アユ釣り2回目の迷えるビギナー、編集部員のトガワが選んだのはアーマード完成仕掛け。これを使って群馬の名手、長谷川哲哉さんに基礎からみっちり教えていただいた。
友釣りの仕掛けは複雑で水中イトのバリエーションもたくさんある。アユ釣り2回目の迷えるビギナー、編集部員のトガワが選んだのはアーマード完成仕掛け。これを使って群馬の名手、長谷川哲哉さんに基礎からみっちり教えていただいた。
写真と文◎編集部
オトリの循環を味わうために
友釣りはアユのナワバリ意識を利用した釣り。ハリを装着したオトリアユをナワバリまで誘導し、追い払おうと攻撃してくる野アユを掛けるという仕組みだ。掛けた野アユは新しいオトリとして使用する。交換したての元気なオトリほど野アユのナワバリ意識を刺激しやすいためだ。釣れば釣るほど魚が掛かりやすくなることから「循環の釣り」とも表現される。と去年サトウ編集長が教えてくれた
2023年8月、僕は編集長が計画してくれたアユ釣り合宿で友釣りデビューを果たした。仕掛けと装備の準備やイメージトレーニングを入念に行なって万全な状態で富山県.神通川の瀬に挑んだものの、慣れない立ち込みとへっぴり腰な動作でオトリ放流やバラシを連発。最初に引き舟に入れていたオトリと最後に入っていたアユの数が同数であるプラマイゼロの釣果で初めての友釣りは終了。
「友釣りはオトリを循環させるのが楽しさのひとつだ。引き舟の中のオトリを何度もローテーションしてやり繰りしているようではアユ釣りの本当の面白さは分からなかっただろうな……」
と編集長も残念そうだった。
前回は同じオトリを何度も長時間使用する「ブラックシフト」を生み出してしまった反省を活かし、まずはオトリを循環させることを目標に据えた。循環を成り立たせるための目安となる具体的な尾数を編集長に聞いてみると「最低10尾は掛けないとつまらない」と言う。今回の釣行で先生役を買って出てくれたのは群馬県甘楽郡在住の長谷川哲哉さん。神流川や碓井川と地元上州の渓流相のアユ釣り場から神通川に九頭竜川といった激流釣り場にもよく通い、球磨川の尺アユ釣りも得意とする。今回はアユザオをほとんど握ったことがないような僕でも釣果を期待できる釣り場を選んでくれた。
「今年の関東北部の河川はどこも渇水気味で好条件とは言い難いですが、そんな中でも好釣果だったのは栃木県鹿沼市の大芦川です」
大芦川は栃木県鹿沼市と日光市の境にある地蔵岳周辺の山々から水を集める西沢と、鳴虫山付近の山々を源とする東沢が合わさった河川。都心から2時間というアクセスのよさとエメラドグリーンの水を湛える美しい渓流相が魅力だ。川沿いに道が通っているうえに西大芦漁協が整備している駐車場のおかげで入川もしやすい。押し流されるような強い流れも少ないため入門者にもってこいの釣り場だ。足腰が貧弱な僕でも足もとに不安がない釣り場ならきっとオトリ操作に集中できるはず! 期待に胸を膨らませながら来たるべきリベンジの日を待った。
※以下昨年の釣行記
つり人編集部アユ釣り合宿 ~オトリ循環のホワイト企業を目指せ!?~
瀬の中ほどにアユが溜まる
まずはオトリ店で遊漁券とオトリを購入する。
「オトリの選び方の基本はまず鼻に傷がないかをチェック。生け簀から水槽に移した際に水面から何度も飛び出している魚より、底に向かって泳ごうとする魚のほうがオトリにした時にしっかりと川底に留まってくれる傾向があります」
長谷川さんが最初に案内してくれたのは鹿の入橋下流にある70 mほどの平瀬にある中段のタナ(瀬の中の平坦に見える部分)。
「朝イチは活性が上がったアユがトロ場や深場から瀬の中に差してきます。通り道となる瀬肩や瀬尻をねらうのも間違いではありませんが、瀬肩の下の1つ目のタナは食みに出た高活性なアユが密集しやすいポイントです」
瀬の中段にあるタナは上下から差してくる高活性な魚たちがぶつかり合うポイント。当日も大きめな石の裏や白波が立っているポイントでギラギラとアカを食んでいるアユの姿が見えた。
オトリは鼻に傷がないものを選ぶとよい。水面から飛び出そうとするものより底に逃げようとするものが川底によく馴染むと長谷川さんは語る
トラブルレスな仕掛けなら入門者も安心
まずはサオと仕掛けをセッティングする。サオは「がま鮎ショートスペシャル」をお借りした。小規模河川で取り回やすい8.5mのレングスと小さなオトリも弱りにくい繊細さが特徴のサオだ。今回長谷川さんが用意してくれたのは「アーマードRF+ プロパーフェクト仕掛」(がまかつ)。友釣り用仕掛けを構成する天井イト、水中イト、付けイト、ハナカン回りイトなどのパーツがあらかじめ組んである完成仕掛けだ。中でもアユ釣りの仕掛けで特に重要なのは水中イト。オトリの泳ぎや流速、水量、釣法などに応じてさまざまな素材のイトが使い分けられている。「アーマードRF+ プロパーフェクト仕掛」に使用されている水中イトは「アーマードRF+ プロ」。PEライン、フロロカーボン、シリコンを特殊製法で組み合わせたラインだ。
「比重が1と小さいためオトリがフワフワと泳ぎやすい。引っ張り強度と耐摩耗性、適度な水切れもあるから引き釣りにも充分使えます。適度なコシと張りがあってトラブルが少ないので入門者にもってこいだと思います」
仕掛けの用意が終わったらハナカンを通すが、もたついて上手く通らない。見かねた長谷川さんはすかさずコツを教えてくれた。
「オトリを握る時は手にしっかりと力を込めることが大切です。オトリを包むように手の形を作り、握り込むのではなくその形に手を固めます。潰さないようにタマゴを握るイメージです。手を充分に冷やしてからオトリを握ると暴れにくくなりますよ」
オトリの操作は張らず緩めず
「大芦川の場合、アユが食んで磨かれている石は白っぽい色をしています。くすんだ石やアカが腐って茶色が濃くなっている石はねらわなくてよいです」
まずは川底が白っぽくなっている筋の下流側に向かって片手でサオを高く上げ、流れの筋に乗せながら野アユがアカを食んでいる大石の下流でオトリを沈める。張らず緩めずのテンションを保ちながらサオを上流側に寝かせると沈んだオトリが底に馴染みやすいという。オトリが底に馴染んだらサオをゆっくりと立て気味にする。あとはオトリが上流に向かって泳いでいくのに合わせて立ち位置を移動し、水中イトが常に張らず緩めずの状態を保つようにするのが基本だという。
「イトは緩めすぎても張りすぎてもダメ。オトリが泳ぐ筋を管理し切れなかったり弱ったりします。オトリをフワフワと泳がせつつねらっている筋をしっかりと通すのがコツです」
張らず緩めずの状態を保つのは想像以上に難しく、1歩動く度に穂先がビヨンビヨンと波打ってしまう。すぐにオトリが弱り、ついにその場から動かなくなってしまった。オトリが動かないのは弱っている以外にもナワバリアユを恐れている、流れが緩い場所で落ち着いてしまっているなどの原因があるという。穂先を軽く上下させて刺激を与えてみても動かない場合は根掛かりの可能性も考えられる。常に目印から目を離さず、テンションの加減やオトリの状態を把握しておくことが重要なのだ。
ガンバレ、ガンバレ、とオトリの鼻先を刺激しながら泳がせていると大石の横で目印がブルっと震え、サオに重みが乗った。ギリギリ届く位置で何とかキャッチできたのはスイカの香りを強く放つ鱗のきめが細かいアユだ。
「引き抜きはサオの反発を利用すると上手くいきますよ。アユが掛かったらサオ尻を握ってしっかりとサオを立てます。同時にタモを構え、サオを真上に突き上げるように力を込めると真っ直ぐ飛んできます。練習あるのみです!」
無事にオトリが代わり、俄然やる気が湧いてきたが反応は続かず。ポイントに見切りをつけて移動することにした。
なんとかキャッチした1 尾目。サオ尻を持ってサオを真上でしっかりと曲げると真っ直ぐ飛んでくるようだ
石が磨かれた筋を探す
移動してきたのは上八岡エリア。落ち込みと淵が連続するポイントで、先ほどのポイントよりも落差が大きな川相だ。道の上から水中を除くとギラギラとアカを食むアユに混じってヤマメの姿も見える。
「流れが強い筋をねらう際は下流から上流に向かってゆっくりとオトリを引いていき、めぼしい石の周辺で留めるという釣り方が有効です」
川底にオトリを馴染ませた後、サオを上流側に倒してゆっくりと引き上げていく。サオだけで引くと通したい筋からオトリが外れてしまうため、足で移動することも意識する。磨かれた大きな石や白泡の中などでオトリを止め、アタリを待つのがよいという。泳ぎにくい流れに入った時や野アユを見つけた時に目印が大きく揺れ、オトリがイヤイヤと頭を振っている感触がある。そんな時はサオをな るべくサオを寝かせる「ベタザオ」の状態にしてわずかにイトのテンションを緩めてやるとオトリが安定するという。オトリの状態を意識しながらじわじわと引いていくとコツンという手応えとともに目印が鋭く動いた。
「今のはオトリが野アユにアタックされた『ケラレ』という現象です。ケラれた後は1分くらいその場にオトリを留めて追撃を待ちます。反応がない場合は逆バリが外れている可能性があるので一度手もとにオトリを戻して状態を確認しましょう。ケラれたオトリはビビッてしまい野アユのナワバリに進入したがらなくなることもあります」
同じオトリを使い続けて反応がない場合やお目当てのポイント周辺でイヤイヤするようになった場合は交換するのも手だという。
アユが付きやすい筋は石が磨かれている。大芦川の場合は白っぽい石色が目安だ。写真中央部の筋でアユがアカを食んでいた
アユ釣りには「時速」がある
教わったことを反芻しながら落ち込みの手前にある白泡の中でオトリを留めていると、今までにないほどの勢いで目印が下流に飛んでいった。あたふたした引き抜きでタモの上空を通り越していったのは今日イチの良型だ。この1尾を皮切りに瀬肩の大石周りや岩盤が張り出た部分で4連発。少し日が差した短時間の出来事だったが僕のオトリはテンポよく循環した。これが入れ掛かりの快感か!
昼休憩をとった後はさらに上流の大芦川自然クラブ周辺のポイントに移動。ここからは長谷川さんもサオをだした。僕はなんとか循環を続けつつ(チョットだけブラックシフトを組みつつ)なんとかやり繰りして最終的に引き舟に入っていたのは9尾。最初のオトリ分の2尾を抜くと+7尾という結果だった。目標達成まであと少し!悔しい結果だったとはいえ、仕掛けトラブルやオトリの放流などがゼロだったことは自信に繋がった。
「トガワは9時間くらい釣りをしていたので時速は約0.7尾。長谷川さんの釣果は+13尾。約3時間の釣果で時速は約4.3尾だ」
と撮影しに来てくれていた編集長。え?時速っていう概念があるんですか?長時間釣行というパワープレイで10尾を達成しようとしていた僕に時速アップという新たな課題が出現した。
「ピンポイントでちゃんとオトリを留めないとなかなか追ってこない日でした。トガワ君は川の歩き方とポイントの見方、イトの張り加減を練習してリベンジしてみてくださいね」
と長谷川さんからのアドバイス。まだまだ夏はこれから! 1日10尾達成と時速アップに励みます!
※このページは『つり人 2024年9月号』を再編集したものです。