東京周辺、そして東京都内に、次々と新たなクロダイフィールドが誕生している。品川区内の京浜運河は古くから釣り人に親しまれているが、以前とは違う新たな表情で楽しませてくれている。
東京では2015年ごろからクロダイの魚影が濃くなった
写真と文◎編集部
こちらの記事は月刊『つり人』2021年9月号に掲載したものをオンライン版として公開しています。
東京周辺、そして東京都内に、次々と新たなクロダイフィールドが誕生している。品川区内の京浜運河は古くから釣り人に親しまれているが、以前とは違う新たな表情で楽しませてくれている。
目次
またも東京に新たなヘチ釣り場
緑道公園自体は相当前からある公園のため案内看板も年季が入っている。現在位置と書かれているところから八潮橋辺りまでがヘチ釣り場
京浜運河緑道公園と聞いてもピンと来る人は少ないかもしれない。しかし、羽田空港に向かう途中のモノレールや首都高速羽田線を走行する車窓から見える天王洲から大井にかけての運河といえば「ああ、あそこね」となる人も多いだろう。
垂直護岸が沖側に張り出したことで遊歩道は広くなり、ヘチは深くなった。首都高速の先に見える青い橋が八潮橋で、奥に見えるのが品川八潮パークタウンの街並み。なお、公園内には自販機がなく、熱中症には充分に注意したい。自販機は八潮橋付近からパークタウン内に入るとある。かもめ橋付近にはスーパーマーケットもある。多少歩くが対岸の品川シーサイド側には大型商業施設やコインパーキングも多い
山下正明さんと郡雄太郎さんのふたりを中央区の隅田川界隈のクロダイ釣り場に案内したことがある山岸將一さん。そんな山岸さんの仕事場は東京都中央卸売市場のひとつで、青果を扱う大田市場。京浜運河緑道公園は目と鼻の先であるが、ここでクロダイ釣りをしようと思ったことはほとんどなかったという。
ハゼしか釣れないイメージだったが
「モノレールの対岸に京浜運河緑道公園が昔からあるのは知っているし、通勤の首都高からも毎日見えるんだけど、遊歩道の柵の下は干潮になると干上がるくらい浅いゴロタだったし、釣れるのはせいぜいハゼくらいというイメージだった。ハゼを釣るなら大井ふ頭中央海浜公園にある夕やけなぎさとかはぜつき磯のほうが釣りやすいしね」
というわけで職場から非常に近いにもかかわらず、釣り場としてはこれまでさほど意識していなかった。ところが今年、その認識が一変したという。
そっと覗き込むとヘチで年無しクラスが何かをついばんでいた
さらに身を乗り出すとこちらの気配を察知して深みに姿を消した。よく見ると水面近くには真っ白なフジツボがびっしりと付着しており、壁面にはカニやフナムシもいる。水潮気味だったためか水面下にはハゼやヌマチチブなどが浮き、すぐ沖にはイナッコが群れており、クロダイのエサには困らなそうだが、イガイは全く付着していなかった
そもそも京浜運河緑道公園は南北に細長い公園で、南は東京モノレールの大井競馬場前駅辺りから、北はりんかい線の天王洲アイル駅(モノレールの天王洲アイル駅は少し遠い)辺りまでの約2kmもある。大井競馬場駅に近い勝島橋からかもめ橋にかけての約1㎞区間はゴロタが続き、柵もないことからシーバス釣りの人気エリアでもある。ところがここ数年、大規模な工事が続き水辺に近寄ることができなかった。その工事がようやく1年ほど前に終了すると、かもめ橋付近は緩やかな傾斜の石積みになり、石に乗っての釣りが非常にしやすくなった。傾斜の先はほどよく深くなっており潮の干満に乗じて魚が行き来しやすく、開放された時点ですでにカニやフナムシ、フジツボなどが多く見られたという。
八潮橋からかもめ橋方面は緩やかな傾斜の石積みになっている
石積みはまだ新しいが、すでにフジツボが付着しカニの姿もたくさん見えた
しかしヘチ釣りファンの山岸さんが着目したのは天王洲寄り(若潮橋寄り)の新しくなった遊歩道だった。 「遊歩道自体は前からあったんだけど、それまでヘチ釣りをしようとは思わないくらい岸寄りが浅かったのに、垂直護岸の下で満潮なら2ヒロ半(4m弱)くらいの水深がある。護岸が運河側にせり出したうえに浚渫をしたみたいで、遊歩道は以前とは比較にならないくらい広くなって、ヘチ際の水深がとても深くなった」
こうして緑道公園の天王洲寄りの1.5kmは以前と違う釣り場になった。山岸さんがヘチ際を覗き込むと、いいサイズのクロダイがヒラを打っている。周囲をよく見たら、前は見かけなかったヘチ釣りの人の姿がちらほら……。
「これは面白そうだと思って郡さんを誘ってやってみたのが6月の20日過ぎ。市場の仕事が始まる前の5時前から6時過ぎまでの1時間ちょっとで自分は年無しを含む3尾、郡さんも型は小さめだったけど4尾。初めての釣り場で2人7尾なら上出来でしょ(笑)」