レンジを刻もう
レンジを刻もう
写真と文◎編集部
急増するボートガイド
東京湾の沖合はアジの楽園だ。中でも横須賀、横浜、川崎の神奈川県側は周年アジを釣りものに掲げる船宿がたくさんあり、東京近郊の人気アジングエリアのひとつ。ただオカッパリでアジが釣れるポイントが限られ、近年はボートアジングを楽しむファンも少なくない。なにせ横浜港周辺はシーバスのチャーターボート店が軒を連ねる。年々その数は増え今回お世話になった「アーバンフィッシングガイドサービス」も昨年オープン。24時間営業のボート店である。水谷純也船長は言う。
「もともと別のお店で14年ガイド船をやってきました。今も昔もシーバスをメインにガイドしていますが、この8年ボートでアジングをしたいというお客さんも随分と多くなりました。アジングがよくなるのは例年5月以降で2~4月の低水温期はメバルねらいが中心です。海水温が高まり、潮が濁ってくるとメバルの釣果が厳しくなり、アジの釣果が上向いてきます」
4月初旬、水谷船長のもとを訪れたのは脇田政男さんと山口剛さん。脇田さんはライトゲームブランド「ジャングルジム」のブランドディレクターだ。山口さんは横浜のアジ、メバルに精通するエキスパートでアーバンフィッシングガイドサービスは馴染みの船宿という。
「横浜でボートアジングをするのは5回目くらいです。ボートアジングのよいところはタックルが手軽なこと。専用アイテムを用意する必要もありません」
ボートアジングは2オンス程度の重いシンカーを使ったダウンショットリグのバチコンスタイルも人気。しかしふたりはあくまでショアタックルの延長でライトリグの釣りを楽しみたいという。
水深15mまでは~3gでOK
この日の夜は南西風が10mも吹き荒れる予報だった。横浜港のアジングポイントはどんな風向きも風裏になるスポットがあり、よほどの悪天候でない限りは出船ができる。そして18時に出船したボートが目指したのは、横浜ベイブリッジの橋脚周りだ。
脇田さんが用意したタックルは2本。アジング用の1本は6フィートロッドにエステル3ポンド、リーダー6ポンドを組んだシステム。もう1本はメバルプラッギング用のPEタックルでPE0.3号にリーダー6ポンドの組み合わせ。
脇田さんはタングステン製ジグヘッドの「ジャコヘッドTG」に2インチのピンテールワームをセットする。アジングファンの多くはダイレクトで繊細な操作を楽しむジグ単(ジグヘッド単体)の釣りを好む。横浜のボートアジング釣り場でもジグ単でねらえるポイントは各所にある。
「水深15m程度の釣り場なら3gのジグヘッドで探れます。タングステンのよいところは沈みが速く感度も高くディープに強いことです。ヘッドが小粒なのでワームとのバランスもよく、キビキビと動かしやすい。ジャコヘッドTGの特徴はシンカー部分のフラットなサイド面です。つまみやすいのと潮を面で受けやすいため潮向きの判断もつきやすいです」
水深は12m。魚探には海底から1m上に群れの反応が映っている。水谷船長はこの反応はアジだという。暗くなると橋脚に煌々としたライトが点く。その光に多くのベイトが寄り、アジの活性も高まってくる。
「ボートアジングはまずしっかり底を取れる重さのジグヘッドを選ぶこと。用意する重さとしては1.5~3gです。そして3gを使えば大抵の釣り場で通用します。ボートの場合、アジのレンジにワームがしっかり入ってさえいれば食ってくることは多いですからね」
脇田さんは橋脚際に軽くキャストしてフリーフォール。着底から1m上までのレンジをシェイクして誘い上げ、ステイを繰り返す。しかしアジらしいバイトは出ない。
「西日本だと4月5月はアジの産卵期で釣れにくくなります。釣果が出やすいボートに乗っても群れが魚探に映っているのに食わない。こんな時は下手にアクションして誘うよりもレンジを見極め、じっとステイをしているだけのほうが当たることも多いんです」
西日本を中心にさまざまなアジングフィールドを釣り歩いてきた脇田さんは「横浜のボートアジングはきれいな夜景も魅力」と大都会の海を楽しむ。
レンジは底から2.3m上
ファーストヒットは山口さん。釣れたのはカサゴである。たて続けに脇田さんもカサゴを釣りあげた。が、本命の活性はなかなか上がらない。この時ボートは橋脚の風裏となる北面にいた。潮の流れは下げ潮でボートが留まっているのは潮裏のヨレだ。水谷船長は潮表のほうが反応はよさそうと判断してボートを回し込む。するとさっそく脇田さんがヒット!
「底から2、3mレンジを上げてチョンチョン誘ってステイする感じ。食ってくるのはこのパターンかもしれませんよ」
先ほどの位置よりは明らかに潮の流れが利いている。しかし風は強く当たりボートの揺れも大きい
「揺れに強いのもタングステンジグヘッドです。ステイをした時の安定感や動かした時のキレが違います」
と脇田さんは連発させる。やはりタナは底から2~3mのライン。軽くキャストはするもののバーチカルで釣っている。ジグ単を漂わせ、繊細なアタリを感じて掛けるのが面白そうだ。パターンをつかんだ脇田さんは何度もアタリをとらえた。
「もうアジはお腹いっぱい釣りました。メバルを釣りに行きましょうか」
とポイントを移動する。そこは大型船の船付き場で桟橋の下にある穴を探っていく。こうした多彩なストラクチャー周りや港の各所にある明暗をメリハリよく打っていけるのもボート釣りの楽しさといえる。
メバルらしいライズ音が聞こえるものの食いは渋い。脇田さんは小型プラグを使って探るも反応を得られない。一方、山口さんはジグ単で2尾のメバルをヒットさせたがコンスタントな掛かり方をしない。ここでも高活性だったのはカサゴだ。鉄柱際にワームが通るたびに当たる。それもボトムではなく中層で次々にヒットする。脇田さんはメバルらしい好感触のアタリを合わせたが、浮上したのは28㎝という大型カサゴだった。
「メバルは潮位が下がると活性は低くなりますが、それにしてもカサゴが当たりすぎですね(笑)」と水谷船長。
強風の影響で回れる釣り場が限られた。そのためメバルは数もサイズも伸びなかったが、ボートならではのリレー釣行は熱い。小気味よいライトゲームと都会の海の非日常をたっぷりと味わって脇田さんは帰路についた。
※このページは『つり人 2023年6月号』を再編集したものです。
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