テナガエビは貪欲だろう。食い気があれば何でも口に放り込むはず。そんな推測から釣りエサではない食べ物でアプローチ。はたして何がお好みなのか?
何が好き?テナガエサ-1グランプリ 後編
◎つり人編集部
この記事は『つり人』2019年9月号に掲載したものを再編集しています。
テナガエビは貪欲だろう。食い気があれば何でも口に放り込むはず。そんな推測から釣りエサではない食べ物でアプローチ。はたして何がお好みなのか?後編
目次
問題はハリにいかに付けるのか
石井さんと訪れたのは江戸川の北総線鉄橋付近。この日の前日も石井さんはサオをだし、まずまずの釣果が出たそうだ。そして潮時がおおいに関係する釣り場と言う。
「干潮に入って満潮まで釣りましょう。食いが立つのは満潮前の数時間。バタバタと当たります」
並べ釣りに適したテトラ帯は潮が満ちると浅場にエビが大挙してくる。この時エサの真価が問われそうだ。
午前7時にスタート。干潮間もない時刻ゆえテトラの大半が露出している。まずは一番沖のテトラの切れ目に各エサを落として反応を見た。
石井さんはタナゴバリの「流線」を愛用し、口を傷めないようにカエシを研いでバーブレスにする。
ハリ掛かりすれば外れることは全くといってよいほどないそうだ。
ハリはタナゴバリの流線。カエシは研いでバーブレスにする
数珠シモリ仕掛けを愛用。ウキはすべて白く塗って視認性を高めている。シモリ仕掛けは水中のイトの角度が分かるので、エビがエサをつかんでいるかどうかが判断しやすい
開始分ほどで1尾目がヒットした。ブラックタイガーを付けたサオであり、その後も4尾連続で掛かってくる。やはり「釣れるエサ」なのだ。やがてほかのエサにもアタリが出始める。魚肉ソーセージ、はんぺん、さきいか、さけるチーズ、サラダ用タラバガニ、いずれもリーチである。シモリウキがぴょこぴょこと動くアタリが出て、ストップしたところで「よし来た!」と合わせるも空振りする。
「エサに必要な条件は2つあると思います。エサ持ちがよいこと、そして軟らかくて食い込みがよいこと。相反する要素を兼ね備えているのが理想のエサなんですね」そう言う石井さんの各エサの分析結果は次のとおり。
1、魚肉ソーセージ=ふわふわと軟らかく、ハリを刺す時に余計な傷を付けると繊維が切れグズグズになる。結果、エサ持ちが悪い。一方でアタリは抜群に多い。
2、サキイカ=エサ持ちはすこぶるよいのだが、食い込まない。水でふやけても軟らかくならない。が、アタリはポツポツとある。
3、チーズ=付け方しだいで取られやすい。また残っても水に浸かりすぎると透明感がなくなり、真っ白くなって硬くなる。鮮度がよく、軟らかい状態でないとアタリは出ない。
4、タラバガニ=アタリはすこぶる多い。反面、付けにくく取れやすく、エサ持ちがとにかく悪い。
5、はんぺん=エサ持ちが悪いのと付け方が難しい。大きく付けないとハリの刺し傷ですぐに崩れる。大型のエビバリ(3号)ならば使えるかもしれない。
以上のことから釣果を得るためにハリ付けが問題と判断。石井さんはそれぞれのエサの特徴を考え、付け方を工夫。
とても大事なエサの付け方
魚肉ソーセージやはんぺんはハサミで丁寧にカットしてエサを崩さないように付ける。
ハサミで短冊状にカット
一端からハリを入れてハリスまで写真のように抜く
折り返して魚肉ソーセージの真ん中あたりにもう一度刺す
ハリスを引っ張ると写真のような縫い刺しになる。ハリを余計に刺すとちぎれやすい。なるべく点で刺して無駄な切れ目をいれないように注意
タラバガニは繊維がしっかりした部分を選ぶ。
繊維のかたまりにバラつきがある。なるべくゴロッと固まった繊維を選ぶ
ハリ先をしっかり出すようにして付ける
さけるチーズやサキイカは好きな大きさに裂くことができるのでエサ付けはしやすい。いずれもハリ先をしっかり出すように付けるのがミソ。
さけるチーズ
ハリの大きさに合わせて裂き、ハリ先をしっかり出すように付ける
潮が満ちてきた。上げ6分といった時間帯。エビの活性が高まり、手前の浅場でもヒットが望める。ブラックタイガー以外のエサにもついに乗った。優等生はタラバガニ。しかも2尾たて続けの連続ヒット。さらにはさけるチーズにも1尾目がヒット。ハリ先を出して付けたのが効果的だったのかもしれない。一方ではんぺん、サキイカ、魚肉ソーセージはアタリが出ても乗りきらず、空振りの連発となった。
上げ7分の最高の時合が到来。しかし南より強風が吹き始める。並べたサオが動き、テトラの周りは波が立って、仕掛けが1ヵ所に落ち着かない。こうなるとエビもエサを取りにくく、アタリが遠くなってしまう。そこで石井さんは移動を決断。カニとチーズが当たるのは分かった。魚肉ソーセージでなんとか釣ろうと、風の影響を受けにくい釣り場を求めて散策する。
テナガエビの口は凹んで四角く硬い。しっかりとエサを食い込まないとハリ掛かりせず、ハリもある程度のフトコロが広くないとフッキングしない
6本の置きザオにそれぞれ違うエサを付けて検証
はたして魚肉ソーセージは釣れるのか?
訪れたのは里見公園下流の京成本線鉄橋下。ここは遠浅なゴロタ場のポイントで潮が引くほどポイントが遠くなる。石井さんが注視するのは光と影の明暗である。
明暗の境目を常に意識して石井さんはポイントを選択
ゴロタ場では魚肉ソーセージの真価を試す
「橋下のように全体がまんべんなく陰になった場所はエビもエサを見つけにくいと考えます。
明暗のメリハリがはっきりしたスポットが釣りやすく、エビもエサに気付きやすいと感じています。
私の実績ではエサはなるべく物陰の境目にある光の当たる部分に入れたほうがいいんです」
と石井さんはポイントを絞り込む。エサは魚肉ソーセージ。慎重かつ丁寧に小粒の短冊状にハサミでカットし、ハリに縫い刺しをする。数分後、ウキが動き、岩陰に引っ張られるようにしてウキが止まる。軽くイトを張ってアタリを聞く。ここでオモリが持ち上がり、仕掛けが動くようならエビは付いていない。逆に仕掛けが動かなければ可能性がある。そして、石井さんの仕掛けは動かなかった。そろりと持ち上げるとバチンバチンとキックバック! 乗った!
舞い上がったのはロングアームの良型である。魚肉ソーセージでのヒットに一息つく。やはりというか、ハリの付け方しだいで釣果は変わるのだ。
というわけで、はんぺんとサキイカは脱落したが、ほか3つのエサに可能性を感じた1日となった。
番外編 ヒロキューポケベイト
練りエサのポケベイト。これも魚肉ソーセージと同じような付け方が効果的だった
立派なロングアームがヒット!
河畔のラン&ガンには折り畳み自転車が便利。土手を颯爽と走るのもまた楽しい
東京都/江戸川
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