私たちが釣りに行く水辺は自然科学の教科書と言ってもいいほど多くの発見に溢れています。そこで、釣りに行ったついでに挑戦できる自由研究ネタを集めてみました。
釣り場に出かけた1日でできて、小学生でも取り組める自由研究をまとめました
まとめ◎編集部
私たちが釣りに行く水辺は自然科学の教科書と言ってもいいほど多くの発見にあふれています。そこで、釣りに行ったついでに挑戦できる自由研究ネタを集めてみました。
※釣り場ができる水辺は危険が多くあります。お子さんの釣りには必ずご家族が同行してください。なるべく子供向けのライフジャケットを着用させるのが望ましいです。
※この記事を読んでいる小学生のみんなへ。釣りができる水辺には危険がたくさんあります。どんなに気をつけていても、大人でも事故にあってしまうことがあります。ここに書かれていることを試してみたいときは、かならず大人に相談してついてきてもらうようにしてください。
冷蔵庫にある食品でハゼを釣ってみよう!
夏休みに小学生でも楽しめて、自由研究のテーマもたくさん見つかるのがハゼ釣りです。ハゼは海の奥まった浅瀬や、川の水と海の水が混ざる河口の底に棲んでいます。
エサへの反応が活発で釣り入門にもぴったりのハゼ
ハゼ釣りのエサは釣具店で買えるアオイソメが一般的ですが、活発にエサを食べるので、イカの刺身、むきエビ、ベビーホタテなど冷蔵庫にある食品でも釣ることができます。何種類か食品を用意して、どのエサにいちばん反応するか調べてみましょう。
ハゼは水底の生き物を食べる肉食性の魚ですから、野菜は期待できません。肉や魚介類などの食材のうち、小さくハリにつけやすいものを選ぶといいでしょう。
準備するもの
・試してみたいエサ
・記録用紙と筆記用具
試してみたいエサ(例)
・生食用ホタテ
・鶏のササミ
・むきエビ
・カニカマ
・魚の切り身
・アサリ
など
調査の進め方
・エサと釣り道具を準備して、ハゼの釣り場に行きます
・まずは基本のアオイソメを使ってハゼが釣れる場所を探します
・準備したエサを順番に試します
・それぞれのエサでアタリの出方や回数を記録してみましょう。いちばん釣りやすかったのはどれか、まとめてみましょう
・用意したエサの匂いの強さなども比べてみると新しい発見があるかもしれません
月刊『つり人』2021年10月号で試してみたときに準備した食品エサ。どれもアタリがありましたが、ハリへつけにくかったり、アタリがあったらすぐにハリからとれてしまったりしてなかなか釣れないものもありました。魚が食べるものでも、釣りに向いているものとそうでないものがありそうです
ハゼ釣りの仕掛け
◆くわしいハゼ釣りのやり方はこちらの記事をどうぞ
◆東京の近くのハゼ釣り場を探すならこれらのガイドブックがおすすめです
『困った時はココ! 東京近郊キラキラ釣り場案内60 Part2』
清流でピストン釣りをしながら、きれいな川の水生昆虫を探してみよう!
川遊びを楽しみながら簡単にできる釣りに、浅瀬にじゃぶじゃぶ入ってウグイやオイカワをねらう「ピストン釣り」があります。川底の石をひっくり返してみると、石の裏に張りついてチョロチョロ動くカワムシ(水生昆虫)を見つけることができます。このカワムシをその場でエサにして釣るのです。
ピストン釣りのようす。下流に向けてサオとイトが一直線になるようにエサを付けたハリを流し、流れにあわせてサオを前後させます
川底の石をひっくり返すとカワムシが見つかります
◆くわしいピストン釣りのやり方はこちら!
清流でオイカワ・ウグイのピストン釣りをやってみよう! >>>
ピストン釣りの仕掛け
さて、このピストン釣りでエサとして使われる水生昆虫のなかには、きれいな水にしか棲めないヒラタカゲロウという種類がいます。平べったい体型と2本の尻尾が特徴です(ほかのカゲロウ類は尻尾が3本のものが多い)。
ピストン釣りをしながら、ヒラタカゲロウのなかまを探してみましょう。もし見つけることができれば、その川は水質がとてもよいことがわかります。
これがヒラタカゲロウのなかま。水中の酸素が豊富なきれいな水でしか生きられない。写真は流れの遅い場所で暮らしている種類。よく似た種類に尾が3本のタニガワカゲロウ類などがいるが尻尾の本数で見分けられる
こちらもヒラタカゲロウのなかま。これは釣り人にはナデムシと呼ばれる急流に棲むタイプ
このヒラタカゲロウのように、水生昆虫のなかには水のきれいさによって棲める場所が決まっている種類があります。つまり、とてもきれいな水にしか棲めない種類のムシや汚い水にしか棲めない種類のムシがいます。
そういった種類の水生昆虫を見つけることで、その場所の水質(水のきれいさ)を知ることができます。このように、水質などその場所の環境の状態を私たちに教えてくれる生き物を「指標生物」と呼びます。
川釣りに行ったときに水生昆虫を探してみて、どんな種類が採れるのかを調べてみましょう。また、別々の川や、同じ川でも上流と下流などいくつかのポイントで採れた生き物を比べてみると興味深いです。
指標生物の例
きれいな水(水質階級I) | アミカ類、ナミウズムシ、カワゲラ類、サワガニ、ナガレトビケラ類、ヒラタカゲロウ類、ブユ類、ヘビトンボ、ヤマトビケラ類、ヨコエビ類 |
ややきれいな水(水質階級II) | イシマキガイ、オオシマトビケラ、カワニナ類、ゲンジボタル、コオニヤンマ、コガタシマトビケラ類、ヒラタドロムシ類、ヤマトシジミ |
きたない水(水質階級III) | イソコツブムシ類、タニシ類、ニホンドロソコエビ、シマイシビル、ミズカマキリ、ミズムシ |
とてもきたない水(水質階級IV) | アメリカザリガニ、エラミミズ、サカマキガイ、ユスリカ類、チョウバエ類 |
環境省が実施する一般市民参加型の「全国水生生物調査」より。河川のきれいさを4段階に分けて、それぞれに指標生物を定めています
あると便利なもの
・水生昆虫図鑑
・白いトレー(水生昆虫の観察用)
・虫めがね
調査の進め方
・川底の石を裏返してカワムシを探します。
・見つけたカワムシの種類を調べてみましょう。平べったくて尻尾が2本のヒラタカゲロウのなかまがいれば、その川の水がとてもきれいだということがわかります。
・たくさんの種類が見つけられれば、種類を一覧にして、指標生物が含まれているかを記録してみましょう。その場所の水のきれいさがわかります。
・余裕があれば、川の上流と下流や、別の川でも探してみて、違いを比べてみましょう。
釣り場でとれるカワムシいろいろ
これは釣り人には「オニチョロ」と呼ばれるカワゲラのなかま。ヒラタカゲロウと同じくきれいな水の指標生物。体長が30mmほどもある大型の水生昆虫
通称キンパク。こちらもカワゲラのなかま
ヒゲナガカワトビケラ(クロカワムシ)はよく見られる水生昆虫で釣りエサとしてもとてもポピュラーだが、いろいろな水質の河川で生きられるので、指標生物とはされていない
通称ピンチョロ。ナミフタオカゲロウやヨシノフタオカゲロウの幼虫
釣りエサ用のアカムシ(ユスリカの幼虫)。とてもきたない水の指標生物とされている。自然界では用水路にたまった泥の中や、沼地の酸素が少ない泥底で見つけることができる
◆本格的にデータを集めるなら環境省の「水生生物による水質評価法マニュアル」が参考になります
【上級生向け:もっと高度な調査にチャレンジ!】
水のきれいさとは、化学的にはCOD(化学的酸素要求量)という値で表わされます。簡単にいえば、水中に溶け込んでいる酸素を減らす原因となる有機物の量を示す数字で、この数字が大きいほど水中が酸欠になりやすいきたない水、ということになります。
このCODを簡単に測定できるパックテストという器具が市販されています。ストローのようなチューブに、水質に反応して色が変わる薬品が入っています。その中に水を吸い取って、色の濃さを読み取ることでCODの値が分かります。Amazon等でも購入することができるので、カワムシが生きている川のCODを合わせて測定してみましょう。カワムシの種類とCODの関係がわかると興味深いです。