アタればデカい。フッキング率が悪い。サイト用の飛び道具。記者がもっていたストレート系のロングワームのイメージだ。 しかし。黒田健史さんが千葉県豊英湖で披露してくれた釣りは、そのすべてが先入観だと教えてくれた。
「簡単にビッグフィッシュを騙せるのがロングワーム!」
長さが釣りを簡単にしてくれる。黒田健史が語るロングワームメソッド
◎Basser編集部
この記事は『Basser』2018年10月号に掲載したものを再編集しています。
アタればデカい。フッキング率が悪い。サイト用の飛び道具。
記者がもっていた
ストレート系のロングワームのイメージだ。
しかし。黒田健史さんが千葉県豊英湖で披露してくれた釣りは、
そのすべてが先入観だと教えてくれた。
黒田健史(くろだ・けんし)
1985年2月6日生まれ。静岡県浜松市生まれ・在住。JB TOP50に参戦しつつ、長良川や浜名湖でフィッシングガイドを営んでいる。琵琶湖チャプターやJB津風呂湖でAOY獲得経験あり。2017年にはマスターズ野尻湖戦で優勝。ソルトウォーターの釣りにも精通しており、自身のブランドnadarでルアー開発も行なっている。
ロングワームで普通にカバーを撃つ
七色貯水池などのクリア~ステインなリザーバーでストレート系のロングワームといえばビッグフィッシュねらいの定番品のひとつ。
だが、個人的にはサイトフィッシングで用いられるイメージが強かったので黒田さんの使い方は意外だった。
黒田さんによると、ロングワームの釣りはビッグフィッシュだけしか食ってこないわけでもなければ、サイト専用では決してないという。
むしろホッグ系テキサスリグと同じ感じで普通にカバーを撃つアイテムのひとつと捉えている。
ただし釣れるバスのサイズがいい!
「マッディーシャロー以外ならどんなフィールドでも効くと思います」との言葉があったため、七色よりも濁っていてフィッシングプレッシャーが比較的高い関東のリザーバー(千葉県・豊英湖)に来てもらってロングワームの釣りを披露してもらうことになった。
取材は8月7日に千葉県豊英湖で行なった。岩盤やブッシュ、レイダウン、沖の立ち木などを10~20mのロングディスタンスで撃つ。ワームが長いだけで、釣りの動作は普通のカバー撃ちに極めて近い。シェイクで誘う時間が短いのが特徴
「長さが釣りを簡単にしてくれる。むしろ雑な人にこそ使ってほしい!」
豊英湖で黒田さんが見せてくれた釣りは記者のロングワームに対する先入観をすべて覆すものだった。
まず釣果。黒田さんは午前中だけで5尾のバスをキャッチ。
うち2尾が45cm、残りは40cm、35cm、30cmだった。すべてヴェイン8inの5g変則リーダーレスダウンショットリグで釣った魚だ。
「そう。小さい魚も普通に食べてくれるんですよ。同時にデカい魚を騙しやすいのも確か。
だからバイト数も稼げつつビッグフィッシュが混じる率は高い。
ビッグベイトのようにバイトが遠いわけでもないし、我慢が必要な遅い釣りでもない。
けどデカいのが釣れる。決して飛び道具じゃない便利なルアーです」
「簡単にビッグフィッシュを騙せるのがロングワーム!」と黒田さん
午前中で5尾も釣れて40cmアップ多数……。
楽しい休日を過ごせる絶妙な数とサイズのバランスだと感じた次第だ。
そして釣りの内容も特殊ではない。
変則リーダーレスダウンショットリグで岩盤やブッシュ、レイダウン、立ち木に対してタイトにキャストし、フリーフォール後は2~3回シェイクして回収。いわば普通のカバー撃ちである。
「パワーホッグのテキサスリグと同じ気持ちで投げてほしいです」と黒田さん。
意外だったのはシェイクで誘わないこと。もっとボトムでうにゃうにゃさせてバスを焦らしたりするものだと思っていた。
「簡単にルアーを食べてくれる元気な魚をねらうための釣りだと思っています。
だから長時間誘って無理やり口を使わせたりはせずに次々とテンポよく撃っていきます。
ロングワームだとワームの存在感が大きいので基本的には落とすだけでバスがルアーに気付いてくれるしバイトするんですよ。ここがホッグ系と違うところかもしれません。
カバー撃ちで出番が多い小さなホッグ系だとフォール後のアクションでルアーの存在に気付かせなきゃいけないことが多いです。
ロングワームだと勝負が早いし、ロッドワークやキャストが多少雑になっても許容してくれる感じがする。
バスの興味が長いワームに集中するからラインやフックへの多少の違和感をスルーしてくれるのかも。長さが釣りを簡単にしてくれるんです。むしろ雑な人にこそ使ってほしい!」
岩盤やブッシュを撃つ。ピッチングやサイドキャストでプレゼンテーションし、リグが着水したあとはフリーフォール。ボトムや障害物でリグが止まったらスーッと縦のロッドワークで引いて再びフォールさせる(2~3回繰り返して回収)。シェイクはしない。「メタルバイブやフットボールの動作に近いかも」
簡単な釣りで数もサイズも両立できる。
そしてロングワームをくわえたバスが妙にかわいく見えてしまう。思えば数あるルアー対象魚のなかでこんなに長いワームでねらうのはバスだけかもしれない。
なんで今までロングワームの釣りにハマらなかったのだろう……。そう思った夏の1日だった。
ロングワームの出番
「カバーでデカいのをねらうならロングワーム。小さなホッグ系より簡単です」
ロングワームはどんなときに投げるべきなのか。
「基本的にはいつでもOK」と黒田さんは言う。
「普通のカバー撃ちのレパートリーに加えて気軽にローテーションすべきだと思います。
基本的に時期や状況を選ぶルアーじゃないです。
あえて言うなら、カバーの周りでバスが浮いている状況で、気持ち的にデカいのを釣りたいときが出番でしょうね。
唯一、マッディーウォーターではあまり使わないかも。
水押しが強いわけではないから目立たなくなっちゃうし、長いのでカバーに絡んだりするトラブルも起きやすい。
霞ヶ浦や沼系などのフィールドで釣れないわけではないと思いますが、わざわざ使うメリットは薄いと感じます」
昔からロングワームが好きだったという黒田さん。
キンクー7inや13inやジャイアントミール9inや13inを琵琶湖で使いその釣れっぷりを知った。
そしてほかのフィールドでも普通に釣れることに気付いていく。
TOP50の七色貯水池戦では2017年シーズンからヴェイン8inをメインにした。
「七色でデカいバスを選んで釣る方法を僕はふたつしか知りません。
サイトか大きいルアーを使うかの2択です。
ビッグルアーを使ったからといってデカいバスしか釣れないことはありませんが、大きい魚を釣りやすいのはたしかです。
自分にはサイトは無理だと思ったのでロングワームに頼りました。
バスは基本的に細長いモノが好きだと思います。
細長いエサ、たとえばドバミミズはバスから見つけやすいですし、動きも鈍いから食べやすい。
栄養もある。実際、七色戦で7kgを釣った日はライブウエルでドバミミズを吐いたバスがいました。
普段は湿り気の多いインレット周りの土に潜んでいたミミズが大雨で流されたんでしょう。ロングワームへの信頼が深まったシーンでした。
ルアーのボリュームがあるのでごまかしが効くのも大きい。ラインやフックの存在感にバスの興味がいきにくいと感じます。だから多少操作が雑でも釣れる。小さなホッグ系のカバー撃ちよりもはるかに簡単な釣りだと思います
あと、単純に使っている人が多くないからバスが最後まで騙され切ってくれるというのも間違いなくあります」
サイズは8inが適度だと感じている。同じヴェインでも6.8inにするとバイト数は増えるがアベレージサイズが落ちるという。逆に12inクラスのワームだとバイト数がかなり減る実感がある。
黒田さんが使うロングワーム
ヴェイン8in(ベイトブレス)
シンカー:フリリグシンカータングステン5g(フィッシュアロー)
ストッパー:G7直ゴムM(ラインシステム)
フック:D・A・Sオフセット♯5/0(ハヤブサ)
黒田さんが最もよく使うストレート系のロングワームがヴェイン8in。カラーはドーバーが好き。他のロングワームと比べてかなり柔らかく、フォール時にテールがプルプルと動いてくれる。よく釣れるワームだと感じている。フックはワームがズレにくいナローゲイプ推奨
ふたつとも使用頻度は低めだが、ヴェインよりも硬めでハリもちがよく、枝ぶりが細かいブッシュなどのヘビーカバーで使いやすい
リーダーレスダウンショットの場合はストレート系のロングワームの出番が多いが、フリーリグのときはパーツ付きのワームを使う。上からハニーカーリー8.5in(ワンダーベイツ)、シザーコーム6in(ジャッカル)、ハリーシュリンプ(ボトムアップ)
「フリーリグはシンカーが重ければ重いほど、ソフトベイトのパーツが多ければ多いほどフィネスになります。シンカーが重い方が早く着底してノーシンカー状態になる時間が長くなりますし、ワームのパーツが多いと落ちるのが遅くなる」
次回は黒田さんの変則リーダーレスダウンショットリグについて紹介します!