ハードな駆け引きが魅力のヒラマサ。瀬泊まりならマヅメ時も存分にねらえ、夜は他の釣りを 楽しむこともできる。松本太郎さんの対馬釣行に同行した。
ハードな駆け引きが魅力のヒラマサ。瀬泊まりならマヅメ時も存分にねらえ、夜は他の釣りを 楽しむこともできる。松本太郎さんの対馬釣行に同行した。
写真◎松本太郎、編集部 文◎編集部
Q 沖磯で泊まるために最低限必要な装備は何ですか?
A 雨具や寝袋など色々ありますが、絶対にライトは忘れないでください
沖磯・地磯に関わらず、何はなくとも明かりは必須です。ヘッドライトは予備も必ず準備しましょう。
また、野営時に降雨や冷気で睡眠がしっかり取れないということがないよう、適宜、雨具やシート、テントなど、時節や磯の様相に応じた用意をしておくことが肝要です。ロッドケースに傘1本忍ばせておくだけでも、役に立つことが多いです。
礁上に限らず、睡眠不足は判断を鈍らせ、思わぬミスをもたらします。運動量の多いロックショアゲームでは短時間でもしっかりと睡眠を取り、疲労を回復することも安全確保や釣果に繋がる大事な要素のひとつです。
テントを張る場合は自立するものを選ばないと設営できないので気を付けよう
寝袋やシュラフカバーとマットだけでもよい
沖磯で必要なもの。クーラーボックス、ロッドケース、タックルボックス、ゴミ袋や貴重品、レインウエアなどを入れる防水バッグ
ライト、ハサミ、フィッシュグリップは用意したい小物たちだ
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Q 水分や食料はどうしていますか?
A 持参するのが基本です。
見回りなどで渡船が来るタイミングが分かっている場合はその限りではありませんが、携行できる範囲で過不足なく準備します。水分は盛夏であれば最低でも4~6L/1日はあるほうがよいです。寒冷期は水分を忌避しがちですが、それでもしっかりと用意しておくことをおすすめします。
食料も同様で、泊数分+αを用意しておきましょう。また、登山やトレッキング同様、ロックショアの釣りは運動量が多いので、シャリバテ(飯が足りずにバテること)を起こさぬように行動食といわれるような簡易食料を用意しておくとよいです。渡船屋さんによっては弁当を用意してくれるので、必要な場合は渡船予約時に確認して予約しておきましょう。
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Q 沖磯や渡船を利用する際のマナーやルールはありますか?
A 他のお客さんと協力してスムーズな行動を心掛けてください
A まず、渡船屋さんに連絡する際ですが、船長さんは朝が早いので私は概ね7~8時、12時前後、18~19時くらいの時間帯に連絡を取るようにしています。よほどのことがない限り20時以降には連絡しません。希望はハッキリと伝えておくこと、不明点は可否をしっかりと確認しておくことが大切です。船に乗ったり磯に降りる際は必ず船長さんの言うことを聞き、他のお客さんと協力して荷物運びを手伝いましょう。その際、自分だと分かるように荷物に名前を書いておくとよいです。また、瀬泊まりに限らないことですが、ゴミの処分は自治体に委ねている渡船屋さんが多いので、礁上で出たゴミの分別は事前に確認しておきましょう。特にフックや使い終わったガス缶(OD缶)など、船長やポーターさんがケガをしないよう当たり前の気遣いを忘れないようにしてください。
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Q タックル選びの目安や使うルアーの基準を教えてください。
A 初めての場所は少し強めで臨むのがいいかもしれません。
初めてのの場所であれば想定されるターゲットに対してまずは少し強めのタックルバランスで臨むことがいいと考えていますが、渡船を利用するのであればまずは船長さんに聞いてみるのが一番です。
タックル一例
プラグ用
ロッド:ショアゴリラR 100XH(LUXXE)
リール:ステラSW14000XG(シマノ)
ライン:PE5号
リーダー:ナイロン110lb.
ルアー:12~17cm程度のダイビングペンシル、ポッパー、シンキングペンシルなど
フック:SP-XH、プラッギングヘビーワイヤー、チューンド管ムロ26号(すべてがまかつ)
プラグ用
ロッド:ショアゴリラR 100XXH(LUXXE)
リール:ステラSW14000XG(シマノ)
ライン:PE6号
リーダー:ナイロン150lb.
ルアー:20cm前後ダイビングペンシル
フック:SP-XH、プラッギングヘビーワイヤー(すべてがまかつ
ヒラスズキをメインとして小中型回遊魚、あるいは根魚用
ロッド:チータR106MH(LUXXE)
リール:ヴァンキッシュ4000XG(シマノ)
ライン:PE1.2号
リーダー:フロロカーボン8号
ルアー:スピンテールジグ、12cmクラスミノーなど
フック:RB- MH(がまかつ)
ジグは80~130gでロングタイプを中心に用意
80~115gのジグにアシストフックは貫(がまかつ)の4/0
プラグは150mm前後を中心としたダイビングペンシルやポッパー、シンキングペンシルを使う。クリア系を一つは持っておきたい
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【つり人編集部ナガシマの瀬止まり体験記】
磯から大型青物をねらう釣りはまさに魚と人との格闘。オフショアと比べるとアングラー側が不利な状況での釣りはゲーム性も高く、スポーティーな釣りという印象が強い。これを書いている月刊つり人編集部員のナガシマは以前から興味があったのだが、やってみようにも何をどうしたらいいかわからずじまいだった。
そんな折、この釣りにのめり込んで15年、ヒラマサはもちろん、カンパチやロウニンアジなどあらゆる大物と対峙してきた松本太郎さんの釣行に同行することになった。
さっそく連絡すると、「上五島に行きたかったんだけど台風の影響で船が出ないみたい。対馬なら大丈夫だからそこに行こう。磯に2泊するから準備はしっかりしてきてね」と松本さん。磯釣りの経験が少ないため、どんな装備が必要なのか詳しく話を聞いてみると、ライフジャケット、磯靴など磯釣りの基本装備の他に、泊まるためのテントや寝袋、マット、着替えなどが必要とのこと。源流泊用の装備がそのまま使えそうだ。磯では突然スコールが来た場合、雨を凌げる場所はほぼない。荷物が濡れないように防水性重視でロールトップタイプの50Lザックに着替えや磯靴、ルアーやタックルなどを詰めこんだ。
対馬へは博多港から出ている九州郵船のフェリーで約5時間。博多港最寄りのコンビニで2泊分の水分と行動食を調達し、フェリーに乗り込んだ。
まだ暗い対馬の厳原港に到着すると今回お世話になる梅乃家さんの船頭、梅野智明さんが車で迎えに来てくれた。船宿に着いたら受付をして磯に乗る格好に着替えて港へ。買い込んだ飲み物類と氷をクーラーボックスに入れたら荷物を協力してバケツリレーのように船に積み込む。いよいよ磯渡しだ。
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ジグをシャクり倒して待望のヒット
この日渡ったのは対馬の南端、神崎灯台のすぐ下にある三角瀬と呼ばれるポイント。写真の手前の岩だ。荷物をすべて降ろしたらさっそく釣り開始。松本さんは開発中のプロトロッドたちに8000番や14000番のスピニングリールを装着。ナガシマはショアゴリラR100XH(がまかつ)に8000番の組み合わせだ。
「とにかく一匹釣りたいっていうならトップをひたすら投げ倒したほうがいいと思う。釣れるサイズもジグよりデカいことが多いよ。個人的にはジグのほうが好きだけど(笑)」
松本さんはそう言いながら、100gのジグを結んだ。
キャスト後、着底したらワンピッチジャークで誘うのが基本。ヒラマサは中層に浮いていることは少ないので15~ 20mくらいシャクったらベールを返して底まで落としてまたシャクる、を繰り返していく。着底までの時間でボトムの変化をイメージするとよい。また、ジャークする際の重さで潮の変化が分かればその辺りを重点的に探ると反応が得られやすい。
陽が昇り朝マヅメは終了したが、対馬はここからがチャンスタイムになると松本さん。地元の漁師さんは昼のほうが釣れると言い、朝マヅメに出船することはないそうだ。三角瀬の前は川のように流れるらしいが、この日は小潮で目に見える流れはない。それでも流れの変化を見つけ、適度な抵抗感で気持ちよくジグを操作できる流れのなかを探っていると松本さんにヒット。素早くファイト姿勢を整えて寄せ、そのまま一気に引き抜いたのは50cm弱のヒラゴ(小さいヒラマサ)だ。「この時期の対馬のアベレージはこのくらいじゃないかな。まずは一安心」と胸を下す。
松本さんに勧められてナガシマもジグを投げるとしばらくして同サイズがヒット。引きは特段強いわけではなくドラグもほとんど出ていないが、慣れないヘビータックルでシャクリ続けた後にヒットしてすぐさま寄せなければならないというのが苦しい。シモリが近いから休んでいる場合ではないのである。何とか引き抜いて人生初のヒラマサを釣ることができた。このサイズでヒーヒー言っているのは恥ずかしい限りだが、釣れた時の興奮と達成感で満たされた。
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泊まりなら夜釣りも楽しい
梅乃家さんでは事前に伝えておけばお弁当を用意してくれる。蓋が閉まりきらないほど大量のご飯を食べつつ、夕マヅメまでジグを投げ続けたが同サイズを一尾とアカハタを追加して終了となった。
合間にヒラスズキタックルでブレード系を投げるとアカハタが食ってきた
せっかくの瀬泊まり、夜になったら寝るだけではもったいないということで小アラをねらうことに。冷凍のサバの頭にクエバリをかけて近くにぶっこんで待つだけだ。昼間に使ったショアジギロッドを流用しているので手持ちで待っているとすぐエサ取りの細かいアタリがある。本命のアタリは全然違うからわかるよと言われて待つも一向に来ない。終いにはマットを敷いてサオを持ったまま横になった。定期的にエサを交換しながらウトウトしていると3時ごろにガガガっとサオを引っ張られ飛び起きた。重くなかったのであわてて抜き上げたのは40cmを超すイスズミ。アタリから魚が磯に上がるまできっと10秒くらい。なんという環境で釣りをしているんだろうか。瀬泊まり恐るべし。
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痛恨のバラシ×2
2日目の朝は初日よりも魚っ気があった。沖ではシイラの群れが跳ね、足もとにも小さなベイトがわずかながら通る。流れが当たるシモリの上流側でボイルらしきものが見えたような? ダイビングペンシルを投げ続けていると小さく出てミスバイト。そのまま付いてきているのでアクションさせ続けていると磯際ギリギリで飛び出した! フッキングも決まりサオが初日の比じゃないくらい曲がってドラグも出る。シモリとも距離はあるし落ち着いてやり取りすれば獲れると思った瞬間、魚が少しだけ張り出している方へ急に方向転換。その素早さに体が付いていかずにリーダーが擦れてあっさりラインブレイク……。「うわー」としかしゃべれなくなったナガシマを見かねて「このサイズのヒラマサが一番機敏だからね、仕方ない」と松本さんがフォローを入れてくれた。 その後、松本さんもジグでヒット。良型を素早いポンピングで寄せてきたが、魚との距離を見誤ったようで例の張り出しへヒラマサが突っ込んでいく。やばいやばいと言いながら追いかけるも擦られて切れてしまった。その後、小母崎へ磯替えしたがヒットはなく、岸からヒラマサを釣るということの難しさを痛感した日となった。
足もとの張り出しに走った魚を追いかける松本さん。ナガシマが掛けた魚も同じ場所に走ったが、ナガシマは動けず瞬殺された
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夕方にアラチャンス到来
夕方はタカの下ハナレへ移動しここで夜を過ごすことに。このポイントはアラが好実績のポイントとのことで過去には30cmを超す大物も釣れている。潮止まりが20時だったのでまだ陽は沈んでいないが潮が止まる前のチャンスタイムにサオをだした。するとすぐに松本さんのがま磯ライトインパルスが絞り込まれたがすっぽ抜けてしまった。前日のアタリとの違いに驚いているとナガシマにもゴッというアタリとともにじりじり引っ張られる感覚。アワセを入れると一気に走り出し、バチンという音がしてPE4号が切れてしまった。30cm弱のサバをひとのみにするサイズとはどのくらいなのだろうか……。
小アラ(クエ)ねらいのエサは冷凍のサバ。丸ごと一尾を使う
シャッターを切る直前までサオが弧を描いていたがあえなくフックアウト
松本さんいわく、対馬は大型のヒラマサは少ないが、数は多いので初心者でもチャンスは多いそうだ。この日はまだシーズン前だったが10月以降はいい頃合いとのこと。お世話になった梅乃家さんも非常に親切で初めての瀬泊まりにはおすすめなのでぜひ挑戦してみてほしい。
【問合先】総合釣りセンター梅乃家(0920・57・0096)【料金】渡船代8000円、弁当一食700円【交通】対馬の厳原港までは博多港からフェリーで約5時間(壱岐経由)、ジェットフォイルで約2時間。厳原港から梅乃屋までは事前に連絡すれば送迎もしてくれる
※このページは『つり人 2023年11月号』を再編集したものです。