春の新潟は尺アジが乱舞する!
春の新潟は尺アジが乱舞する!
写真◎猪俣敬太、小林弘之
文◎猪俣敬太
桜前線の便りとともに
雪解けが進み、山肌が顔を出し、桜前線の便りとともに最盛期を迎えるのが新潟のボートアジングである。舞台となるのは新潟東港の港湾エリア。新潟東港は昭和40年代に開港され、日本海側最大級のコンテナターミナルである。海外の貨物船が往来し、貿易の拠点としても重要な役割を担う。
ボートからのアジングに一早く注目し、エリアとパターンを開拓したのが、今回お世話になる「フィッシングガイド・ジャパンシー」の木村和王船長だ。遡ること10年以上前、秋のボートシーバスの時に、常夜灯周辺で無数に繰り返されるライズを発見し、ねらってみると尺クラスのアジが多数釣れた。以来アジング専門の出船やリレー船のチャーターをするようになり、魅了される釣り人が増えている。
出船当初はショアの釣りカテゴリーに「アジング」と言うフレーズが世に出始めた頃である。新鮮さを感じる専用タックルを手に取り、アングラーも増え始めていた。新潟県に限ってはエリアトラウトのブームとも重なり、繊細でテクニカルな釣趣が話題を呼んで、アジング人気をさらに加速させていく。
私自身もこの頃にアジングを始め、エステルラインにオープンゲイブのジグヘッド、先調子の高感度ロッドを揃えた。手にするタックルがすべて初めてで未知の釣りに深くハマり込んでいった記憶がある。その後は港湾部の釣り場が厳しく規制され、立ち入り禁止エリアが増えた。ポイントが少なくなったことでアジングから離れてしまうのだが、ボートアジングの人気と共に熱が再燃して現在は主にボートから楽しんでいる。
今では多数の遊漁船が出船するほど人気を集めるボートアジングの魅力は、どこにあるのか? 一番の理由はショアのタックルをそのまま流用できることではないかと思う。オフショアの釣りの多くは専用タックルが存在し、一歩踏み出すには敷居が高いと感じる人も少なくない。だがショアでアジングを楽しむアングラーならボートは誰でもエントリー可能だ。使用するジグヘッドも1~3g 。これもオフショア専用のモノを用意することはないだろう。
3~5月の新潟東港のボートアジングは産卵を意識した回遊性の個体、ベイトを求めて港湾部に入る大型をねらえる。この大型アジの群れは水温が高まると沖に出ていく。例年5月いっぱいが好機となる。新潟東港は全長4㎞に及ぶ長大な防波堤に囲まれているため、大河川からの雪代の影響を受けにくく水温が安定している。安定といっても水温が1桁になることもあるが、低水温でも釣果にはほとんど影響がない。出船できれば条件に関係なく、好釣果が期待できる。
対して秋は常夜灯に群れる個体をねらう。沖から入って来るタイミングは10月下旬~12月初旬までとなり、春に比べ若干サイズが落ちる。目の前でライズするアジに対して多彩な引き出しを駆使して挑むことになり、アングラーの経験値やテクニックが試される。エリアトラウトに近い感覚の釣りでもあり、冬を感じる新潟県の寒さに負けず、晩秋がホットになる時期だ
短レングスロッドによる繊細操作
4月初旬、フィッシングガイド・ジャパンシーに乗船。この船は木村船長と小松副船長の2人態勢で出船し、夜便のボートアジングは小松副船長が精通している。そこで木村船長にはアングラーとして実釣に参加していただいた。港を出て10分程度で、波の穏やかな港湾部のポイントに到着する。船酔いの心配がある人や船に慣れていないアングラーでも安心のポイントである。
まずは木村船長の釣りから追っていく。使用ロッドはヤマガブランクス「ブルーカレント」。特定の魚種に特化することなく、ライトゲームのカテゴリーとしてリリースされ、ヤマガブランクスの主軸を担うシリーズである。その中で今回は「ブルーカレントⅢ」の53と510の2本を使用した。よく飛んで強くて軽いというメーカーコンセプトを、短レングスに凝縮させたモデルである。プレジャーボートの遊漁船では、このクラスのロッドが使いやすい。
18時の出船から短時間でポイントに到着した。最初はボトムの地形変化に付いているアジを、時間を掛けたフォールで誘う。使用するジグヘッドは3g。キャストして着底を確認してからの誘い→フォール→ステイの繰り返しになるのだが、木村船長は特にステイの間が重要と話す。この繊細な操作、アジとの駆け引きが釣り人を熱くさせる。小さなバイトに感覚を研ぎ澄ますのだ。
船の灯りに群れが付くまではゲストフィッシュが遊んでくれる。メバルを中心にカサゴが混じり、時合が到来するまではライトゲームの好敵手との時間を堪能できる。木村船長にアジがヒットしたのは、開始から約1時間後。日によって時間に差があるようだが、この日は少しスロースタートであった。
時間が経つにつれて魚探反応が変わる。底に群れていたアジのレンジが徐々に上がり始めたのだ。このタイミングに合わせて、木村船長はジグヘッドの重さを替えながら、最適なフォールスピードを探している。時合に突入すると1.5gが最適と判断して数を伸ばしていく。
「ワームのカラーより、フォールのスピードが重要」
下船時に木村船長はそう語った。
タックルの使い分けも楽しい!
私の使用ロッドは「ブルーカレントTZ/NANO」シリーズ「610Plug Quickness( ※ 以下6 1 0)」と「73PlugSeamless(※以下73)」。この2機種はアジ・メバルをターゲットとしたプラッギング専用としてリリースされている。プラグに特化しているが、ジグ単との相性もよい。ショアの釣りよりも数が出てバイトも多いため、その性能を体感すべく持ち込んでみた。
610にエステルライン0.35号からスタート。3gのジグヘッドをフォールさせていくのだが、プラグにアクションをつけやすい設計のため、ジグ単の操作性も良好である。軽いトゥイッチから長めのフォールとステイを繰り返す。レングスも気にならず、適度な張りがあるため高感度で操作性もよい。ファーストフィッシュはメバル。本命のアジがヒットしたのは、木村船長と同じタイミングで、回遊した群れが船の灯りに付いた瞬間だった。エステルラインを使用しているためドラグの設定には気を使うが、しっかり曲がり込む設計は、ラインブレイクを防ぐことにも繋がる。これは73にもいえることである。とはえいえ尺上の大型アジとのファイトは中々の緊張感であった
610がメインで73の場面は少なかったが、巻きのアクションに反応する時間帯では73に持ち替え、アジの吸い込みを乗せていくパターンも有効だった。加えて風が強い時のラインメンディングや釣り座がミヨシの場面では少し長めのレングスが有効になる。アジとの繊細な駆け引きに対応するには複数のタックルがあると便利。ボートの釣りはそれも可能でショアアングラーのスキルアップにも一役買ってくれるだろう。
船上に躍り上がったアジは30~38cm。体高があり身が厚い個体の食味は最高である。
最後に新潟県の釣り事情に触れながらこの稿を閉じたいと思う。思い出の釣り場が開発事業により姿を消したり、愛する釣り場が立ち入り禁止になったり、未来に残したい釣り場が乏しいのが新潟の釣り事情だ。港湾部で釣りができるのは有料運営されている防波堤が数ヵ所あるのみ。木村船長は「ショアの釣り場がないからこそ、ボートで自由に楽しんで欲しい」と語る。出船時間が調整できるのもチャーターボートならでは。複数の魚種を楽しみたければリレー船にも対応してくれる。気の合う仲間と貸し切りも可能で、より深く自由な釣りを楽しむことができる。
新潟県に限らずボートアジングは、日本各地のエリアで行なわれている。地域によってパターンや釣り方に違いはあるだろうが、アジを釣る、釣りを楽しむことは共通事項だ。ショアタックルがそのまま沖で使える新潟東港のボートアジング。その魅力が少しでも読者の皆様に伝われば幸いである。
※このページは『つり人 2023年6月号』を再編集したものです。
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