編集部2017年12月25日

メジナ、イサキ、フエフキダイほか×温泉/東京都・式根島

メジナ 全国おすすめ釣り場 東京 フエフキダイ イサキ 温泉

深く切り立つ谷間を降りると、数個の湯つぼが現われる。 沸き立つ温泉は80℃。潮の満ち引きが湯加減を調整する。 式根島は地鉈温泉。 出湯の豊富な伊豆諸島の中で天下一品の野趣である。

式根島の名礁「平床」は上げの潮も下げの潮も釣りやすい

秘湯の島旅。磯釣り三昧

つり人編集部=写真と文


深く切り立つ谷間を降りると、数個の湯つぼが現われる。
沸き立つ温泉は80℃。潮の満ち引きが湯加減を調整する。
式根島は地鉈温泉。
出湯の豊富な伊豆諸島の中で天下一品の野趣である。
変化に富んだ島の周囲はメジナやマダイ、フエフキダイなど大型魚が居着く海。
豊穣の磯を巡り、ダイナミックな潮を釣る。
秘湯をプランのひとつに入れて真冬の釣りに盛り上がる。


この記事は『つり人』2017年2月号に掲載したものを再編集しています。

夕マヅメは6号ハリスも切られる


「バカヤロウ、伊豆諸島の温泉といったら式根島だろう」

 今号の企画会議が終わり特集で「温泉と釣り」をやろうと相成り、元編集長のY社長に相談に行った。「神津島か大島あたりで、温泉と釣りの取材をやりたい」と言うと冒頭の雷が落ちた。

 Y社長の話では式根島はオナガメジナもクチブトメジナも多く、伊豆諸島の中でも極めてマダイが豊富な海域らしくメータークラスもあがるという。シマアジやカンパチも回遊するし、エギングではアオリイカ、投げ釣りではハマフエフキの大型も出る。そして地鉈温泉という素晴らしい秘湯が目玉になるという。最高の離島旅と胸躍らせて編集部Oと計画を立てた。

 12月初旬、東海汽船のジェット船で東京竹芝桟橋から3時間30分。大島を過ぎると黒瀬川が走る紺碧の海を切り裂くように船は進み、利島、新島と立ち寄って式根島東岸の野伏港に到着。

028-033shikinejima_cs6 (29) 今回は竹芝桟橋からジェット船で出発!

 式根島の概要は東京の南約160㎞、下田の南東方約45㎞に位置する。面積3.9平方キロメートルの台地状の平坦な島で人口は533人。周囲は約12㎞。徒歩1時間弱あれば端から端まで行くことができる小島だ。複雑な地形のリアス式海岸、海蝕壁、洞穴などが多く、入り江が各所にある。伊豆諸島の中でも変化に富む。ちなみに伊豆七島と呼ばれる中に式根島は入っていない。大島、利島、新島、神津島、三宅島、御蔵島、そして八丈島の7つがそうで、1690年の大地震による津波のため新島と陸続きであったのが切り離されて式根島になった。したがってこの島は新島の一部である。

 野伏港で我々を迎えてくれたのは民宿「鈴豊」のご主人、鈴木良一さん。根っからのウキフカセファンで釣り人のリピーターも非常に多い宿である。

「週末まで磯にエビ網が入ってね。限られた磯しか釣れないのが残念だね」

 丁度我らが訪れた時はイセエビの漁期に重なっていた。根という根に網がびっしり張られている。ただし東岸の平床~新八までは網が入らない。宿に荷物を降ろしてから鈴木さんがさっそく地磯を案内してくれた。「鈴豊」は式根島の地磯事情に通じ古くから磯釣りファンに「地磯の鈴豊」と親しまれてきた。網が入っていないという亀の甲、東電下、便所下、小浜口、平床と回っていると鈴木さんは

「60㎝オーバーのオナガメジナがわんさか見えることもある」と話す。自己レコードを聞けばオナガメジナ63㎝。「つい最近も夕マヅメに6号ハリスを切られたお客さんがいる」と言うからワクワクする。

028-033shikinejima_cs6 (2)_1 ぐんじやま展望台から見る景色。南方向には神津島。空気が澄んでいる時は三宅島の三本岳が見渡せる

028-033shikinejima_cs6 (3) 小浜口は小浜港の港口。こんな入り江も60cmオーバーのオナガメジナの実績がある

028-033shikinejima_cs6 (4) 亀の甲は野伏港のすぐ側にある。夕マヅメには必ずといってよいくらいハリスをぶっち切る大ものが出る

内科の地鉈。これぞ秘湯


028-033shikinejima_cs6 (30) 勇壮な磯の下からコンコンと湧き出る地鉈温泉。加水も加温もなし。100%の天然湯。干潮時は湯つぼが熱く海の際が適温だ

028-033shikinejima_cs6 (9) 夜の地鉈温泉は満点の星が楽しめて、何時間でも入っていられるくらい気持ちがよい

 目ぼしい地磯を回った後も夕マヅメの時合まで余裕があった。さっそく今企画の目玉である地鉈温泉で気合を入れることにした。途中、「湯加減の穴」という名所に立ち寄る。手を差し込むとムンという熱気が籠もっている。そこには温泉の熱が通るらしく手を差し込むと現在の湯加減が分かるらしい。熱くもなく冷たくもないことから問題なさそうだ。

028-033shikinejima_cs6 (12) 湯加減の穴に手を突っ込むとメガネが曇る。内部はサウナのような状態で蒸気が噴出している


 岩山を鉈で割ったかのような谷間に続く階段を降りる。左右から迫る岩肌に湯治で訪れた人たちが名を刻み「全快」などと彫られている。海岸には茶色い湯つぼがいくつかあり、温泉卵が作れそうなプクプクと泡の出た熱湯も見られる。実に野趣あふれる温泉だ。

028-033shikinejima_cs6 (11) 岩山を鉈で切ったような温泉に続く道

028-033shikinejima_cs6 (10) 熱湯の噴き出し口。温泉卵が作れるだろう

「干潮時刻だからね。手前のほうはかなり熱いよ。なるべく海側の湯に入ったほうがいい」

 と鈴木さん。潮が満ちると海水が混じり、湯加減のよいつぼが多くなる。鉄分の多い湯で神経痛、リュウマチ、胃腸病、冷え性などに効能がある。島にはもうひとつ「足付温泉」があり、こちらは無色で硫黄分が多い。島民は「内科の地鉈」、「外科の足付」と言って地鉈温泉は内蔵に効き、足付温泉は汗疹なんかがすぐ治る皮膚によい出湯という。我らは岩の間に服を置いて、海辺のぬるま湯にどっぷりと浸かった。海を眺めて、潮騒を聞く。身体の芯から温まったところでよい時間になった。帰りの階段を上りきると汗がじんわり浮かんでいる。島の気候も暖かいが、内蔵からポカポカな感じがする。

ブッコミファンの離島の夢


 離島の地磯のチャンスタイムはなんといっても夕マヅメ。うす暗くなると警戒心を解いた大ものがエサを求めて回遊する。食いが続けば日没後もヒット。目指したのは亀の甲。沖から見ると亀の甲羅のように見えるのが名の由来だ。車から降りて5分も歩かずに足もとから水深が10mもある磯場に立てる。

028-033shikinejima_cs6 (7) マヅメから日没後1時間はブッコミもウキフカセも大型がヒットするチャンス

028-033shikinejima_cs6 (13) 下げ潮が川のように流れ出し、潮目に入ると何度もサオを絞り込まれる。ただし満月にはならないくらいの魚である

 Оはブッコミ、私はウキフカセの仕掛けをセット。東に面したこの磯は日が陰るのも早い。間もなくウキを消し込んだのはオナガメジナの30㎝クラス。ほぼ水面まで浮いて食っているようす。数投するとミチイトが走り、合わせると激しく突っ込む良型の手応え。しかし、サオが曲がりきったところでテンションが抜けた。回収した仕掛けを見るとハリ上のハリスがスパッ切られている。オナガメジナに飲まれてしまった。次の一投からはイサキが連発し始めた。

028-033shikinejima_cs6 (6) この日は30cmそこそこのオナガメジナが当たるのみ

028-033shikinejima_cs6 (5) このサイズのイサキはどこでも釣れる状況

 日没間際にОが叫んだ。右の根周りに投げたサオから勢いよくイトが出た。あまりに強いアタリにサオ尻が浮き、海に飛ばされそうになったところでリールがロッドスタンドに引っ掛かる。ヤジロベエ状態のままイトが出続け、Оは海中に落ちそうなサオに駆け寄ってつかむ。腰を落としてファイトを開始。スプールに巻いた130mの10号ナイロンが底をつきそうなほど出る。ドラグ音が途切れない。無理に止めると切られるがミチイトは残りわずか。しばらく経つとスピードがゆるみイトの出が止まった。今だとポンピングをするが、ミチイトが根に噛んだようす。スムーズに巻き取れない。それでも魚の躍動は伝わるので張らず緩めずのテンションでしばし待つ。すると、泳ぎ出した。ここでリールを一気にゴリ巻く。足もとまで寄せ、ヘッドライトで海面を照らした。でかい。

028-033shikinejima_cs6 (14) 「離島って夢がありますね」とOが手にしたフエフキダイは70cm。最初のアタリから疾走がすさまじい魚である

「ハマフエフキ! やった、やったぞ!」とОは喜びを爆発させた。測ってみると全長70㎝。重さ4.2㎏。ブッコミファンなら大金星の魚である。12号のハリスも、10号のミチイトも根ズレでボロボロ。離島の夢がひとつ叶った。

平床と夜空の温泉


「式根の上げ潮はハタカ根を基点に島の左右に分かれ北に向かって流れる。下げ潮は長堀で左右に分かれて南に向く。上げと下げ、どちらも釣れるのが平床なんだけど明日の午前ならエビ網が入らない。渡船できるかもしれませんよ」

 民宿「鈴豊」に戻ると鈴木さんがそう言って渡船を手配してくれた。食卓には鈴木さんが釣ったという地魚の料理がメインで並ぶ。釣った魚を持ち込めば手早くさばいてもくれる。Оが釣ったハマフエフキも刺身にしてくれ「こんなに脂の乗ったハマフエフキは今の時期にしか食べられないよ」と言う。白くもっちりした身は全く癖がない。それでいて滋味がある。

「忙しい時期はたいへんでね。カミさんがお客さん来るから釣りに行ってと。刺身を確保しなければいけないから、真剣ですよ(笑)」

 と、独自のカン付きウキ仕掛けを見せてくれた。潮が千変万化する離島の海は軽い仕掛けを深ダナに入れ込んだり、水中ウキで吹き上がりを防止したりと状況に応じて手早くウキを交換せねばならない。カン付きはスナップひとつでウキが換えられ便利なのだ。

 食卓の天井や壁には62㎝のオナガメジナや80㎝のマダイなど魚拓がびっしりと貼られており、またも夢がふくらむ。

 しかし、結論からいえばトントンとは夢のサイズは釣れないのが現実だ。翌日の平床は下げが利き始めると川のような本流が差し、サラシが広がる素晴らしい条件に恵まれた。エサが吹き上がらぬように重めの水中ウキをセットして潮に流せば150m巻いたミチイトがあっという間に全部出る。沖の潮目でバチバチとミチイトが弾かれるような大型魚のアタリを期待するも上手く釣れず。潮が緩んだところで40㎝クラスのイサキと30㎝そこそこのオナガメジナが連発する程度。ダイナミックに変化する離島の海を攻略できない。

028-033shikinejima_cs6 (8) 最終日「孫市」という一級地磯でキビナゴにヒットしたカンパチの幼魚

「次はマダイです」と目を輝かせていたブッコミのОもウツボしか当たらず。時にメタルジグを投げてみたが無反応だ。式根島の渡船は夕方4時までたっぷりと釣れるのだが不発だ。水温は17℃まで下がりエサ取りも少なくメジナ釣りの条件としては悪くないと思われた。渡船から上がってからも夕マヅメをねらうべく亀の甲を再訪したが、こちらもイサキばかり。夜には北西の暴風が吹いて身体が冷え、心も折れた。

 空気が澄んで月は明るい。地鉈温泉で傷を癒そうと車を走らせ湯つぼに続く谷間を降りた。潮が満ちた湯加減のよい時間帯だ。底がツルツルに滑る湯の中に浸かると豊穣の海のミネラルと地底から湧きだす養分が全身に染み込んでいく。明るい月に照らされた勇壮な磯の景色を眺めていると、いまひとつの釣果のことも吹き飛んでたっぷりと英気を養われたのだった。

おすすめの宿
028-033shikinejima_cs6 (26) 028-033shikinejima_cs6 (27) 028-033shikinejima_cs6 (28) 民宿「鈴豊」(東京都新島村式根島929 /℡ 04992・7・0074)
式根島の地磯事情に詳しい鈴木良一さんと奥様が切り盛りするアットホームな宿。メジナをはじめとする地魚を使った料理が美味しく、釣った魚をさばいてくれる。この日釣ったフエフキダイも調理していただくと驚くほど上品で滋味があった。レンタカーもあり。 


当日のタックル:ウキフカセ用
028-033shikinejima_cs6 (15) 離島の大型オナガメジナにも安心の粘り腰。がまかつ「アテンダーⅡ」175-53と2-53

028-033shikinejima_cs6 (17) ウキフカセのハリスはサンライン「トルネード松田スペシャル競技ブラックストリーム」2~4号を用意

028-033shikinejima_cs6 (16) ダイワ「プレイソ2500LBD」はATD(オートマチックドラグシステム)採用で不意の突っ込みにも対応する

028-033shikinejima_cs6 (25) ウキフカセではマルキュー「くわせオキアミスーパーハード」と「特選むきエビ」を使用。重く素早くエサをタナに届けるむきエビは多彩な魚が食ってくる

当日のタックル:ブッコミ用
028-033shikinejima_cs6 (24) ブッコミ釣りの万能エサともいえる「くわせきびなご」。アカハタやカサゴなどの根魚ねらいに効果的で今釣行ではショゴ(カンパチの幼魚)がヒット

028-033shikinejima_cs6 (18) ブッコミ釣りのミチイトはサンライン「磯スペシャル遠投KB」10号。柔軟な設計でスベリ性能が高く遠投しやすい。もちろん高強力で安心だ

028-033shikinejima_cs6 (19) サンライン「大物ハリス」8号と「トルネード松田スペシャル競技ブラックストリーム」10~12号

028-033shikinejima_cs6 (21) ブッコミ釣りに用意したハリはがまかつ「タマンスペシャル」20~22号と管付マルセイゴ

当日のタックル:ナブラ撃ち用
028-033shikinejima_cs6 (22) 青もののナブラが湧いた時用にショアジギングのタックルも用意。ダイワ「ショアスパルタン103HH」と「ソルティガ45600H」

028-033shikinejima_cs6 (23) カンパチ、ヒラマサ、シマアジを想定してダイワ「ソルティガオーバーゼア スキッピング」、「ソルティガドラドペンシルRS」、「TGベイト」、「VSジグ」、「モアザンファントム銀粉」、「サムライジグ」などを用意したが水温が急激に低下したタイミングで水面を騒ぐ青ものたちの気配は皆無


●交通:東京から式根島への足は東海汽船の高速ジェット船が快適。時期にもよるが、12月は東京竹芝桟橋発が8時35分。式根島着が12時20分。帰りは式根島発が13時10分。東京竹芝桟橋着が16時20分。なお大型客船も運航していて22時竹芝桟橋発に乗れば翌朝9時10分には着く。料金はジェット船が片道8560円、大型客船が2等船室片道4750円。早朝から夕マヅメまで1日フルで釣りをするならば2泊3日のプランがおすすめ


2017/12/25

おすすめ記事

記事検索

    月刊つり人 最新号

    月刊つり人 10月号

    特集は『ラストスパート! 渓流&アユ』。
    この夏も本当に暑かった。でも、ほっとひと息つく前に、ゼッタイ出かけたい釣りがある。秋の産卵を前に、エサを積極的に追いかける山の大イワナ。ずっしりとした体躯に育ち、強烈なアタリで目印を吹き飛ばすアユ。どちらも今シーズンのフィナーレを飾るには、まだもう少し猶予がある。 涼しくて魚が大きい今の季節は、誰もが思わぬ良型と出会えるチャンス。経験豊富な釣り人も、あるいはビギナーも、今こそ川をめざそう!