入渓点の見定め方を東京近郊の激戦区をホームにしているつり人に聞いた。
入渓点の見定め方を東京近郊の激戦区で釣りをしている人に聞いた。
こちらの記事は月刊『つり人』2020年6月号に掲載したものをオンライン版として公開しています。
大沢健治さんは秩父をはじめ東京近郊の渓流をホームに美形魚のみをねらう。
常にサオ抜けを意識したアプローチだからこそ手にすることが可能なたくましく育ったヤマメ・イワナ。その川選び、釣りの組み立てとは―――。
支流の支流に目を付ける
4月2日。「令和」の元号が発表された翌日に大沢さんと訪れたのは山梨県桂川支流の真木川である。相模川の上流域となる桂川は尺ヤマメの実績が高い本流釣り場として知られ、鶴川、葛野川、笹子川がメインの支流だ。
花冷えとなった前夜に雪が舞って気温・水温ともに急低下。それでも春の日差しが降り注ぐとイワナはすぐに反応した
真木川は笹子川に注ぐ小さな支流で、水量は乏しいが流程は長い。下流部は成魚放流も多い里川で上流域は落差の大きな谷となる。秩父をホームにする大沢さんが、なぜこの川を選んだか。「メインの支流の支流、さらに枝分かれする沢にも好んで入ります。ひとまたぎで渡れるような沢にも案外きれいな魚は付いています。こうした水脈を探り当てることも渓流釣りの楽しみだと考えています」
入渓点を捜す着眼点は3つ。
1、林道が離れていること。
2、高低差があること。
3、入渓点から退渓点まで離れていること。
つまるところ楽な釣り場ほど人が入りやすく、魚は抜かれてしまいがち。事前にお目当ての川を選んだところで、2万5000分の1の地形図から体力的にしんどそうな「足を使う」エリアを絞り込んで入渓する。
大沢さんはこれまでにも何度か真木川を釣っている。それこそ林道から離れたエリアでヒレがピンと張ったイワナやヤマメが飽きない程度に釣れていた。しかし、今回の状況は……。最寄りの大月ICを下りると山々は冠雪しており車外の気温はマイナス2℃。真木川沿いを走る道は途中から通行止になっていた。駐車場所から釣果実績のあるエリアまで徒歩で行くと時間を食う。そこで駐車場所から1㎞ほど上流の橋から入渓し、さらに1㎞ほど上流の橋までを探る。
イワナねらいは岩陰の穴釣り
渇水である。普段の半分しかないという。雪が解け込んだ水温は3℃
「これは渋くなりそうです」。左右から木々が張り出した、見るからに探りにくそうなボサ川である。だからこそ魚も残りやすい。
木から水面までの距離を見て仕掛けの全長を決める。今回はささめ針「天上穂先糸」(細)を1m取って、水中イトはフロロカーボン0.25号を2mないしは1.5mにする。
「東京近郊の河川でしたら水中イトは0.2~0.25号が基本です。川が濁っている、もしくは魚が高活性なら0.4~0.6号と太くします」
ハリはエサの大きさや魚のサイズに応じて替える。今回はキヂをメインに使うため、がまかつ「ナノヤマメ」6号をセットした。川虫のほうが食い込みはよいものの、キヂは匂いによる集魚効果が期待できる。少しでもハリ立ちをよくするために大沢さんはミミズ通しでハリスまでこき上げて装餌している。
落ち込みと堰堤が連続する高低差のある流れ。しかしことごとく浅い。となると下流から上流に釣り上がり、魚を驚かせないように慎重にアプローチしなくてはいけない。
「上流を釣る時は重いオモリを使わないのがコツです。重いと手前の大石やカケアガリに引っ掛かってポイントを潰しかねない。これくらいの規模の川でしたらG1のガン玉を基本に使います」
暗かった谷間に太陽が差し込んだ。目印が凍るほど冷えていたが、陽光に包まれると一気に温まった感じがした。すると目印が岩の中に運ばれるほど大アタリが出て、合わせると小気味よい引きでサオが曲がる。上がってきたのはオレンジ色の腹をした野性味の強いニッコウイワナだ。それからは次々に小型のイワナがヒットする。サオを縮めては伸ばし、チョウチン釣りの要領で枝の下を探る。注目すべきは流れがない淀みでも大きめの岩があればその際に仕掛けを通していること。
橙色のニッコウイワナがファーストヒット。厳しいと思っていた矢先に食ってきたうれしい1尾
「水温が上がればイワナも流れのヒラキに出てきます。でも、こんな状況ですからね。穴釣りの要領で岩陰を探ったほうがいい。流れの有り無し、深い浅いにかかわらず岩の下にエサを入れる。それだけのことですが、打った数だけ魚と会える確率は上がります」
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