのは上州屋圏央道厚木インター店の村上英樹店長。黎明期からアユルアーに注目し、タックルや釣法の研究を続けてきた。今回は村上さんの釣行に同行させてもらい、昨今感じているタックルの変化や相模川で入れ掛かりを味わうためのコツを教えてもらった。
人気ポイントの座架依橋上流部。広い瀬には解禁初期から天然アユが充満している
ベイトリールとロングロッドが人気
村上さんが感じているタックルの変化は主に2点ある。
1つ目はベイトリールの愛用者が増えていること。ロッドを持っているほうの手でスタードラグを弾いて素早くラインスラックを回収できる点や、良型とのファイトやルアーの送り込みに便利なクラッチ機能などが人気を集めている理由だ。また、スピニングリールよりも太いラインを巻けるためルアーもロストしにくい。
「ドラグだけに頼らずクラッチを切りながらファイトを行なうと良型の引きをいなしやすいと感じています。また、ドラグにクリックサウンドが搭載されている機種であればスピニングリールと同様にラインの出具合を耳で感じ取ることができます」
2つ目はロッドのロングレングス化。新しくリリースされている製品にロングレングスのものが多いという背景もあるが、釣法の違いによってロッド選びの傾向が変わってきているという。
「ダウンにルアーを流し込む釣り方が基本ですが、最近はクロスにキャストして扇状にスローリトリーブして探るアングラーが増えてきていると感じています」
この釣法では操作の精度を高めるためにショートキャストが多用される。ライトスタイルでは立ち込める水深や流速に限界があるため、広範囲を探りやすいロングロッドが好適だ。
ラインスラックの回収やルアーの送り込みを片手で行なえるベイトタックルが人気
マーキング付きフロロカーボンの有用性
現在主流となっているラインシステムはPE ラインとフロロカーボンリーダーの組み合わせだが、アユルアーには飛距離や高い感度はあまり必要ないと村上さんは感じている。それよりも視認性やクッション性、トラブルの少なさなどが大切。そのため村上さんが愛用しているのはマーキング付きフロロカーボンである「鮎ルアーAMSフロロ」(サンライン)(以下、AMS)だ。
「耐摩耗性に優れたフロロカーボンラインにマーキングを施したアユルアー専用ラインです。フロロカーボン特有の硬さやごわつきが抑えられており、適度なクッション性とトラブルの少なさが気に入っています」
飛行姿勢が安定しにくいアユルアーを扱う時はスプールの立ち上がりがよいベイトフィネスリールが好適。ベイトフィネスリールはスプール径が小さいものが多く硬いラインだと馴染みにくいが、AMSは一般的なフロロカーボンラインに比べてしなやかに設計されているため巻きグセが付きにくいという特徴がある。トラブルが少なければ手返しよくショートキャストを繰り返せるため、集中して釣りを続けることができる。
「ベイトリールとPE ラインの相性はあまりよくありません。バックラッシュ時にスプールとボディーの間にラインが入り込んでしまう、根掛かりを外す際に強いテンションを掛けると下のラインに食い込んでしまうなどのトラブルが起こります。モノフィラメントラインはそのようなトラブルの心配がありません。また、リーダーの残量も気にしなくてよいので摩耗が気になったらすぐにルアーを結び替えて釣りを再開できます」
フロロカーボンラインはPE ラインやナイロンラインに比べて比重が大きいためルアーが浮き上がりにくいのもメリット。底付近の流れに馴染みやすく、流れが強いポイントや深場などの立ち込みにくいポイントでもしっかりとボトムをトレースできる。立ち込みにくいポイントは他の釣り人が探り切れていない可能性が高く、サオ抜けポイントになっている場合も多い。水切れがよい極細のPEラインでもディープレンジは泳がせられるが、耐摩耗性の低さとトラブルの起こりやすさなどを考えるとフロロカーボンラインのほうが誰でも使いやすい。
レンジも釣趣もよりディープに
エントリーしたのは昭和橋下流の上依知エリア。幅が広い瀬と深くて押しが強い瀬落ちがあり、天然アユと放流アユが多く溜まっている一級ポイントだ。村上さんは腰くらいの水深がある瀬落ちへクロスにキャストして広範囲を手返しよく探る。
「初期は白波が立つほどの瀬よりも瀬尻や瀬肩でアカを食んでいるアユが多いです。例年、梅雨明け以降から本格的に瀬の中を釣るようになります」
村上さんはラインをよく観察し、流れが緩い場所にルアーが入った時の弛みやルアーに野アユがまとわりついた時に起こるルアーアクションによるものではない不規則な震えなどを読み取る。アユの活性が高まる夕食みのタイミングになると瀬落ちの深場にある流れが緩くなるポイントでラインがよく震えた。
「野アユに追われたことによるラインの震えはマーキング付きだから見えやすいんです。単色のカラーラインでは位置は把握できても細かい動きは見えにくいものです。AMSは75㎝サイクルでマーキングされているためトレースコースの水深を知ることもできます。反応があった位置や水深を把握しやすいので、得られる情報の量や正確さが増します」
マーキングのカラーはローライト・ハイライト時を問わず視認しやすいイエローグリーンとピンク。間にブラックを挟むことによってハッキリとコントラストを認識することができる。反応があった場所をしつこくトレースしていると村上さんが大きくロッドを絞る。ルアーの後を追って宙を舞ったのは21㎝の良型だ。
「フロロカーボンラインの中でもAMS はクッション性に優れるので掛かりがよくバラシも減ります。流れに乗ろうとする良型のパワフルな引きもいなしやすいです」
アユルアーは手感度だけでなく目感度も非常に重要。ラインの視認性が高ければ『ねらっているポイントで掛けた!』という達成感をより強く感じることができるだろう。マーキング付きフロロカーボンを使いこなし、よりディープな釣趣を味わってみてはいかがだろうか。
むらかみ・ひでき 上州屋圏央道厚木インター店店長。相模川をホームグラウンドとし、タックルや釣法などの新たな可能性を探求し続けている
※このページは『つり人 2024年8月号』を再編集したものです。