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編集部2019年5月14日

藤田京弥のサイトフィッシングは魔術でも秘技でもなかった。【TOP50七色ダム戦同船記】

Basser バス釣り

4月5~7日に奈良県・七色貯水池で行なわれた
JB TOP50開幕戦にて、
藤田京弥に3日間同船することができた。
藤田の突き抜けたサイト能力の理由が垣間見えた一戦だった。


4月5~7日に奈良県・七色貯水池で行なわれた
JB TOP50開幕戦にて、
藤田京弥に3日間同船することができた。
藤田の突き抜けたサイト能力の理由が垣間見えた一戦だった。


◆初日の同船レポートはこちら

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それでも、上流へ


初日のラストに「カバー」というキーワードを掴んだ藤田京弥。2日目は朝イチから徹底してカバーを撃つ展開も考えられたが……。スタート直後に出た言葉は意外なものだった。

「上流へ行きます」

「北山川は風が吹いちゃうと魚が見えない。サイトで釣るなら風がない朝です。今日新しく差してきている魚も絶対にいる。それに、カバーは午後から魚が入る気がします。朝から撃たなくてもOKでしょう。ただ、上流で粘りすぎないようにだけ気をつけます。今日は5尾釣りたい」

初日に同じエリアを釣っていた山岡計文がトップウエイト(6660g)を叩き出していたことも頭にあった。「山岡さんとは昨日何度もバッティングしましたが、どちらかといえば下流寄りのゾーンで会いましたよね。僕が前日まで最上流で捉えていた魚がやや下ってきていたのかもしれません」。

この日、藤田は上流エリアで前日と同じくサイトフィッシングを始めたが、さまざまな面で前日とは違うことを試していた。

たとえばエレキのスピードダイヤル。初日は5~8と比較的速いスピードで流していたのに対し、2日目は3~4と控えめにセッティングした。「昨日は魚が少ないから速めに操船しました。その結果、バスに気付かれて逃げられる機会が多かったように感じます」。6時56分にスタートフィッシングしたあと何度もダイヤルをイジっていた。対岸には三原直之。同じくサイトフィッシングを行なっている。

そしてタックルの微調整も行なっていた。一番変えてきたのはピクピクのタックル。初日はレインボーシャッドを合わせていたが、この日はライク3inにチェンジした。飛距離を優先してのセレクトだった。「昨日は距離が足りないことが多かった」と藤田。初日に55㎝クラスを反応させ、最も惜しいシーンを演出したセッティングをイジってきたわけである。

【藤田京弥のサイトフィッシング】2019年JB TOP50七色貯水池戦同船レポートDAY2: この日、藤田がねらったのは水面付近を泳ぐビッグバス。ルアーを投じて水面に浮かべたあとは身を低くしてバイトに備えた。食う直前にはスムーズにアワセが決まるようサオの位置や自身の姿勢を調節していたことも付け加えておこう

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2kg!! 3.5kg!! そして7kgへ


その微調整は開始早々に実った。7時26分、藤田は水面近くを泳ぐ50cmオーバーの影を捕捉。迷わずライク3inのタックルを手に取るとバスから離れたところへキャスト。「いった!」という小さな藤田の声からバスがルアーに近づいたことがわかった。記者もルアーを見たいが顔を振ると魚が逃げてしまう可能性もあるので動けない。ただ藤田の表情から状況を推し量るしかない。

このとき、藤田の頭には初日につかんだひとつのヒントがよぎっていた。それは「動かしたら逃げた」という事実。シェイクすることで微振動させるのが通常のピクピクだが、この日藤田は動かさない水面放置を試すことを心に決めていた。

「いけ! いけ! いけ……!」と小さく叫ぶ藤田。その直後、「ゴボオッ」とこの2日間一度も聞いたことがなかった大きな捕食音が聞こえた。バイト……なのか!?

【藤田京弥のサイトフィッシング】2019年JB TOP50七色貯水池戦同船レポートDAY2: 初日の苦しみ抜いた北山川上流域。しかし、この日は開始早々にファーストバイトが訪れた。ゴボッ!! とド派手に水面を割ったのは2kgクラス!!

昨日目撃したピクピクへのバイトは最後まで疑いが残った「ちゅぴ」というごく控えめなものだった。しかもルアーはバスの口の中には入っていない。そのシーンとのギャップに頭の回転がついていかない。いったい何が起こったのか……?

【藤田京弥のサイトフィッシング】2019年JB TOP50七色貯水池戦同船レポートDAY2: 河口湖で50cmアップを釣り慣れているだけあってライトライン(フロロカーボン3Lb)でもファイトは余裕。一切慌てない

藤田が掛けたバスは2kg近いキッカーだった。落ち着いたファイトで無事ネットイン。「やったあ。まだ7時30分」。そして続いて出た言葉は……。

「今日これを5本釣ったら間違いなく8kgはいく。優勝できますね」(ニッコリ)
ちなみに初日のウエイトは1752gで21位である。

【藤田京弥のサイトフィッシング】2019年JB TOP50七色貯水池戦同船レポートDAY2:
しかし、直後に顔を曇らせた。
「水面で動かさずにただ浮かせていたら食った。過去に河口湖の表層系の釣りで同じ経験をしたことがあります。昨日山岡さんがどんな釣りをしていたのか確かめる方法はないですけど、完全にこの釣りをしているような気がする。もう1日早く気づいていれば……。嬉しいけど悔しい」

【藤田京弥のサイトフィッシング】2019年JB TOP50七色貯水池戦同船レポートDAY2: 「ほら、丸呑みですよ。昨日あれだけ疑って甘噛みだったのに……」。こハリの掛かり方を見た藤田の発想は「初日リーダー・山岡の釣り」にまで及んだ。ひとつの出来事から拾う情報が多い

その後、ベンドのアウトサイドからインサイドへ。水深1m未満のシャローフラットが広がるエリアでまたしても45cmほどのバスを見つける。ライク3inのノーシンカーリグで同じアプローチを試すと……ゴボオッ!! 

ネットに入れたバスは1500g級!! 時刻はまだ8時前。しかし、ウエイトはすでに3500g(推定値)。藤田の言う「8kg」が現実的になってきた!

【藤田京弥のサイトフィッシング】2019年JB TOP50七色貯水池戦同船レポートDAY2: 【藤田京弥のサイトフィッシング】2019年JB TOP50七色貯水池戦同船レポートDAY2: 1尾目キャッチの直後に2尾目! 「完全に丸呑み! 山岡さんも完全にこれだ。ピクピクを試し始めたのが初日だったから細かいところまで煮詰められなかった。この魚は嬉しいけど……悔しい」

【藤田京弥のサイトフィッシング】2019年JB TOP50七色貯水池戦同船レポートDAY2: 藤田が2尾目をキャッチした北山川上流にあるベンドのインサイド。水深1m未満のシャローフラットが広がるエリア。この時点では知らなかったが、山岡も、三原もここをキーストレッチとしていた

「完全にこれだ。山岡さん」

「ひとまず今日7kgまでいければ優勝争いに絡める」

「でも悔しい……遅すぎた……」

【藤田京弥のサイトフィッシング】2019年JB TOP50七色貯水池戦同船レポートDAY2:
藤田はプラの時点では沈むムシ(RV-バグ1.5in)によるサイトに手ごたえを得ていた。そのいいイメージを持ったまま試合初日に臨んだが何かが変わっており不発。初日に表層のピクピクは試して実際にバスの反応は得たが(55cmクラスのミスバイトもあった)、ムシに時間を使ったぶん細部を最後まで詰めることはできなかった。2日目に藤田が変えたのは以下の4点。

◆初日はずっとつけていたフロントのライブスコープの電源をオフ。魚探なし

◆初日は効率重視でスピーディーな操船をしていたが、2日目はエレキの速度を抑えて慎重に操船した

◆飛距離が出るワーム(ライク3in)に変えることでより遠くからバスをねらった

◆初日は水面に浮かせたルアーをピクピクさせて誘ったが、2日目はノーアクションで放置した

いずれもフィッシングプレッシャーによりバスの警戒心が強まったことへの対応である。ひとつひとつを見ると些末なことのように思えるが、それらが積もり重なった結果は初日は一度もなかった本気食い2発。前日4時間かけて600g1尾をキャッチするのが精一杯だった男が開始1時間で2kgと1500gの口を簡単に大きく開けさせたのだ。

【藤田京弥のサイトフィッシング】2019年JB TOP50七色貯水池戦同船レポートDAY2: ライク3in+フォグショット#6。ワッキーセッティングのノーシンカーリグで使用

【藤田京弥のサイトフィッシング】2019年JB TOP50七色貯水池戦同船レポートDAY2: 止めると水面に浮く。このときノーアクションでただ置いておくことが最重要項目だった。シェイクするか否か……。たったこれだけのことであそこまで反応を変えるとは。ブラックバス、恐ろしい魚である。それに気付く藤田も恐ろしいが……

結果だけを見ると「やはり京弥のサイトには何か秘密がある」と思ってしまう。しかし、実はそこにあるのは魔法や秘技ではなく、観察と試行錯誤のひたすら地道な積み重ねだったのである。

振り返るとその起点となったのは初日の55cmクラスの甘噛み。この控えめなバイトで藤田は上流を見切るタイミングを逸して無駄に時間を使ってしまったと記者は思っていた。しかし藤田はこの地獄の入り口のようなワンシーンからしっかりとヒントを掴み取っており、ドラマの伏線に変えたのだ。

試合展開の話に戻ろう。2尾のキッカーをライブウエルに入れた藤田はふたたび最上流域へ。初日は一度もまともなバイトをもらえなかったゾーンだ。しかし藤田の到達したパターンは芯を食っていた。9時には1kg弱が、9時21分には2kg、いや3kg級の55cmアップが水面のワームを襲ったのだ。

誤算だったのはそのどちらもがすっぽ抜けに終わってしまったこと。バスの食いが甘いのではなく、アワセの際に口の中からワームが飛び出してくるのが見えたという。

「なんで……。でも食わせ方がより見えてきた。岸ギリギリに置いとくと食べやすい。日陰もキーワードかも」

しかしこのあと何度かチャンスはあるがフックアップには至らない。10時20分、風が吹き始め水面が見えにくくなったタイミングで藤田は下流へ向かった。もうひとつの川筋、西ノ川のサイトにもチャンスがあるかもしれないと考えたからだ。だが西ノ川ではバイトを得ることはできず2尾のまま帰着。

2日目のウエイトは3440g(2尾)。単日6位の好成績だ。
藤田の予選順位(重量順)は10位。初日21位から大幅に順位を上げて2日目を終えた。
予選のワン・ツーは山岡計文と三原直之。
そう、藤田とまったく同じエリアで同じくサイトフィッシングを行なっていた2名による優勝争いとなったのだ。

【藤田京弥のサイトフィッシング】2019年JB TOP50七色貯水池戦同船レポートDAY2: 【藤田京弥のサイトフィッシング】2019年JB TOP50七色貯水池戦同船レポートDAY2: 予選を終えてワン・ツーの山岡と三原

藤田と山岡の差は7243g。普通に考えれば絶対にひっくり返せない数字である。しかし、「もしかして」と思わせる出来事が3日目に待っていた。(続く)

【藤田京弥のサイトフィッシング】2019年JB TOP50七色貯水池戦同船レポートDAY2: 2日目を終えて10位は好成績といっていい。しかし、後片付け時の藤田の表情は苦かった。「嬉しいけど悔しい」。この言葉を藤田は何度も繰り返した

【藤田京弥のサイトフィッシング】2019年JB TOP50七色貯水池戦同船レポートDAY2: この日2尾を釣ったロッドはプロトタイプのスピニングロッド。軽量ルアーをロングキャストできるモデルだ

【藤田京弥のサイトフィッシング】2019年JB TOP50七色貯水池戦同船レポートDAY2: 水面近くを泳ぐ魚へはライク3.5inを投じたが、ボトム付近をクルーズするバスにはRV-バグ1.5inやストレート系ソフトベイトのノーシンカーリグのフォール&トゥイッチを試した

Day2 RESULT
3440g 2尾 予選10位(重量順)

【藤田京弥のサイトフィッシング】2019年JB TOP50七色貯水池戦同船レポートDAY2:
◆全体の成績はこちら
https://www.jbnbc.jp/_JB2019/view_result.php?t_id=10010&page=dayy


2019/5/14

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