生粋のライトゲーマーである豊西和典さんが訪れたのは富山県。ご当地パターンであるホタルイカパターンで尺アジ・尺メバルをねらった。。
ご当地パターンであるホタルイカパターンで尺アジ・尺メバルをねらった
写真と文◎編集部
ホタルイカの身投げ
2月から6月ごろにかけて富山県の海岸線が夜に賑わいを見せる。その理由がホタルイカだ。普段は深い場所にいるホタルイカがこの時期になると岸に寄ってきて打ち上げられてしまう。ホタルイカの身投げと呼ばれ、海岸が青白く光ったり、ホタルイカをすくう人々で賑わうようすは春の風物詩となっている。
ホタルイカの身投げに歓喜するのは人間だけではない。魚も同様だ。ホタルイカを食べようと、アジやメバルをはじめ、シーバス、クロダイ、キジハタなどが岸に近づいてくる。あらゆる魚が釣りやすくなるこの時期の釣りはホタルイカパターンとして、富山のご当地パターンとして有名だ。
3月上旬、今年もホタルイカパターンが始まったという一報を受けて富山県にやってきたのは豊西和典さん。大阪をホームにアジやメバルを年中追いかけているエキスパートだ。
「前に来たときは5月やったかなぁ。その時はまるでダメやったから今回はリベンジや」
当時は自身のポイント選択眼を信じてガイドなしで釣り場を巡ったそうだが、思うようにいかなかったそうだ。今回は現地のロコアングラーにガイドしてもらう。案内してくれるのは廣野好昭さん、原一輝さん、澤田瑶一郎さんの3人。釣れるのは暗くなってからだが、ポイントの下見も兼ねて明るいうちから釣り場に集まった。
今回豊西さん(一番左)をガイドしてくれたのは右から澤田さん、原さん、廣野さん
湧きすぎると釣りづらい
ホタルイカパターンでねらう春は漁港内に入ってくるアジよりもサーフに回遊してくるアジをねらうほうがサイズも数も出しやすいという。
「ホタルイカパターンというとたくさん打ち上げられているような状況のほうがいいように思われがちですが、エサが多すぎるとルアーに気付かれにくくなるので難しくなります」
そう話すのは廣野さん。ホタルイカが一番湧くのは新月の大潮だが、一面に打ち上げられて青白い光を放っているような状況は意外と釣れないそうだ。
中潮であるこの日は風が強く吹き、夜の9時ごろから徐々に落ち着いていくという予報。明るいうちにポイントに入り風や潮の流れを確認していく。このエリアは海岸沿いに消波ブロック帯がいくつもあり、その切れ間から沖をねらうのが基本となる。場所によってはプラグでもねらえるが、この立ち位置からでは飛距離が必要なので大型のフロートをセットする。フロートは久しぶりだから練習しないと(笑)、と言いながら豊西さんはキャストしていく。
「風は強いけど潮はほとんど動いてないね。こんなんで釣れるんかな。初めての場所はこうなると釣れるっていうイメージが湧かないから不安になるわ」
海岸にある突堤からキャストを繰り返すが足場が高く、横風のためリグの操作はかなり難しそうだ。日が沈んで辺りが暗くなるまでワームローテをしながら投げ続けるも怪しげなアタリが一度あっただけだった。すると近くの突堤で原さんがアジを釣ったという連絡を受けた廣野さんが移動しましょう、と即決断した。
「この釣りは釣れる場所と釣れない場所の差がはっきりしているので下手に粘らないほうがいいです」
アジもメバルもヒット
移動した先の突堤は先程の場所よりも足場は低く消波ブロックも近い。先端の一等地を譲ってもらいキャストしていくものの、なかなか反応がない。どうやらアジは常にいるわけではなく、沖から回遊して消波ブロック帯の近辺を出入りしているようだ
潮が少し重く感じるようになってきたタイミングで待望のヒット。抜き上げたのは25cmほどのメバルだ。
「色をクリア系のナマシラスから目立つレモンチャートに変えたら一発や。メバルってことはさっきより流れが利いてブロック際を引いてたんかもな」
いつしか風も弱まり快適にフロートを操作できるようになると今度はヌンと持っていくようなアタリが出た。テンションが抜けないように丁寧に寄せて抜き上げる。ネットインしたのは尺にはわずかに届かなかったが丸々としたアジだ。
「潮は右から左にやや当て気味で流れてる。潮上へ投げて着水したら15カウント。水面近くだとウネリの影響を受けるからその下にリグを入れる感じやな。ゆっくり巻いて流れに乗せていく感じにしたら来たわ」
クリア系が優勢だが、チャートが効くことも
ヒットルアーはギムレット2.5インチ(エバーグリーン)のレモンチャート・グロー。豊西さんは時折カラーチェンジをしていたが、今日はチャート系に反応が集中するようだ。
「富山ではクリア系に反応がいい時が多いです。でも、今日みたいにチャート系にばかり反応が集中することも割とあるので両方用意しておくと安心ですよ」
と廣野さん。あまりに反応がない時は色を変えてみると途端に反応することも多いそうだ。
ギムレット2.5 インチ(エバーグリーン)。富山で定番のカラーは上からクリアUV、ひとくちイワシ、クリア・SL、ナマシラス
ロッドはソルティーセンセーション譲りの高感度に扱いやすさが加わったことで人気のソルティーセンセーションネオシリーズからフロート用とプラグ用に2本をチョイス。大型のフロートも振り抜ける82H-Tと10g程度までのプラグやリグが扱いやすいソルティーセンセーションネオ76m-Tだ。82H-TはPEの0.5号に6ポンドのフロロカーボン1mをクインテットノットで結び、その端イトにフロートを結んでいる。ジグヘッドは0.4g。
今回使用したのはソルティーセンセーションネオシリーズ(エバーグリーン)の82H-Tと76M-T。ソルティーセンセーション譲りの高感度ながらマイルドな使い心地で誰でも扱いやすい
76m-Tにはコルセア65(エバーグリーン)をセット。富山では定番のシンペンであり、特に透け感のある銀粉稚アユというカラーがダントツの当たりルアーになることも多いそうだ。
プラグも射程圏内に魚が回遊してくればよく釣れる。コルセア65(エバーグリーン)はこの時期の定番だ
この日のアジは群れの規模が小さいのか移動が速いのか、連発とはなかなかならないが、豊西さんは根気よくキャストを続けてポツポツと拾っていく。釣れる魚は最初の1尾を除いてすべて尺オーバー。釣果に富山湾の豊かさを実感した。
尺メバルをねらうもショートバイトに苦戦
潮も緩んだところで反応も落ち着いたので今度はプラグで尺メバルをねらおうと魚津エリアへ移動することに。
「魚がいればすぐに反応があるところなのでさっとやってみましょう。ダメだったら素直にあきらめてホタルイカをすくいに行っちゃいましょうか!」
という廣野さんの鶴の一声で一同は車を走らせる。次のポイントでは沈み根が続いていて、その周りにいるメバルをプラグでねらっていく。ポイントに近づくためにもウエーダーを履いて歩くが、玉砂利と海藻でとても滑りやすい
開始早々に原さんがムラソイをヒットさせた。どのタイミングで掛かったのかは不明だが、なんとホタルイカまでついてきた。続けて20cm程度のメバルもキャッチ。しかしその後は、何度かショートバイトはあったもののヒットには至らず納竿となった。
根周りを探っているのでムラソイも釣れる。なぜかホタルイカも引っかかってきた
この日最後のイベントはホタルイカすくい。下げのタイミングだとホタルイカが打ち上げられやすくなるため、上げは釣りをして下げはホタルイカすくいにシフトするのが廣野さんのルーティーンだそうだ。深夜の2時でも海岸にはホタルイカすくいをしている人の明かりがちらほら見え、駐車場にはどんどん車が入ってくる。一行はロッドをタモに持ち替えて波打ち際を歩いてイカを探す。遠征に来た人を案内するとみんな釣りじゃなくてホタルイカに夢中になるんですよ、と廣野さんは笑っていたが、やってみると確かに面白い。豊西さんも夢中になって探していたが、この日は1パイ見つけただけでタイムアップとなった。
「今日はホタルイカが湧く潮回りではないですからね、だからアジがよく釣れたんですよ」
と廣野さん。ホタルイカパターンは6月ごろまで続く。イカが湧いていればすくって、そうでなければ魚を釣る。どちらに転んでも楽しい富山の春をぜひ楽しんでみてはいかがだろうか。
潮回り次第でホタルイカがたくさん獲れたり、いい魚がたくさん釣れたりする富山の春はこれからが本番
※このページは『つり人 2024年5月号』を再編集したものです。