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ウイニングパターンは“いつもの”ネコリグ。同船記者が目撃した圧勝の理由とは
Basser編集部=写真と文
「沢村幸弘の壁」はあまりに厚く、高く、そして強力でした。2019年JBTOP50遠賀川戦・ベイトブレスカップ。この戦いを終始リードし、後続に影すら踏ませず勝利したのは沢村幸弘選手。
遠賀川戦を見事勝利した沢村幸弘選手から、皆さんへのメッセージです。 pic.twitter.com/JfhuqMcGk1
— Basser編集部 (@Basser_editor) 2019年7月4日
ここで、改めて沢村選手の遠賀川における実績を振り返ります。
・2005年JBクラシック遠賀川ラウンド 首位(河口湖との2ラウンド制)
・2006年JBTOP50 6位
・2010年JBジャパンオープンクラシック 優勝
・2013年JBTOP50 優勝
・2015年JBTOP50 準優勝
・2019年JBTOP50 優勝
以上のように、この水系で際立った強さを見せてきた沢村選手。特筆すべきは、過去9年間のうちにメジャー戦で優勝3回と準優勝1回という実績は、すべて沢村選手が50歳を過ぎてから挙げたという事実です。
プロアングラーの多くは、そのキャリアのピークを30代中盤で迎えるといわれています。フィジカル的要素と経験値の両方が求められるバスフィッシングという競技では、そのふたつの最大公約数となるタイミングが30代中盤となると考えられているからです。
しかし沢村幸弘という稀代のプロフェッショナルバスアングラーは、この法則をあざ笑うかのように59歳という年齢でトップカテゴリー戦を制し、自身が持つJBの最高齢優勝記録を塗り替えてしまったのです。
今回沢村選手が実践していた釣りは「インビジブルストラクチャーに超ショートディスタンスでネコリグを投じる」という、同選手が遠賀川で実践している「いつもの」釣りでした。使用ルアーは4.8inスイミーバレットの1/32ozネコリグ。ロッドはフェンウィック・エイシス60CLJ。同じルアー、同じロッドのセッティングを3セット用意し、ラインの太さを6、7、10Lbと使い分けていました。
遠賀川の競技エリアは全長約9kmと、50人規模の大会としては決して広いフィールドではなく、しかもストレートな地形ゆえに離れた位置にいる選手も目で追いやすくなっています。加えて、近年急速に進化を遂げた魚探などのエレクトロニクスなどから、もはや「秘密のピンスポット」はほぼ存在しないといっていいでしょう。
つまり、ルアーやリグ、そしてピンスポットに関しては、その多くを他選手に知られた状態で、沢村選手はこの試合に臨んでいたわけです。そのなかでもこれだけの成績を残せる秘密はどこにあるのでしょうか。
一部始終を目の当たりにした記者の感想は、「たとえ釣り方やルアー操作の細かいキモまですべてが公開されても、真似できるアングラーはいるのだろうか……」というもの。
ルアー操作に関する具体例を挙げると、まずスポットまでのボートポジションは遠くても5m。平均して3mほどで、バーチカルに誘うことも辞さない強気の超・ショートディスタンス。そして長いときはワンスポット(水中にあるひとつの石)を20分掛けてチェックし、ワンキャストに掛けた時間は平均1分弱。最長で4分! と、「丁寧」「執拗」というレベルでは言いあらわせないものでした。そして、10投以上のキャスト、10分以上の時間を掛けたワンスポットから実際にバスを釣ってしまうのです。
ルアーに加えるアクションは多彩で、ズル引き、高さを変化させるリフト&フォール、シェイク、ステイ、岩の角に引っ掛けての水中チョウチン、そしてリアクションをねらった跳ね上げなど多岐にわたります。
記者がとくに印象的だったのは、沢村選手がこの粘り強いアプローチを実践するために選んだのが、「あえてライブスコープを積まない」という選択だということでした。
「たしかにライブスコープはすごい。僕も持ってはいるんだよ。でも、遠賀では載せない。水中にバスが見えて、自分が投じたルアーに反応しないようすまで見えてしまったら、絶対に何分も何十投も粘れない。『なーんだ食わないじゃん』ってなっちゃって集中できない。自分の釣りにコンセントレートするため、あえて『見ない』んだよ」
表彰式で本人が「なにも特別なことはやってない」とコメントしていましたが、沢村選手のスペシャルな釣果の影には、ここでは書ききれないスペシャルな点がほかにもいくつもありました。が、残念ながら東京行きの飛行機の時間が迫っているので、ここで失礼いたします。詳細は次号の『Basser』にてこってりお届けします!
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2019/7/4