投げ釣りでは釣りにくい魚のひとつだったマゴチだが、特エサの塩イワシの出現によってねらって釣れるようになった。ここでは釣り方からエサの作り方まで紹介する。
投げ釣りでは釣りにくい魚のひとつだったマゴチだが、特エサの塩イワシの出現によってねらって釣れるようになった。ここでは釣り方からエサの作り方まで紹介する。
解説◎山崎憲二
マゴチとは?
東北南部から九州まで広範囲に生息するマゴチ。低水温期は沖合の深場で過ごしているが、水温が上昇する初夏になると産卵のために接岸してくる。
盛期の6月ころにはエサとなるシロギスなどを追って水深3~4mの浅場にまで寄って来る。きれいな砂地底を好み、普段は砂地に潜って目だけを出している。近くをシロギスや小魚、エビなどが通りかかると一気に飛び出して襲いかかる。
いわゆるフィッシュイーター(魚食魚)で、見た目と同様にかなり獰猛な性質だ。ルアーでも釣れるゆえんでもある。
瀬戸内海や東京湾など内海にも生息するが、どちらかというと太平洋や日本海など外海に面したエリアのほうが数は多い。
それだけ遊泳能力が高い証拠。ゆえにハリ掛かりしてからのファイトも力強く、とても楽しい。また、見た目とは違って食味は抜群。刺身はもちろん、鍋物、煮つけ、空揚げとどのような料理でもおいしくいただける。
投げ釣りで狙うマゴチ
関東圏では沖釣りでねらうことが多い。その時のエサは生きたハゼやエビ、イワシ、小アジなどである。
フィッシュイーターなのだから当然だ。投げ釣りでも生きたアジでねらうことがあるが、エサの確保と持ち運びに苦労する。それでなくても荷物が多い投げ釣りに生かしバケツが加わると、それだけで嫌になってくる。
昔はイワイソメ(マムシ)やサバ、サンマの切り身で夜にねらっていたが、確率は非常に低かった。ねらって釣るというより偶然性のほうが高かった。
塩イワシで狙うスタイルが確立
それが、いつのころからかエサに塩イワシを使うようになった。そのおかげで偶然が必然へと変わることができた。今ではマゴチ釣りのエサといえば塩イワシが普通になった。
ちなみに塩イワシではマゴチ以外にヒラメ、クロダイ、カサゴ、サンバソウ(イシダイの小型)、ウシノシタ、ホウボウなども釣れるから面白いエサだ。
エサの塩イワシを準備をしよう
マゴチ釣りの特エサである塩イワシは販売されていない。自分で作る必要があるが、作り方はさほど難しくない。時間がある時にたくさん作っておき、冷凍庫で保存しておけば長期保存も可能。1年ぐらいは充分に持つ。エサがあればいつでも釣りに出かけられる。
塩イワシの作り方






塩イワシを作る際の注意点
塩イワシを作る際に気を付けなければいけないのが硬さだ。基本的に少々硬くても食ってくるが、出汁を取る煮干しのようなカチカチではさすがに食いが悪い。かといって軟らか過ぎても投入時に身切れを起こしてしまう。指先でつまむと少しへこむぐらいがよい。めざしの一夜干しより少し硬めが理想。
イワシのサイズは12~13cmがよい。大きすぎると飛距離が落ちるし食い込みも悪くなる。小さいほうが使い勝手がよい。キャスト時の抵抗が下がって遠投がきくからだ。近年は遠投しやすいように小さい塩キビナゴを用いる人も増えている。釣り場の状況で使い分けるとよい。

投げマゴチ釣りのタックル&仕掛け
タックルは、一般的な投げ釣り用のセットで対応可能だ。投げ竿に投げ釣り用リールを組み合わせ、道糸はナイロンなら3〜5号、PEラインなら3号程度が基準となる。遠投時の高切れを防ぐため、道糸の先には投げ釣り用の力糸(ちからいと)を接続する。
力糸の先には、遊動式のL字天秤などをセット。その先に接続する仕掛けは、根本に砂ずりを備えた全長2m程度のものが扱いやすい。ハリスはフロロカーボン8~10号程度だ。

エサの塩イワシを刺す針は、1本針ではなく、2本の針を使った「2連バリ仕掛け」にセットするのが釣果を上げる鍵だ。1本バリでは、キャスト時や水中で安定せず、身切れを起こしやすい。2本の針でしっかりと固定することで、エサの姿勢を安定させ、ヒット率を格段に向上させることができる。

使用するイワシのサイズによっては3連バリも有効。筆者が使用している針は丸セイゴがベースのがまかつ「ユムシコウジ」17~20号やオーナーばりの「丸貝専用」7号がメインだ。エサの刺し方については下記の写真を参考にしてほしい。
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投げ釣りでのマゴチの釣り方
シロギスがいるような砂浜の海岸や、イワシや小アジが回遊する防波堤などが釣り場となる。そのような所に仕掛けを投入してアタリを待つのだが、時々仕掛けを動かして誘いをかける。誘った直後に当たることが多いので、マメに誘うのが有効的。誘い方は、エサがフワリと落ちるようなリフトアンドフォールの誘いが基本。ほったらかしはよくない。
この釣りでは、フグなどのエサ取りとの戦いも重要になる。塩で締めたイワシでも、フグの猛攻に遭えばひとたまりもない。仕掛けを動かした際に感じる重みの変化で、エサの有無を常に把握するよう心掛けたい。もしエサが取られたと判断すれば、ターゲットが釣れる可能性はゼロになるため、すぐに仕掛けを回収し、新しいエサを付けて素早く打ち返す手返しの良さが求められる。
最大のチャンスタイムとなる時合は、やはり朝夕のマヅメだ。それに加え、潮が止まる直前や、再び動き出すタイミングも、魚の捕食スイッチが入る絶好の機会となる。いつ訪れるか分からない一瞬のチャンスを逃さないためにも、潮の動きには絶えず注意を払っておくべきである。

この記事は『つり人』2020年6月号に掲載したものを情報更新・再編集しています。