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編集部2023年6月13日

【なぜ重要?】ライフジャケット着用体験レポートin海上保安庁

魚種別釣りガイド 知らなきゃ困る超基本

海上保安庁のデータによると、釣り中の事故でもっとも多いのが海中への転落で、全体の71%を占める。発生場所は磯場、防波堤、岸壁が多く、足場の悪い釣り場では一層の注意が必要。このような場所では岸に這い上がるのも難しいため、「浮いて待つ」のが大事。さらに釣り場で起こった事故で助かったのは事故車のうち65%。残りの35%は死亡か、行方不明となってしまっている。

釣りの事故とライフジャケットの重要性

文と写真=編集部

 ライフジャケット? そんなの着なくても平気でしょ。そう思っていた時期がワタシにもありました……

こちらの記事は月刊『つり人』2015年2月号に掲載したものをオンライン版として公開しています。

釣りの事故とライフジャケットの重要性

 海上保安庁のデータによると、釣り中の事故でもっとも多いのが海中への転落で、全体の71%を占める。発生場所は磯場、防波堤、岸壁が多く、足場の悪い釣り場では一層の注意が必要。このような場所では岸に這い上がるのも難しいため、「浮いて待つ」のが大事。さらに釣り場で起こった事故で助かったのは事故車のうち65%。残りの35%は死亡か、行方不明となってしまっている。

 そして、ライフジャケットを着用していた人は、着けていなかった人よりも約2.8倍も生存率が高いのだという。

◆平成30年2月1日から、ライフジャケット着用の「全面義務化」がスタートしています。国土交通省が試験を行って安全基準への適合を確認した印である「桜のマーク」が入ったモデルを必ず着用しましょう。詳しくは国土交通省のホームページ(http://www.mlit.go.jp/maritime/maritime_fr6_000018.html)で確認できます。

落水体験:プールでもパニック!

 2015年11月下旬、横浜でライフジャケット着用体験会が開催され、編集部員アライがその効果を身をもって体験してきました。主催は海上保安庁マリンレジャー安全推進室。10月から1月は釣りの事故が多発する時期で、海上保安庁でもこの時期重点的に安全推進活動に取り組んでいる。この体験会もその一環だ。ワタシもライフジャケットを着用すること重要だということは理解しているつもり。だが、幸い今まで落水したことはないので、正直なところ、釣り場で水に落ちたときどんな状態になるのか想像できない。参加者はライフジャケットを借りてプールに飛び込むことができるという。釣り雑誌編集者の端くれとして、これは体験しておかなければなるまいと、第3管区海上保安本部の門をたたいた。

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自動膨張式ライフジャケットを着けて飛び込んだ。膨張した浮力体が両脇の前に来るので、これを抱えることで仰向きの浮き姿勢が楽にとれる。たいていはホイッスルがついているので、岸まで声が届かない場合はこれを吹いて合図を送ることができる。水につかっても作動しない場合はヒモを引いて膨張させる。万が一のために普段からヒモの位置を確認しておこう

 ライフジャケット体験のために案内されたのは屋内のプールだった。プールサイドには映画「海猿」でお馴染み、オレンジのウエットスーツを着た潜水士が待機している。万全のサポートのもと、プールに飛び込ませてもらえるようだ。ライフジャケットも浮力体内蔵のベストタイプ、自動膨張式の首掛けタイプや腰巻きタイプなどさまざまなものが用意されていた。

 ワタシは普段、ボートのバスフィッシングでいつも使用している自動膨張式の首掛けタイプお借りすることにした。一緒に参加した人たちも思い思いのモデルを身につけ、水面から2mほどの高さの足場にスタンバイ。

 ここから飛び降りるとなると、結構な高さに感じてたじろいでしまったが、意を決してジャンプ。

 飛び込んだ瞬間、その勢いで頭の上まで沈みこんだ。ちなみに、このプールは潜水士が救助訓練を行なえるように水深が3mほどある。当然足が底につかない。周囲が水とあぶくに包まれ、自分がどの程度沈んだかわからない。実は事前の講習で、「まずは仰向けに浮いて呼吸を確保するように」と教えられていたのだが、そんな言葉はどこかに飛んでしまい、水中で大混乱! ここでライフジャケットが膨らんでくれれば問題ないのだが、なぜか自動では膨張せずさらに焦る。だが、膨張式のライフジャケットは手動で作動させるためのヒモが備えられている。アップアップしながらもこのヒモを引いて浮き上がることができた。

◆関連記事:古いライジャケは本当に膨らむか?  桜マーク有無のアイテムを試して分かったこと。>>

 ワタシはプールで、ライフジャケットを着け、しかも潜水士のサポートもあるなかで、ひとりパニックに陥るという情けない姿を見せてしまったが、決して他人事と思わないでいただきたい。今回ワタシが感じた教訓はふたつ。

 ひとつは、落水時はパニックに陥ってしまう可能性が高いということ。釣り場での落水事故はほとんどが不意打ちで起こる。水の中で冷静にまずは仰向けになって浮いて、呼吸を確保しよう……などと考えられるだろうか。少なくともワタシはまったく自信がなくなってしまった。普段、泳げるから大丈夫、人は浮くから大丈夫などと虚勢を張ってもまったく無意味だと分かった。ましてや、磯や消波ブロック、渓流の岩場などから転落すれば、身体をぶつけて骨折したり、頭を打って意識を失ったりすることも充分考えられる。寒い時期、とくに年配者は低水温で心臓が麻痺してしまうことも。こうなれば浮き上がる努力をすることは不可能。そんなときライフジャケットがあれば命が助かる可能性がグッとアップする。

 もうひとつは自動膨張式のライフジャケットも膨張しない場合があるということ。センサーが上手く水に浸らなかったり、ガスボンベの使用期限が過ぎていたりとさまざまな理由が考えられる。また、手動でのみ作動するタイプも存在するので自分のライフジャケットがどんなモデルか確認しておこう。定期的にボンベの点検(多くは1~3年を目安に交換を推奨)をして、いざというときにヒモを引けるように位置の確認と訓練をしておくことが重要だ。この作業に自信のない人や、子供に着用させるなら、浮力体内蔵のベストタイプなオススメだ。各タイプの浮き姿勢は写真を参照してほしい。

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 腰巻タイプの膨張式ライフジャケット。腰回りで浮力体が膨らむので、それを持ち上げて両脇に抱えることで写真のように仰向けの姿勢がとれる

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ベストタイプのライフジャケットはもっとも確実に浮力を得られるが、落水時の衝撃で脱げてしまわないよう股ヒモをしっかりと結ぶのがポイントだ。仰向けの姿勢がとりやすいようバランスが調整されている。浮力体が岩などから身体を保護してくれるのもこのタイプの大きなメリットだ。渓流や磯など落水時に負傷のリスクが高い釣り場で着用したい

合言葉は「浮いて待て」

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落水したときの合言葉は「浮いて待て」。力を抜いて仰向けになることで鼻と口を水面に出すことができる。靴は泳ぐのには邪魔だが、スニーカーは浮力があり浮かぶ助けになる。怪我をしないためにも履いているのがよい

 話は前後するが、プールでの実践に先んじて釣り場での事故について講義を受けた。内容について、より詳しくはカコミを参照してほしいのだが、水中に転落してしまったときは何よりもまず、水面に浮いて救助を待つことが重要だという。陸上の事故なら、誰かに見つけてもらえさえすれば救急車を呼んでもらえる。しかし、落水時は何をおいても本人がまず浮き上がる努力をしなければ助からないのだ。そのためにライフジャケットが大きな助けになる。軽装でも水中では非常に動きにくく、やみくもにもがくのはかえって生存率を下げてしまう。仰向けで浮き上がり、呼吸を確保するとともに心を落ち着かせ、救助を待つのが得策だ。合言葉は「浮いて待て」と教えてもらった。

◆関連記事:落水を検知し自動で周囲へSOSを発信! スマホを使った海の安心見守りサービスが登場/JM-Safety >>

人間がいっぱいに空気を吸い込んだときの比重は0.98でPEラインとほぼ同じ。浮くだけならライフジャケットなしでも簡単にできるだろうと思っていたのだが、プールで実際に試してみると意外と難しいことが分かった。鼻と口を水面に出すために仰向けで背浮きの姿勢になる。このとき、全身の力を抜き、お腹を上げる。両腕は体の横に伸ばすかバンザイするように頭上に上げるとうまくバランスが取れるのだが、着衣で思うように動けないうえ、緊張で身体がこわばってしまった。力を抜いた姿勢が取れず、仰向けのまま腰が沈んでしまい、すぐに頭まで水につかってしまった。

「プールと違って海では波や風があります。救助が来るまで2~3時間浮いていなければならないケースもあります」と潜水士さん。しかし、ライフジャケットがあれば長時間浮いていることも楽になるはずだ。また、浮くこと以外にも労力を払えるようになる。冷静に状況を判断し、助けを呼ぶ。声の届く範囲に人がいる場合はいいが、そうでなければ携帯電話(118番)で救助を求めたい。通信機器は防水ケースに入れて常に身につけておくべきだ。低体温症を防ぐために体温を保持しやすい姿勢(膝を曲げて腕組みをする)がとれるのもライフジャケットを着けているときだ。

 毎年、全国各地の釣り場から落水の痛ましい事故が報道されている。楽しく釣りに行って命を落としてしまうことほど悲しいことはない。残された家族や恋人を深い悲しみの淵に叩き落とすことになる。ライフジャケットを着てさえいればと彼岸で後悔しても遅いのだ。釣りに出かける前に、ぜひ落水したらどうなるかを一度想像してみてほしい。そして命を守るためにライフジャケットの着用の徹底をお願いしたい。

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肌寒い時期に磯や沖で釣りをするならウインドブレーカーやインナーを重ね着するはずだ。実際にゴアテックスの防水ウインドブレーカーに防寒ズボンという冬用装備で水に入った参加者に話を聞いてみた。
「動きにくいうえに水を吸ってとても重いですね。とくにプールサイドから陸に上がろうとしても、服の内側の水が裾からなかなか出て行かないんです。体重が2~3倍になったように感じました。釣り場で落水したら自力で陸に上がるのはとても無理ですよ」
陸や船上からの助けが必要だ。助け上げるときには、まず服の裾をめくって水を出してやる

 

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救助する側は、二次被害を防ぐため水に入らないのが原則。身近なものならペットボトルが効果的な浮力体になる。ヒモをつけ、落水者より少し先に投げてからヒモを手繰って、落水者につかんでもらう。落水者がバランスを崩さないようにゆっくり岸まで引き寄せる。落水者はペットボトルをお腹の前で抱えてラッコの姿勢になると安定して浮かんでいられる。

 

 

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