日本で最大かつ最古の湖を泳ぐホンモロコは、春の陽気に強い日差しが入りだす4月になると、産卵のために流入河川の浅場に回遊してくる。それをねらってサオが並ぶようすは琵琶湖の風物詩だ。
日本で最大かつ最古の湖を泳ぐホンモロコは、春の陽気に強い日差しが入りだす4月になると、産卵のために流入河川の浅場に回遊してくる。それをねらってサオが並ぶようすは琵琶湖の風物詩だ。
固有種も多い日本最古の湖
滋賀県に位置する琵琶湖は言わずと知れた日本最大の湖である。その歴史は400万年に及ぶとされ、ニゴロブナや在来型のコイ、ビワコオオナマズのような固有種をはじめ、さまざまな魚が多く生息する、いわば日本淡水魚のパラダイスだ。そんな琵琶湖を泳ぐホンモロコは固有種であるものの昔から食用として利用されてきており、釣りのターゲットとしても人気がある。4月中旬、琵琶湖に注ぎ込む大同川に足を運んだのはペスカトーレ中西さんだ。
中西さんは生粋の釣り人であり、旅人である。学生の頃から〝いろいろな魚を釣ってみたい〟という信念で南米を中心に東南アジアやオーストラリアなど頻繁に海外へ足を運んでおり、現在はパックロッドブランドである「フエルコ」のロッド開発も手掛けている。
「あらゆる魚を釣りたくて各地を旅してきましたが、コロナ禍ということもありここ数年は日本国内を回ることが増えました。さまざまなターゲットを追って全国を巡っていくうちに改めて日本の豊かさに気付きました」
源流のイワナから里川のタナゴ、河口域のスズキまでさまざまなシチュエーションとたくさんの魚種をねらえる日本は、豊富な海外遠征経験を持つ中西さんから見ても素晴らしいフィールドなのだそう。中でも琵琶湖のホンモロコ釣りは毎年行なう恒例イベントのようなものだと言う。
「毎年4月になると産卵のために琵琶湖の流入河川へホンモロコが遡ってくるので、その群れをねらう釣りになります。ホンモロコが釣れていると聞くと琵琶湖のシーズンが始まったなぁと思える風物詩のようなものですね。さらに季節が進んでいくとハスやアユなどのハイシーズンがやってきます」
琵琶湖の宝石、ホンモロコ
ホンモロコはコイ科の小魚。現在では山中湖や諏訪湖にも移植されているが、本来は琵琶湖の固有種である。普段は湖を回遊していてねらいにくいが、3〜7月には繁殖期を迎え、湖岸や流入河川、水路に大きな群れを作って回遊してくる。これをねらうのがホンモロコ釣りだ。
よく似た魚にタモロコという種類がいるが、ホンモロコのほうがやや大きくなることと体側にある黒い横帯が淡いことで見分けることができる。ホンモロコは国内のコイ科の中でも特に美味しいとされており、京都では高級食材として扱われるほど。素焼きや天ぷらのほか、煮付けで食べられることが多い
昔は5mほどのノベザオを使ったウキ釣りでねらうのが一般的だったが、現在はリールザオによる投げサビキが主流。ホンモロコ専用のサビキ仕掛けも売られているほどだ。ワカサギのように群れをねらうこの釣りではハリ数が多く、広いタナを探れるサビキ仕掛けが有利といえる。中西さんによれば、オモリは3~4号があれば充分で、スリムな形状のものだとスタックしにくく快適とのこと。仕掛けが立っているほど広いタナを探れるので仕掛けの上部にウキを付ける人もいる。
ロッドは仕掛けを投げることができればどんなものでも構わないが、ソリッドティップだとアタリを弾きにくいのでおすすめだそう。中西さんは今回、ソリッドティップ搭載のMG600Rー5Sとやや硬めで遠投しやすいチューブラーティップのMG700Rー5Sを使った。
ホンモロコは基本的に置きザオでアタリを待つ釣り。キャストして着底したらラインを張って待つことになるのでサオ立ても忘れずに用意したい。
投げサビキ用にはソリッドティップのMG600R-5SとチューブラーのMG700R-5Sを使った。リールは2000番クラスのスピニングがちょうどよい
用意したノベザオは2023年に新しく発売されるNB360とNB430。従来のラインナップでは届かなかった場所がねらえるようになった
赤いコスメが映えるフエルコのロッドはどれも仕舞がコンパクトになるパックロッド。ちょっとした釣りから遠征のお供まで幅広く活躍する
アカムシ二匹掛けで大型ねらい
春の陽気が心地よい大同川に到着したのは朝の9時ごろ。すでにホンモロコねらいの釣り人で賑わっており、本命ポイントの水門周りは満員だ。少し離れたところに空いている場所を見つけて釣り座をセッティングし、釣り開始。湿地帯のような足もとが豊かな自然を感じさせる。
ホンモロコが普段食べているのは動物プランクトンや水生昆虫など。そのため、エサはアカムシを使用する。二匹掛けすることでアピールが大きくなるだけでなく、大型が釣りやすくなるそうだ。サオを複数だすのであれば、沖と手前など違う場所に投げ込んで広く探ると魚の反応を得られやすい。一方のサオにアタリがあれば他方を同じ場所に投げ直すなど、群れが回遊してきたタイミングでいかに効率よく釣るかがこの釣りで数を伸ばすコツだ。
サオ立ての前に腰を掛けて待っていると、下流側の人から次々にサオが曲がり出した。群れが回遊してきたのだろう、中西さんのロッドもブルブルとサオ先が震え出す。一呼吸おいて合わせ、寄せてくると本命のホンモロコが元気よく水面から躍り出た。
「まずは一匹、今年も出会うことができました。群れがいる今のうちに釣りましょう」
と言い、エサをチェックして仕掛けを打ち直すとすぐにヒット。今度は13cmと立派なサイズで、見るからにおいしそう。
どうやら群れは手前に寄ってきているようで、近くに投げた仕掛けにアタリが集中している。2本とも手前側に投げ込んでアタリを待つと同時に、中西さんはノベザオのNB430も伸ばしていく。岸際に回遊しているのであればウキ釣りでも射程圏内となる。短い時合の中でバタバタと慌ただしく釣ったのはどれも10cmを超す良型であった。やはりアカムシ二匹付けが効いているのだろう。
岸際は手返しのよいノベザオで
アタリが続くフィーバータイムはあっという間に終了し、次の群れが回遊してくるまでスローな時間が再開される。この穏やかな雰囲気は置きザオの釣りならではだ。この日は群れが回ってくるのが1時間に1回ほどのペース。充分に釣ったからなのか、周りの釣り人たちは14時を回ると帰り始め、16時には誰もいなくなってしまった。中西さんは気になっていた水門周りへ移動し、ノベザオで探ってみる。
「ここは周りよりも手前が掘れているので、岸際でもよく釣れます」
と言い終わる前にウキが消し込んだ。 中西さんは見逃すことなく合わせ、見事にホンモロコをキャッチ。夕方は慌ただしいほど数釣れることが多いそうだが、この日は不発のようで、もう一尾を追加するも連発とはならなかった。
「今日は大きなホンモロコが数釣れたので釣り応えがありました。今年もたくさんの地域に足を運んでいろいろな魚たちと出会いたいです」
と、晴れやかな笑顔で大同川を後にした。
※このページは『つり人 2023年7月号』を再編集したものです。
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