4月5~7日に奈良県・七色貯水池で行なわれた
JB TOP50開幕戦にて、
藤田京弥に3日間同船することができた。
藤田の突き抜けたサイト能力の理由が垣間見えた一戦だった。
Day3:日本で最も過酷なサイト・ストレート
サイト・ビー=写真と文 4月5~7日に奈良県・七色貯水池で行なわれたJB TOP50開幕戦にて、
藤田京弥に3日間同船することができた。
藤田の突き抜けたサイト能力の理由が垣間見えた一戦だった。
◆初日の同船レポートはこちら
◆2日目の同船レポートはこちら
最終日はサイトオンリー
「今日はサイトオンリー」
決勝の朝、藤田はそう言うと上流へ向かった。先行する暫定首位の山岡計文、2位の三原直之も上流へバウを向けている。
「昨日から50cm減水しているのが気になるんですけど、山岡さんが上を見にくるんならバスはいるってことなのかな」
山岡は七色貯水池のほとりで生まれ育ったアングラー。その山岡が減水を承知の上で上流に向かったという情報を藤田は重くとらえた。
藤田が船を止めたのは2日目に2尾を釣ったベンド部のインサイド。水深1m未満のシャローフラットが広がるエリアだ。この場所は上流側のフラットは狭く、下流側は極めて広いという特徴をもつ。「下流側はフラットが広すぎてバスが散りやすいからパスします」と藤田は2日目に言っていた。
最終日の朝、藤田が向かったエリアには三原と山岡が浮いていた。そう、藤田も釣っていたこのインサイドこそが核心部だったのだ
藤田が釣りを始めるとその下流側には驚きの景色が広がっていた。藤田の50m下流に三原が、その50m下流に山岡が陣取ったのだ。435g差で優勝を競う予選ワンツーがサイド・バイ・サイドで戦う最終日の幕開けとなった。朝イチに入るということはおそらくこのストレッチが本命なのだろう。藤田は初日からこのエリアを何度も流しているが、山岡と三原とは時間帯がズレていたため、2人がこの場所をここまで重要視していることはこの瞬間まで知らなかった。日本屈指のサイトフィッシャーマンが100mのストレートに並ぶという、選手にとっても、七色のバスにとっても目を逸らしたくなる過酷な現実がそこにはあった。
もちろん藤田は一歩も引くようすはない。「はは。面白いですね」とニッコリ笑うようすを見て強心臓ぶりを改めて感じた。
三原、山岡とは試合中に何度もバッティングした。山岡が朝イチに1500g級を釣ったのを三原が見たり、三原が3kg級をバラすのを山岡が目撃したり……。このふたりにとっては心臓に悪すぎる最終日だった
またしてもタックルを微調節
この日、藤田はまたしてもノーシンカーリグのタックルに微調節を加えてきていた。
まずはライク3inに合わせるフックを変更。予選ではフォグショット#6だったがこれを#5に変更。これは2日目に2尾を釣ったあとに起きた2度のすっぽ抜けに対応したもの。フッキングの瞬間、1kg弱と3kgのバスの口内からソフトベイトが出てくる光景を見たことで何かを変える必要があると感じたという。一流は「不運」では済まさない。
また、フロロカーボン3Lbのタックルに加え、PE0.4号+フロロカーボン1.5号というセッティングも用意してきた。「これは飛距離重視。もしかしたら、と思って用意してみました。今日はフロロのタックルと両方試してみます」。
わずか20分で3kg超
ファーストキャストからしばらくはバイトに恵まれなかった。結局山岡と三原のそばでは釣ることができず最上流エリアに。予選を終え選手が30名に絞られたこともあり、この日は貸し切り状態だった。つまり、北山川で勝負していた選手のほとんどはその難易度の高さゆえ釣果に恵まれなかったということでもある。風はなく水中は丸見え。好きなだけ見えバスと勝負できる最高の環境が整っていた。
この日の主戦場は北山川最上流。クリアで浅く難易度は最高峰。しかしこの日の藤田は仕上がっていた
バスを見つけてキャストをしたあとは身を低くすることが多かったが、時には意外なほど速くエレキを踏んで船を動かすこともあった。これは水面のラインにU字を描かせるための工夫。バスがルアーを見た際、その視線の先に船が入らないコースを創出するための知恵だ
そしてこのエリアで面白いことが起こった。8時までは見えるバスが少なく、またルアーを投げても見向きもしない状況。「8kgどころかノーフィッシュかも」と藤田。TOP50の最終日は3日間のプレッシャーが蓄積するため難易度が最高レベルに達することが多い。今回のようなサイト場ではなおさらだ。逆に言えばだからこそ逆転への可能性が芽生えるともいえるが……。
にもかかわらず、8時をすぎたあたりから急にルアーへの反応が上向き始めたのだ。「時合かもしれない。みんなガンガン泳いでる!」。
その読みは的中。まず食ってきたのは2kg。結局食ってきたのは2日目と同じフロロカーボン3Lbのタックルだった。この魚は川の端から端まで走り回って抵抗したが、藤田はエレキワークで追走。
2kgアップに走られるが落ち着いて追走
岩の隙間に入り込もうとするようすを見るとやや強引にロッドを曲げて引きずり出してネットイン。
「今回使っているレッドスプール、お世辞抜きですごく強いんですよ。3Lbを使っているんですけど、3.5Lbの感覚でファイトできる。今みたいなシーンでそれが生きますよね」
1尾目は2kg超!
残念ながら記者には3Lbと3.5Lbの0.5Lbの違いを感じることができない。
いや、私だけでなく、多くのアングラーは「0.5Lbの感覚」を持っていないと思うのだが……。TOP50クラスだと普通なのか? それともそのなかでも藤田は特殊なのか?
溶岩が多い河口湖で試合中に何尾もの50cmクラスを釣ってきている藤田だからこそ持てる感覚であり、ファイト技術なのではないだろうか……。
1尾目をライブウエルに入れたあと、「3Lbなのに3.5Lbの感覚でファイトできる」という言葉が飛び出した。緊迫のファイト中に0.5Lbの違いがわかる男。それが藤田京弥だ
そのわずか10分後に今度は1kgアップが口を使った。これも難なくランディング。
たったの20分で3kgを余裕で超えた。これは上位陣が崩れれば、もしかして……。
そんな想像を掻き立てる展開だ。
すぐに釣った2尾目も1kgアップ。これもライク3inで釣った
もしかしたらもしかするかもしれない……。そう思わせる連発劇だった
しかしこのあと追加はならなかった。藤田が読んだ「時合」は確かに存在していたのか、その後はバイトがあってもミスに終わったり、見切られたりするシーンが続出。逆に言えば、藤田はごく短いチャンスを最大限に生かしたともいえる。
最終日のウエイトは3266g。藤田の2日目と3日目のウエイトを合計すると6706g。たった4尾でこの数字である。1尾平均は1500gを超えた。
デビューイヤーの2018年、「天才」や「怪物」などと呼ばれ恐れられた超大型ルーキーの藤田。そのサイトフィッシングにはなにか秘密があるに違いないと囁かれた。しかし、初日の辛い時間を見てわかったことはそんなものはないという重い事実。だが、小さなことをコツコツと積み重ねた結果、ルアーに命が宿る瞬間は確かにあるのだということも知ることができた。そうでなければ七色貯水池の50cmアップがあそこまで大きく口を開けることはない。
この七色貯水池戦、藤田の最終順位は6位。
どこに出しても恥ずかしくない好成績だが、藤田の顔は晴れない。
パターンに気付くことが遅れたこと、
そして自分が北山川を離れた間に三原と山岡が釣っていたという事実、
そして同じエリアでサイトで釣り負けたという結果……。
さまざまなことが重くのしかかっていたのだろう。
優勝は三原。藤田と同じエリアでしかも釣り方はサイトフィッシング。サイト以外の釣りをまったく行わなかった覚悟と、食わせ方のバリエーションを複数持っていたことが差につながったと考えられる。三原の釣りの詳細は4月26日発売のBasserでも紹介している
表彰式後、藤田は迷わず湖上に出て行った。復習のためである。
そして、マスターズ三瀬谷戦の前にわずかな隙を縫って
ふたたび七色貯水池を訪れたという。
この向上心こそ、藤田の強さの一番の理由かもしれない。
2年目にしてTOP50のAOYを獲得する可能性は……充分にある。(おわり)
Day3 RESULT
3266g 2尾 単日4位
最終6位
◆全体の成績はこちら
https://www.jbnbc.jp/_JB2019/view_result.php?t_id=10010&page=result
2019/5/14
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