定番ポイントである漁港の外灯周辺は常に激戦区。光につくアジに比べるとメバルは光よりも潮につきやすい。だったら空いているオープンエリアをプラグでじっくりランガンしてみるのはいかが?
定番ポイントである漁港の外灯周辺は常に激戦区。光につくアジに比べるとメバルは光よりも潮につきやすい。だったら空いているオープンエリアをプラグでじっくりランガンしてみるのはいかが?
写真と文◎松本賢治
完全暗部×オープンエリアの魅力
ナイトゲームがメインであるメバリングは、やはり足場がよく常夜灯で明暗というわかりやすいポイントが形成されている漁港が主戦場となる。そのため激戦区になるケースが多く、魚自体がスレていることも多々ある
広島県在住で瀬戸内をホームグラウンドにする去川直稔さんも、そんな理由から漁港ではなくゴロタ浜や捨て石、傾斜護岸などの暗いオープンエリアをねらうことも多いようだ。そういった、完全暗部のポイントの魅力とは?
「やっぱり、アングラーが少なくて魚が場荒れしていない。そして何より、大型メバルが出やすいのが最大の魅力ですね」
警戒心の強い大型メバルを漁港でねらうとなると、その難易度は自ずと高くなるが、オープンエリアはランガンして広範囲を探っていけることから魚と出会う確率も増える。
「いくら人的プレッシャーが掛かっていなくてもイージーに大型が釣れるわけではないです。でも、オープンエリアでは地形を見て潮がヨレるところをどんどん探っていける。人が並ぶ明るい漁港だと横移動できないんで探りきれないですよね。だから、暗いところが好きなんです」
これまで数多くの大型メバルを釣ってきた去川さん。大型メバルを釣るにはいくつかの条件があるという。
「まず、小型が釣れている場所やタイミングでは大型は出ないですね。そこが大型の実績場だったとしても、小型が釣れている時に大型がまじることはない。潮のタイミングの違いや時期など原因はいろいろありますが、実績場=常に大型場、というわけではないんです。あとは、僕の場合は超シャローで大型を釣ってることが多い。漁港のように足もとから水深があるような地形ではなく、逆にワームではねらいらいような浅場ですね。そんなところにも大型は入ってくる」
大型はフィーディングのために思っているより浅場に差してくるし、荒れたときにもそうだ。シャロー一面に広がるサラシの中で大型メバルをねらうスタイルもある。というのも、そんな状況では遊泳力のある大型しか活動できないためだ。
そして、やはり気になるのは時合だろう。前述したように荒れた条件もそうだが、やはり潮の動きというのは外せないファクターとなる。
「潮の動きは全体が同じ方向へ流れているのはいいタイミングではない。時合となる潮の動きっていうのは、流れの違う潮が流れる時。たとえば、沖だけ速く走っていて手前が緩いと、流れの速さの違いでヨレができるんで絶好のタイミングで時合になりやすい」
ヨレが形成されると、そこにはエサが自然と集約され、メバルにとってのフィーディングゾーンとなる。
ただ、瀬戸内海は干満差も大きく、島部ということもあり川のような激流が至るところで普通に流れる。そのため、激流すぎて釣りにならないことが多々ある。一般的な〝潮が動いたら時合〟というのが通用しないエリアでもある。そのため、流れが速すぎるポイントでは潮が止まったり緩んだりするタイミングが時合となりうるケースも珍しくない。
うまく流せてこそのアプローチ
潮のタイミングや地形に加え、魚食性が強まる大型メバルだからこそベイトの有無も大きく関係してくる。
「基本的にメバルはサイズ問わず周年アミ類を捕食しているんですが、春はイカナゴとかのベイトも回ってくる時期。この広島エリアだと、4〜6月がイカナゴパターンでもある。イカナゴのときは、ボトムをジグ単やシンペンでねらう方法もありです。もちろん、ベイトがいたほうが活性は高いんですが、基本的にはアミパターンではありますね。3月上旬だとまだアフター回復期なので、水面に出てボイルしてまで激しく捕食しない傾向にあります。水面下で静かに捕食している。だから、ボイル音はしないですね。もう少しすれば、ボイルの音が暗闇から聞こえてきてより釣りやすくなります」
とはいえ、去川さんはベイトに寄せる釣りというより、アプローチの重要性を話す。
「何を食っているのかを知ることは重要ではありますが、それよりも流れに対してどうアプローチしていくかのほうが大切ですね」
うまくルアーを流し込めるかどうかで、メバルが口を使うかそうでないかが決まる。この考えは、メバリングに限らず流れの釣りでは鉄則ともいえる。うまく流すことができれば、ルアーサイズが多少マッチしなくても食ってくるほどアプローチは重要だ。
「メバルのいるポイントを仮定して、どうアプローチしていくか。やっぱり、うまく流せたときだけ食ってきていると感じます。いくら活性が高くても違和感を与える流し方をしていると食ってきません」
去川さんの暗部×オープンエリアでの攻めの常套手段は、まずは飛距離の出る『アビーペンシル』で広範囲をサーチする。ちなみに、漁港では、明暗部の奥から『アビーミノー』や『アビーソリッド』で中近距離を通す。
「この『アビーミノー』はメバルの定番的なミノーです。巻けば魚の目線を誘導することができて止めて食わせる。ライズしていると特に有効です。ライズしたところへ流し込みながら巻いて止める誘いが有効です。巻いて潜らせ、止めて浮上する途中に食ってくることもあるし、完全に浮かせてからの流しで食ってくることもあります」メバルのライズはあるのに『アビーミノー』で反応しないときは『アビーソリッド』にローテーションする。
「透明感を活かしたクリア系のソリッドボディーなので水中へ入ると溶け込むような感じになり見切られにくくなる。さらにノーウエイトの超スローシンキングで艶めかしいアクションを演出するジョイント構造だからスローリトリーブではゆらゆらとウォブリングアクションでナチュラルに誘い、リトリーブを早めればピッチの早いS字アクションでアピールします。ソリッド系のルアーってメバルでは使い慣れていない人も多いですが、実はかなりの武器になります」
両者ともに基本的にはただ巻きで使える。ただ、潮の流れを利用して、あくまでも漂わせるイメージで泳がせることが理想だ。
「特に有効なのは、まず潮の方向を確かめることです。通い慣れた釣り場でもこの確認は毎回やっています。まず正面にキャストして、どっちからどれくらいルアーが流されて帰ってくるのかを確認。それで潮の向き、そして潮の強さが大体わかる。理想は流れの強いところと弱いところができる状況。ずっと強い(速い)状況はメバルもしんどいし、ポイントも見つけづらい。流れの弱いところがあると、そこへエサもメバルも溜まる。オープンエリアを横移動しながらキャストしてそんな流れの強弱の弱を探していく。行き慣れた釣り場だと地形も把握していますから、どこでヨレができるのか予測できますが、それでも毎回確かめることを欠かしません」
中空ボディーにはない艶めかしさがあるクリア系ソリッドボディーのアビーソリッドはS字アクションでアピールする操作するだけでも楽しいルアーだ
大型が出るタイミングとは
「僕の経験では、20cm台中盤が釣れているところでは尺クラスはまじらないですね。27、28cmクラスの大型とも尺は別モノだと思っています。引きも全然違います。習性が違うので釣れる場所もタイミングも違う。僕は暗い場所のほうが釣りやすいと思っています。それから超シャロー。ただ、これっていう決まりはないし、実績場へいいタイミングで入れたからといって再現できるわけでもないですからね。でも、可能性は高まります」
だから去川さんは釣行前に潮流予想を見て、その日の島へ潮が当たる角度からヨレが出そうなタイミングを予測して入るようにしている。風速3mまでなら風表でやるようにしているのは風でアミやベイトが寄せられていい釣りができることがあるためだ。しかし、それより強く吹くとさすがに風裏へ回る。つまり、最終的には地形と潮だということだ。
「通い慣れた釣り場では『アビーソリッド』でねらいのポイントにできたヨレをトレースします。初めての釣り場なら『アビーペンシル』で探る。4〜6月の大型ねらいはワームよりプラグのほうが強いと感じています」
今回探ったとびしま海道エリアには、アカメバルもクロメバル、シロメバルもいるが、先程からの潮を攻略する話からも想像できるように、去川さんが一番意識しているターゲットは回遊性の高いクロであるブルーバックだという。
「僕の釣りは、潮に乗ってベイトについて回遊するブルーバックねらいですね。バタバタッて釣れて時合が止まって、また回ってきて……っていう。泳ぎ回っているから、よく引くんです。これまで、クロとアカの尺は釣ったことがあります。このエリアだと例年10月後半から6月までブルーがねらえますよ」
今回はとびしま海道を利用して下蒲刈島、上蒲刈島、豊島をランガンした。北寄りの爆風が吹き付ける冬再来のタイミング。本命場所に入ることができずに風の弱いエリアを探ることとなった。気温が一気にダウンしたことが原因か前日の地震が原因か……週末というのに釣り人は少なくどこも釣りはしやすかったが、反応するのは20cmに届かないサイズばかり。
「もうちょっとマシなサイズが出てもいいポイントだし潮も悪くないんですけどね……」
そう言いながらルアーローテーションを頻繁に行なう。プラグのタイプローテにカラーローテ。さらにはワームも繰り出していくと、ねらいどおりのヨレから次々にバイトさせる。体が暑くなるほど数釣りは楽しめた。
「2月下旬はまだ本格的なシーズンには少し早かったですね。でも、サイズがねらえるのはこれからなんで、僕も尺オーバーを獲りにこれから通いこみますよ」
※このページは『つり人 2024年5月号』を再編集したものです。