毛バリを水面に浮かべるドライフライ・テンカラはビギナーにも分かりやすく、この釣りの魅力を存分に知ることができる。魚が水面を割り、毛バリをくわえ込む瞬間は、脳裏に焼き付くほどのスリルがある!
フライとテンカラのクロスオーバー
写真と文◎編集部
こちらの記事は月刊『つり人』2021年7月号に掲載したものをオンライン版として公開しています。
毛バリを水面に浮かべるドライフライ・テンカラはビギナーにも分かりやすく、この釣りの魅力を存分に知ることができる。魚が水面を割り、毛バリをくわえ込む瞬間は、脳裏に焼き付くほどのスリルがある!
目次
流す距離は30cmと短い
川にはミドリカワゲラの成虫が飛び交っていた
まずは魚が捕食しやすい毛バリの流れ方を知ろう。それは毛バリが不自然に引っ張られず、流れの筋に沿って漂う図A のような状態である。毛バリよりも先行してラインが流れに取られると、毛バリが不自然に引っ張られ、魚が追ったとしても食いきれない(図B)。またテンカラはノベザオの釣りであるがゆえ、サオとラインの長さに限りがある。ラインが直線に伸びきれば図C のように毛バリは手前に引っ張られる。となれば、ねらいの筋に毛バリを漂わせられる距離は必然的に短くなる。
「毛バリを流す距離は30cm、長くて80cm程度でしょう。時間に換算しても長くて5秒。それも巻き返しのような毛バリを留めておきやすい流れでの話です。一番の理想は着水直後にヒットさせることです。一度食い損ねてしまったヤマメは、2度は食ってきません」
流れの筋に沿って毛バリを流す方法
流れの筋に沿って毛バリを自然に流し込むには、ラインの置き方に工夫が必要だ。図D のようにラインを毛バリよりも上流側に置くのである。しかし下流から上流へのアプローチとなればこうした流し方は難しい。川の形状にもよるが、ひとつの方法として岩の上にラインを置くやり方がある。図E のように手前に岩があって、その上流側や岩の横に捕食しやすい筋があるとすれば、岩の上にラインを乗せて流し込むのもあり。ただし、これも川相しだいなので、基本はなるべくラインを水面に浸けずに釣る。そのほうが魚に警戒されにくいのだ。
ラインを水面に浸けないように釣るには軽いレベルラインが適している。というのも自重があるテーパーラインはイトの重みで手前に毛バリが寄りやすく、筋から外れてしまいがち。とはいえ毛バリを飛ばしやすいのは重いラインであり、前述のとおりビギナーにもおすすめしたい。となると重要なのは短距離で食わせられるポイントの見極めだ。
「エサ釣りにも通じることですが、ヤマメを釣るには魚のいる筋に毛バリを乗せることがなにより大切です。魚の口先に毛バリを通せば、素直にぱっくりと食ってくれます」
図F のように魚の定位する筋から毛バリが20cm流れたとすれば、当然ながら捕食をしにくく、食い損ねることがかなり多い。そこでビギナーはなるべくポイントを絞りやすい小渓流がおすすめなのだ。
流れが速すぎれば魚は毛バリを食いにくい。ある程度緩くなったところで出る。芯の流速が速ければその両脇、芯が緩ければ真ん中。段々瀬の落ち口やカケアガリの尻となる浅場は特に見逃せないポイント。
なお、短いストロークを釣るのだから着水には細心の注意はらいたい。基本は魚よりも前にラインを置かず、ラインで水面を叩かないこと。ハリスや毛バリが魚の前に落ちるのはOK。毛バリをふわりと静かに落とす方法としてハリスを長く取るとやりやすい。しかし、長すぎても毛バリまで力が伝わらず、ハリスが伸びずクシャクシャになって落ちる。大沢さんが推奨する長さは1mである。
落ち込みから続く小さなヒラキで躍り上がった魚