田んぼに水が引かれ、カエルの合唱が響くころは、水路の小魚たちも生き生きと泳ぎだす。牧歌的な自然を愛でる、里山のタナゴ探検。その魅力を紹介しよう。
色鮮やかな日本の淡水魚を釣ろう!
写真と文◎編集部
こちらの記事は月刊『つり人』2021年7月号に掲載したものをオンライン版として公開しています。
田んぼに水が引かれ、カエルの合唱が響くころは、水路の小魚たちも生き生きと泳ぎだす。牧歌的な自然を愛でる、里山のタナゴ探検。その魅力を紹介しよう。
目次
- その1
- 多彩でマニアックなターゲットをねらう
- その2
- タナゴ探索の方法
- 食いしん坊なアブラボテ
- その3
- オヤニラミを穴釣りでねらう
多彩でマニアックなターゲットをねらう
「魚が好きで、釣りが好きで、旅が好きです。その地域でしか釣れないような個性的な魚を求めて旅をすることが多く、釣って手にして愛でたい。魚は釣りあげた瞬間が一番きれいなので、その感動を大切にしています」
ペスカトーレ中西こと中西和樹さん(31)は行動力溢れるトラベルアングラーである。アマゾン、モンゴル、タイ、マレーシア、ベトナム、カンボジア、インドネシア、パプアニューギニア、オーストラリアと世界中を釣り歩き、国内も北海道から沖縄、小笠原諸島まで秘境でも街中でも全国各地を〝探釣〟する。大学卒業後、サラリーマン時代を経て、現在は旅の釣りに最適なパックロッドを手掛けるメーカー「フエルコ」に勤務
そう話す中西さんが追いかけるターゲットは多彩でマニアック。釣った魚は数百種を数え、この春ねらった魚は利根川のアオウオ、沖縄のタイワンキンギョ(観賞魚「ベタ」のような鮮やかな淡水魚で闘魚でもある)、小笠原のネムリブカ、ガラパゴスザメ。こと近年はサメ釣りに熱心でカスザメをねらって住まいのある大阪池田から千葉の南房まで何度も通っているという。
これからの季節は中禅寺湖のレイクトラウトをねらい、夏は源流に繰り出し、ヤマトイワナやゴギ、ガレモンイワナと地域色豊かなトラウトをルアーで釣る。どんな魚も釣りで手にしてこそ喜びがあるといい、小型ナマズのアカザさえねらって釣るというから驚く。そんな中西さんが穴の空くほど読んだというバイブルが、小誌の連載をまとめた熊谷正裕さんと葛島一美さんの共著『日本タナゴ釣り紀行』である。
中西さんは少年時代に生家の近所を流れる琵琶湖疏水の掘割でカネヒラを釣った。それが初めて手にしたタナゴだった。美しく個性的な魚体に魅せられ、身近な京都府内から、東北、九州と全国のタナゴを釣り歩くようになる。保護水面に注意して釣りが可能な全15種を釣りあげたという。また国内だけにとどまらずタイワンタナゴを釣りに台湾にも足を延ばした。
「秋産卵型のゼニタナゴやカネヒラは別として、タナゴ釣りは婚姻色の出る初夏をメインに楽しんでいます」
小川の釣りはのどかな時間が流れる
いよいよタナゴの本格シーズンという4月下旬、中西さんが巡ったのは京都府南部の亀岡市と南丹市の界隈である。丸っこい稜線の山々の間に盆地が広がり、田園地帯を潤す里川に豊かな小魚が泳ぐ。今回のねらいはアブラボテとヤリタナゴ。桂川(大櫃川)から広がる水脈を探る。