そういえば、池原貯水池でワカサギパターンって聞いたことがないな……、と思った。 池原にワカサギがいることがそもそもあまり知られていないが、釣って食べたことがあるアングラーを記者は知っている。 日本を代表するビッグリザーバー・池原貯水池に山岡計文さんを訪ねた。
なにもない沖の中層で60cmアップがヒット。ねらいの真意は?
写真と文=編集部
この記事は『Basser』2021年1月ワカサギ特集号に掲載したものを再編集しています。Basserのバックナンバーは定期購読をお申し込みいただくとデジタル版バックナンバーが4年分以上読み放題! 詳しくはこちらをどうぞ! そういえば、池原貯水池でワカサギパターンって聞いたことがないな……、と思った。
池原にワカサギがいることがそもそもあまり知られていないが、釣って食べたことがあるアングラーを記者は知っている。
日本を代表するビッグリザーバー・池原貯水池に山岡計文さんを訪ねた。
つかみどころがない池原ダムのベイトフィッシュ
魚影めがけてオーバーライド3/16 oz(O.S.P)を投下! イレグイになったのは20~30cmの……、ウグイ(笑)
B オーバーライド3/16oz(O.S.P)をシャクると20~30cmのウグイ(大)も入れ掛かりになりました。
山岡 そうなんですよ。でかいウグイも異常に多くて驚きました。釣ったウグイ(小)と(大)の中間のサイズもいますし、極小や特大も同時に池原に存在してるわけです。もうありとあらゆるサイズのウグイが大量にいる。バスに食われてることは間違いないです。たとえば、ウグイ(大)や特大がいることが、池原でバラム300が効く理由のひとつになっています。
B なるほどォ。池原のベイトフィッシュといえばアユが有名ですよね。そのアユのサイズも大小さまざまです。
山岡 今日は、生まれたてのが、煙が漂うみたいに表層を泳いでましたね。あれも、春になると5cmくらいに育ってバスのベイトフィッシュになります。秋の落ちアユシーズンになると25cmくらいになって、そのパターンもあります。
B さまざまなサイズのアユパターンがあるけれど、「季節」という法則性はあるぞ、と。
山岡 そうなんですよ。ところがウグイのサイズには季節が関係ない。しかも今日釣ってみた感じだと、エリアやレンジにも法則性がない。
同じ時刻の同じエリアの水面直下にも、水深9~12mに映るのと同じサイズのウグイが群れで泳いでいる。群れごとにサイズもバラバラ(5~30cm)。「この日がたまたまそうだった」と思いたいくらい掴みどころがない……
B 同じ時間帯の同じエリアで、バンク際のシャローでも、沖の表層からディープでも、どこにでも5~30cmのウグイの群れがいました。釣ったから間違いない。
山岡 「同じサイズで群れる」、そこから先の法則性がない。ベイトフィッシュとして考えた場合、とくにやっかいだと感じたのが、どのサイズの群れもバンクやボトムにまったく執着していないことです。3年くらい前に『Basser』で「中層」を特集したとき(2018年1月号/No.313)、僕も原稿を書いたじゃないですか。
山岡さんをして、「ベイトフィッシュとして極めてやっかい」と言わしめたウグイ。11月5日(木曜)の池原で釣ってみてわかったのは「どのサイズの群れがどこにいるのか、法則性がまるでない」ということだった
B 要約すると、「9割9分のバスが中層に浮いていて、その多くが上を意識してる。だから自分は何をするにしても、カバー撃ちでも、中層を釣る。ボトムを使うのは、ガイドのお客さんに集中力を保ってもらうためだけ」という内容でした。
山岡 中層の釣りってノー感じなことが多いので、釣れたりチェイスが見えたりしないと「これでイイのかなァ……?」って自信と集中力がなくなりがち。なので、中層の釣りに不慣れなお客さんをガイドするときは、シンカーでボトムの情報を拾う釣りをほどよく混ぜるんです……、混ぜていたんです。
B 過去形なんですか?
山岡 はい。池原でボトムの釣りから得られるのが、本当に“情報だけ”になってしまったので。あの原稿を書いた当時(2017年11月)は、ボトムでもポロポロ釣れてくれたんですよ。サイズも数も中層の釣りが優勢でしたが、ボトムでも釣果が得られていたから、お客さんにやってもらえた。
岩がちなエリアで紅サシをボトムにはわせるとヌマチチブがイレグイ! 水深1m前後のシャローにわらわらいるのはウグイなみにイージー。10m以深へテキトーに仕掛けを沈めても釣れる。どんだけいるんだ……
ウグイ(小)が群れるシャローではバス(小)も釣れたが、ウグイやチチブに比べればその数は圧倒的に少ない
B 今はもうそうじゃないと。
山岡 はい。釣果がますます中層に偏って、さらに釣れにくくなった。その原因を僕は「バスの数が減ったのかな?」と思っていたんです。けど、ここからは推測なんですけど、少なくともいま僕は、池原での自分の釣りを見直さなきゃいけないかも、と思ってます。
B 推測だけれど、核心をついてる感覚があるわけですね。
山岡 バスの数は、増えてはいないけれど、減ってもいないのかもしれません。釣れにくくなったのは、ウグイが増えたせいなんじゃないかと。ウグイのいるポジションが沖すぎることが、最近の池原が難しくなっている原因なのかもしれない。
B ウグイが増えて池原のバスの行動パターンが変わった?
大小のウグイが群れる、緩傾斜やフラット(水深5~8m)で20~25 cmのバスをHP3Dワッキーで連発
HP3Dワッキー3.7in(O.S.P)
+インフィニ#1(リューギ)
+DSデルタ1.8g(リューギ)
ネコリグ専用のイメージが強いHP3Dワッキーだが、山岡さんはダウンショットリグでも使用する。「バスにはベイトのプチ群れに見えるのかな? よく釣れます」
山岡 今日の取材がそれを疑うキッカケになりました。あれだけウグイがいて、そのウグイが主食だとしたら、バスもそれに引っ張られて、完全に「沖の中層」が生活のメインステージになっているのかもしれません。バスアングラーは岸を向いてキャストするのが鉄則じゃないですか。なのに、バスがその背後(沖)にいる時間が長くなった。アングラーが投じるルアーとリンクする時間が短くなった。そういうことなんじゃないかと。
B シンプルなだけにコワい仮説ですね。バスがいないところへルアーを投げているから釣れない、と。今日、白川筋でも前鬼筋でも、沖の意味わかんないとこでたまにバゴッ! とかボフゥ! とかやってたじゃないですか。あれ、バスですか?
山岡 まず間違いなくバスですね。食われていたのはウグイでしょう。あのポジションにいるバスは極めて手強い。ウグイに支配されていると思いたくないですね(苦笑)。でも、認識を変えないといけないのかもしれません。
―中略―
B 「いるかもわからないワカサギを釣ってください」って、無茶ぶりしたなァとは思っていた(そして釣れなかった)ので、山岡さんにも発見のある取材になって、ホッとしました。
山岡 まァ、自分じゃ絶対にあんなことやりませんからね。「ベイトフィッシュを釣ってみる」というのは実はすごく重要なのかもしれないですね。
ウグイ食いのバスをねらった秘策
前段の「―中略―」のところで、インタビュー中に鳥肌が立った。そこに触れるために、3時間ほど巻き戻して湖上へ。
池原貯水池を囲む山々の稜線に、傾きだした太陽の下端がかかろうとしていた15時30分、山岡さんは最後に釣りをするエリアに白川・白川又川インターセクションの対岸を選んだ。そこは午前中に大小のウグイと小型のバスを連発した場所だったのだが、7時間ぶりに入り直したこのとき、山岡さんはそのスポットのだいぶ沖の下流でエンジンを停止させた。ねらうと言っていた、バンク際にある立ち木と崩落跡までの距離は、目測100m以上。そこで山岡さんが手にしたのはホバスト用のタックルだった。
フルキャストしたとしても、立ち木にも崩落跡にもまったく届かない。それどころか、停船位置から最も近いバンクに向かって投げたとしても……。その1投目、軽量なホバリグはボートとバンクの中間点までしか飛ばなかった。ホバリグをシェイクする山岡さんの背後(さらに沖。川筋のほぼど真ん中)からバスの捕食音が聞こえて記者はそちらに気を取られ、かん高く鳴り響くドラグの音で船内に意識を引き戻された。
山岡さんは“この日の取材中に気づいたこと”をさっそく試したのだった。中途半端なボートポジションも、まるで足りない飛距離も、理解が及ばなかった記者の目にそう映っただけだったのだ。
横っ走りをいなして止めてボート際まで寄せると、今度は真下へ突進!
山岡計文の絶叫&反響。ファイトタイムはジャスト3 分!! 意外なことに、これが取材では自身初のロクマルだそうだ(ド忘れの疑いアリ?)
池原貯水池のロクマル(60.5cm )
山岡さんはこの取材の4日前、2020年11月1日(日曜)にも、七色貯水池で開催されたNBCチャプター奈良でロクマル(61cm・3700g)を釣って優勝している。いずれのヒットルアーもスーパーホバリングフィッシュ3inのホバリグ
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