2012年のJB TOP50さめうら湖戦。優勝した山岡計文さんのメインパターンはミッドストローリングだったが、同船取材した記者は水面ピクピクに次々とバスが沸いてくる衝撃的なシーンを目にした。「水面はバスにとって特別な場所」という山岡さんに、夏の水面をバスのバイトで弾けさせる方法を聞いた。
先入観を捨てることがトップウォーターで釣るためのコツ
Basser編集部=写真と文
2012年のJB TOP50さめうら湖戦。優勝した山岡計文さんのメインパターンはミッドストローリングだったが、同船取材した記者は水面ピクピクに次々とバスが沸いてくる衝撃的なシーンを目にした。「水面はバスにとって特別な場所」という山岡さんに、夏の水面をバスのバイトで弾けさせる方法を聞いた。さめうら湖の異空間
山岡計文さんは、七色貯水池と池原貯水池の至近に住み、これらのフィールドを20年以上に渡って釣り込んできたリザーバー攻略のスペシャリストだ。
七色・池原に精通する手練としてすでに全国区の知名度をもっていた山岡さんが、単なるスーパーロコの枠に収まらないアングラーであることが実証されたのは2012年の4月、高知県さめうら湖で開催されたJB TOP 50を勝ったときのことだろう。そこをホームや準ホームとする選手もいるなかで、山岡さんの勝因は、ごく簡単に書けば「七色・池原とよく似ているから得意」というものだった。圧巻である。
その試合の山岡さんのウイニングパターンはサイトでのミッドストローリング、決定打となったのはスイムベイトだった。が、キャッチには繋がらなかったものの、当初予定していたパターンはワッキースタイル・ノーシンカーリグの水面シェイク、通称「ピクピク」であり、そのトップウォーターメソッドに次々とバスが沸いてくる光景は、同船取材した記者にとって非常に刺激的なものだった。その場面だけを切り取って見れば、試合中であることも、戦前に聞こえてきた「1尾を釣ることさえ難しい」という声も忘れてしまいそうだった。
山岡計文さんが試合で使用した「ピクピク」用のワッキーリグ
「トップは、バスにとって特別な場所にルアーがある釣りですからね。それに今は深追いしませんけど、ピクピクって、使うワームを変えるとバスの反応も劇的に変わるおもしろい釣りなんですよ」
試合中に聞いた山岡さんのこの言葉が、当取材のキッカケである。
「アングラー有利のゾーン」を活かす
「水面・イコール・バスにとって特別な場所」と山岡さんは言う。それはなぜか。
「水面と水面直下は、ルアーに対してバスがバカになる(※警戒心が薄れる。捕食だけに意識が向くなどの意)ゾーンなんです。バスはもともと自分より上にいるエサを食うのが得意です。そういう魚は水面近くにエサがいると、たいして食い気がなくても本能的に捕食のスイッチが入りやすい。水面に追い詰めた感じがして、簡単に食えるときに食っとかな! ってなるんでしょうね。ほかの何が釣れなくても、トップだけ釣れることがあるのはそういう理由だと思います」
「池原の話をすれば、真冬にトップがハマることもありますよ。アングラーの立場からすると、寒くてバスの活性も低いはずなのによう出てくるな〜って思いがちですけど、バスからしてみたら、寒くて動きづらくても食わないと死んでしまう。だからこそ簡単に食えそうなゾーンにいるルアーに反応してしまうんだと思います」
しかも、見上げる水面は逆光になるため、バスにルアーのディティールを観察されにくい。ラインの存在に関しても同様、バスにプレッシャーが掛かったときにもっともバイトの妨げになるとされるそれも、逆光に溶かしてしまうことができる。
「バスの本能をコチョコチョッとくすぐれて、見られて都合が悪いモノは隠してくれるわけですから、トップってアングラー有利のゾーンだと思います。今回の実釣取材で再確認しましたけど、先入観を捨てて、何も考えずにトップから入る。実はそれがトップウォーターを活かし、釣るためのコツですね」
「競技中のハイプレッシャー下でバスがトップに反応するわけがない」「真冬の低水温下でトップがハマるはずがない」。これらはアングラーの間違った先入観であり、トップウォーターで釣る楽しみを(ときには釣果そのものも)遠ざけてしまう。
タフだからこそ、「バスが食いやすい場所」にルアーを通す。その場所の候補のひとつとして常にトップウォーターを意識したい。難しいことは何もないはずだ。「トップを投げる」、ただそれだけで、アングラー有利のゲームが始まるのだから。
キャスティングスキルと基本的なルアーセレクト
「トップウォーターの釣りで、ルアー操作に関してとくに難しいことはありません」と山岡さんは言う。
「まず僕が使うハードベイトのトップは、プロップペッパーとノッキングペッパーという巻きモノがメインです。巻きモノですから、そのまんまですけど巻くだけです(笑)。池原はルアーに対して素直に反応するバスがまだ多くて、七色のバスはちょっとスレ気味ですけど、どちらのフィールドでもトップはこのふたつをメインに、ガイドでも試合でも使っています」
プロップペッパー
ノッキングペッパー
「ロッドワークで操作する物ではコーリングペッパーとスーパースプークも欠かせませんが、コーリングペッパーはボコン!と音が出せればOKですし、スーパースプークはゆっくり大きくドッグウォークさせることができれば釣れます。強いて言えば、状況やシチュエーションに合ったルアーセレクト(※第2回に掲載)をするくらいで特殊なことはしていません」
この山岡さんの言葉に謙遜やウソはない。実際、七色貯水池で行なった当取材で山岡さんは見事な釣果をあげたが、「ハードベイトのルアー操作」だけに目を向ければ、難しいと感じることはひとつもなかった。ただし、コレは自分には無理!と思うこともあった。それはキャストだ。
リザーバーといえば避けられないのがオーバーハングの下や隙間へのキャスト。山岡さんは、ルアーのウエイトをしっかりブランクに乗せて投げるために、気持ち軟らかめのモデルを好んで使う。スイングスピードを下げられるので、アキュラシーが上がる
「たしかにキャスティングスキルは釣果に直結します。ぶっちゃけオーバーハングが多い釣り場に関しては、トップに限らずあそこに投げてこう引けたら釣れる、ということが多いです。でも、別にミラクルキャストは要りません。慣れと、しっかりルアーのウエイトが乗せられる、気持ち軟らかめのロッドを使うことです」
トップにはやや不利な取材向きの当日の状況
取材当日の七色貯水池は、その直前に降った大雨と、上流に位置する池原貯水池からの放水の影響で、大部分のエリアにキツい濁りが生じている状況だった。トップウォーターは当然、ルアーのレンジを下げることでバスの状態にアジャストすることはできない。バスのほうから見つけて、浮上してきてくれなければ釣れないトップウォータールアーにとって、水中の視界を妨げる濁りは大きな敵だ。
ご覧のとおり、普段はクリアな七色が、取材当日は粘土色に濁っていた。しかし、バスのトップへの反応は良好
「先入観に囚われずに……って自分で言っておいてなんですけど、こういう趣旨の取材じゃなかったら、ちょっとトップウォーターは投げない状況ですね(苦笑)。でも、不幸中の幸いというか、僕が好きなプロップペッパーとノッキングペッパーは、サウンドでもアピールするルアーなので、バスにまったく気づかれないということはないと思います」
バスがルアーを認識する要素は、おもに視覚と側線(ヒトでいう聴覚)のふたつ。そのうちのひとつが機能するか怪しい状況での実釣だったが、結果はご覧のとおり。先に記したとおり、釣った山岡さん自身が「今回の実釣取材で再確認した」と言うほどの釣果だった。
まずはプロップペッパーで45㎝!
透明度の低さから、スピードが持ち味のノッキングペッパーはさすがに厳しいかと思われたが、そんな会話をしているときにグッドコンディションの40㎝アップが出た
プロップペッパーがゆっくり引けるバズベイトなら、こちらは速引き対応のビッグバドという印象
「おもにエサの存在が重要なんですけど、とにかくバスの意識が上に向いてさえいればトップは有効です。その状態になっていれば、濁っていても、音で知らせてあげればバスは水面を割って出ます。今日は正直、キツいかな〜と思いました。でも、終わってみれば、ここまで良型で揃うのは七色では珍しい。僕にも悪い先入観があったってことですね。トップ以外でこの釣果は出なかったと思います。一見ダメそうで、でも今日はトップの日でした」
山岡計文さんの「ピクピク」での釣果と使用法、ワームの使い分けは第3、4回で紹介予定です。
この記事はBasser2012年9月号でも読むことができます。