全体的にサイズが小型化していると言われる日本海側エリアの海サクラマス釣りで、納得の1尾を手にしている釣り人たちはどんな釣りをしているのだろうか? 2021春の磯場とゴロタ浜で、心に残る「型もの」を釣りあげた福士知之さんに実績の釣りを解説してもらおう。
海の「型もの」を追う。
文と写真=福士知之
全体的にサイズが小型化していると言われる日本海側エリアの海サクラマス釣りで、納得の1尾を手にしている釣り人たちはどんな釣りをしているのだろうか? 2021春の磯場とゴロタ浜で、心に残る「型もの」を釣りあげた福士知之さんに実績の釣りを解説してもらおう。
目次
2020年冬から2021年春にかけての釣況
春の海サクラマスシーズンの中でも初期はコロナのまん延防止対策期間から外れていたこともあって、日本海エリアは過去最高と思える釣り人の多さだったと思う。僕もそのうちの1人だったのだけれど、どこに行っても人、人、人。ただ、昨年とは違って救いだったのは、車両ナンバーを原因とするトラブルをそれほど耳にしなかったことだ。
肝心の釣果のほうはというと、僕の感覚では魚の数自体は多いものの、50cmに満たない小型サイズが半数以上を占めていた印象。残りの5割のうち2kg台のレギュラーサイズが3割、2割が3kgを超える大型だった感じ。近年はサイズが小型に偏る傾向が強いように思う。
せたな町以北の日本海側ではエサとなるオオナゴやカタクチイワシが決して豊富とは言えない状況で、シーズン中盤に入る頃には大量のアミエビが発生し、それに付く魚が多かったと感じる。こういうサクラマスがアミエビをエサにしている年は比較的大型が釣れにくく、いずれにせよ数は釣れても「型もの」といえるサイズに出会えない釣り人が多かったのではないだろうか。
対照的だったのは道央圏の太平洋側で、こちらはエサとなるイワシが豊富で、それが理由と思うのだが素晴らしい魚体のサクラマスが多かったと聞く。日本海側でたまに見られる3.5kgといった大型はまれだったとはいえ、胴長は短いもののパンパンに太った魚が目立ったようだ。
それと、2021シーズンの海サクラマス釣りであらためて気になったのは、その釣期の短かさだ。以前は日本海側にしても太平洋側にしても、釣果に増減の波はありつつもシーズン中はダラダラと釣れ続くものだったけれど、ここ10年ほどは「ガッと来て、パッと終わる」というパターンが常態化している。
これは昔から秋サケによく見られた傾向なのだが、どうも海サクラマスもそれに似てきているようだ。海洋環境の変化やサケマスの増殖・放流の方法など、いろいろな要因があるのだろうと想像するけれど、長くサケマスの釣りに親しんできた者の1人としてはちょっと気持ちが悪いというか、なんとも嫌な感じがしている。
型ものがロッドを絞った2021年4月の釣行
2021年4月初旬、2日間の日程で日本海へと出かけた。初日は全体的に風が強く波が高い状況だったので、釣りができる場所は風裏になっているわずかなエリアのみ。個人的には広々と解放的なサーフやゴロタ浜の釣りのほうが好みなのだけれど、そんなポイント選択の余地がなかったこともあり、友人の意見で磯場で釣りをすることになった。
初日は60cmアップのアメマスも登場。この後、一気にウネリが高くなり撤退を決めた。
そこは足もとから深くなっている大きなワンド地形の磯場で、こういうポイントでは遠投よりも足もとまできっちりルアーを泳がせることが大切だ。なぜかというと、特に磯場では足もと付近を回遊する魚が多いから。遠投するよりも近距離を手返しよくルアーを泳がせていたほうが、結果的にヒット率が高まると思う。
それと、磯場のような魚が近い状況ではルアーにボリュームがあるほど有利になるので、ここでも迷うことなくミノーを選択。すると、同じくミノーを投げていた友人にすぐにヒットし、ポイントに魚が入っていることが分かった。
ただ、点在する飛び根の影響でルアーを広角に打ち込めない狭い磯場での「あるある」なのだが、立ち位置が悪いため魚にかすっていない時間がしばし続いた。そこで、釣った友人が場所を開けてくれ、交代で入った僕が今度は数投でヒット。譲り合いができる仲間とのチームワークを活かし、みんなが気落ちよく釣りができた。
初日のヒットルアー「ランス」の特徴
リーリング速度でアクションの幅を変えることもあるけれど、ミノーはスローなタダ巻きが基本。実際のところそれがヒットの9割方を占める
磯場の釣りで使用したミノーはタイドミノーランス140S。タイドミノーシリーズならではの飛距離は言わずもがな、そのうえで特徴的なのは、波質を選ばずにヌルヌルとしたアクションで低速から高速まで破綻せずに泳ぎ切ってくれることだ。風の影響で海面が波立っている時でも、足の長いウネリでもランス140Sは泳ぎが常に安定している。
魚が岸際近くを回遊している時はボリューミーなミノーがいい。タイドミノーランス140Sにヒットした型ものだ。
使い方はスローリトリーブのタダ巻き。海サクラマスの釣りはよほど状況が悪くない限り、着水時に出たラインスラックを回収した後は、「トンッ」とロッドをあおってリップに水を噛ませて、体勢を整えたうえでシンプルにリーリングするだけで充分だと思っている。リーリング速度でアクションの幅を変えることもあるけれど、ランスに限らずミノーに関しては僕の場合はすべてスローなタダ巻きが基本。実際のところそれがヒットの9割方を占めている。
今回もこの釣り方を繰り返し、僕と友人はさらにアメマスを追加。この時点でウネリの周期が早くなってきたので終了となった。釣りができたのは正味2~3時間だったものの、特に磯場の釣りは見切るタイミングを早めに決断できたほうがいい。車に戻って帰り支度を完了する頃には、先ほど乗っていた磯にも波がかぶり始めていた。
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