淀川周辺のチニングで年間2000尾をコンスタントに釣る男がいるらしい……。複数のチニングエキスパートからたびたびそのアングラーの話を聞いていた。チニングでフリーリグを使うパイオニアでもあるという。連絡をとり釣りに同行して見えてきたのは、磨き上げられたフリーリグの操作方法と、クロダイ(以下、チヌ)という魚を知ることへの尽きない探求心だった。
壁際のボトムバンプと広範囲を探るただ巻き、「年間2100尾の男」が操る秘密のフリーリグ
写真と文◎編集部
こちらの記事は月刊『つり人』2021年8月号に掲載したものをオンライン版として公開しています。
淀川周辺のチニングで年間2000尾をコンスタントに釣る男がいるらしい……。複数のチニングエキスパートからたびたびそのアングラーの話を聞いていた。チニングでフリーリグを使うパイオニアでもあるという。連絡をとり釣りに同行して見えてきたのは、磨き上げられたフリーリグの操作方法と、クロダイ(以下、チヌ)という魚を知ることへの尽きない探求心だった。
目次
90日で2100尾!
チニング(チヌのルアーゲーム)のエキスパートたちと話をしていると、いつも話題に出てくる釣り人がいる。その男は大阪府・淀川をホームに、フリーリグを中心に年間2000尾を超えるチヌ・キビレをコンスタントにキャッチしている。仮に毎日釣りに行っているとしても驚異的な数字だが、釣行回数は100日弱だという……。しかも1回あたりの平均時間は3〜4時間。いったいどうなっているのか? 編集部のネットワークを通じて釣行への同行を申し込むと、こころよく引き受けてくれた。
年間2100尾のチヌを釣る男、もりぞーさん
そのアングラーの名前は森浩平。チニングの世界では「もりぞー」の通り名で知られ、かつてはプロのバイクレーサーとして活動していたという異色の経歴の持ち主だ。チニングのホームフィールドは淀川。だが、2021年は各所で工事を行なっている関係で淀川の状況が思わしくないため、当日は阪神間の運河群を巡ることになった。
いったいどんな釣り人が現われるのだろうとドキドキしていたが、もりぞーさんは物腰の柔らかい紳士だった。大阪府出身&在住。子どものころ家族旅行で西表島に行き、マングローブのトップウォーターでミナミクロダイを釣ったことがチニングにハマった背景になっているという。釣りから離れた時期もあったが、この10年は生活圏の近くでできるチニングを追求することに心血を注いでいる。釣行の記録をつけており、2019年は97日で2110尾、2020年は90日で2129尾のチヌ・キビレをキャッチ(ちなみに最長サイズはチヌ57㎝、キビレ49㎝)。といっても数釣りを追求しているわけではなく、チヌの行動原理、取り巻く環境から受ける影響などについて深く知り、自身の釣技を磨きたいという向上心が原動力になっている。
フリーリグに頼る理由
チニング年間釣果の大半を釣っているのがフリーリグだという。チニングでフリーリグを使うのは今でこそ一般的になっているが、そのパイオニアがもりぞーさん。2015年ごろにバスフィッシングで使われるようになった直後に試して手ごたえを得たという。
もりぞーさんの主力はフリーリグ。使い方は広範囲の底を探るただ巻きと、壁際の底でリグを跳ねさせるボトムバンプだ
チニングを始めた当初はジグヘッドリグを使用していたもりぞーさんだが、根掛かりがあまりに多いためテキサスリグを試すとストレスが激減。当時は口が小さいチヌはオフセットフックではフッキングしないと言われていたが、そんなことはまったくなかった。その後フリーリグを試すとテキサスリグと比べて飛距離が大幅に伸びたという。また、バレットシンカーオンリーのテキサスリグに対し、棒型と丸型のシンカーを使い分けられることもフリーリグのメリットだった。「フリーリグ」という名前ではあるが、もりぞーさんはシンカーストッパーでシンカーの遊動幅を最小限にしている。これはボトムで跳ねさせる際にロッドワークに対してダイレクトにワームが動くようにするため。
当日はおもに2種類あるというフリーリグの使い方を見せてもらった。その使い分けは極めて明解。護岸際を釣る際はピッチングで投げボトムバンプさせる。沖にキャストし広範囲(底質はゴロタなど)を探るときはボトムスイミング(ボトムすれすれのただ巻き)。
リグの操作方法やタックルの組み合わせなど、もりぞーさんの釣りはいずれの部分も試行錯誤の跡がびっしりとついていたが、なかでも一番こだわっていたポイントは「本気のバイトをいかに引き出すか」ということ。コッ、という小さなバイトをいかに掛けるか、ではなく、一発吸引の本気食いをさせることができるアクションとリグセッティングを追求していた。
コツコツという小さなアタリは無視してそのまま巻き続け、ゴツン!という強いアタリのときに合わせる。サオを立ててリールをゴリ巻きしてフッキングする
たとえばシンカーの形状。棒型のシンカーのほうがすり抜け性能が高いので有利に思えるが、もりぞーさんはあえて丸型に変えることもあった。石などに突っかかりやすくすることで、ワームが移動するペースを結果的に抑えることができ、状況によっては本気食いの確率が高まるからだ(もちろん逆になることも多い)。
また、ウエイトについて悩み、「7gより10gのほうが本気になってくれるかもなぁ……」とつぶやくシーンが多かった。シンカーを10 gにすると同じ水深をより速いスピードで引くことができ、より本気度の高いアタックが期待できるかも……という発想だ。もちろん、逆に5gにしてスローダウンすることで動きの鈍い魚を反応させられることもある。「このポイントは●g」などと決めつけることは決してない。ここではシンカーを例に出したが、リールやワーム、アクションの強弱など、すべてのことで常に思考を巡らせていた。こうしたトライ&エラーがすべての過程で積み重ねられた結果が2000尾なのである。細かいセッティングは次のページで紹介しよう。
当日の1尾目は45cm クラスのチヌ。ヒットルアーはアーバンクローラー
40cm アップのキビレも登場。壁際でボトムバンプするクレイジーフラッパーを抑え込んだ
次のページでは、仕掛けのセッティングについて紹介します
▶▶▶「年間2100尾の男」に訊く!フリーリグでねらうクロダイ(チヌ)その2
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