ジャリメ、イワイソメなど虫エサを使うことが多い投げ釣りだが、ねらいもの、あるいは時と場合によっては魚、エビ、イカなどの身エサを用いることもある。虫エサとはひと味違った釣趣が味わえるし、大型が期待できるのが最大の魅力。そんな身エサの使い方やターゲットなどについて考えてみよう。
ジャリメ、イワイソメなど虫エサを使うことが多い投げ釣りだが、ねらいもの、あるいは時と場合によっては魚、エビ、イカなどの身エサを用いることもある。虫エサとはひと味違った釣趣が味わえるし、大型が期待できるのが最大の魅力。そんな身エサの使い方やターゲットなどについて考えてみよう。
解説◎山崎憲二
投げ釣りの定番は虫エサ
投げ釣りではジャリメ(イシゴカイ)、イワイソメ(マムシ)、アオイソメ、ユムシといった虫エサを使うのが一般的。その理由は投げ釣りでねらう魚が虫エサを好むからだ。たとえばシロギスならジャリメ。カレイ、アイナメならイワイソメやアオイソメ。クロダイ、マダイなどタイ系にはユムシやイワイソメなどをよく使う。またチロリ(東京スナメ)はシロギスの型ねらいやマダイねらいに実績が高く、瀬戸内西部でよく使われるコウジ、タイムシといった地域色の強い虫エサもある。
投げ釣りで虫エサを使う理由はもうひとつ。硬調ザオでフルキャストするケースが多いため、投入時にエサが軟らかいとハリから外れてしまうからだ。また、25〜30号といった重いオモリを使うことから着水時のショックでも外れてしまう。このような理由から投げ釣りではハリ持ちのよい虫エサが使われているのだ。
たとえばマダイならオキアミや生きた海エビ、スズキのエビ撒き釣りでは生きたシラサエビ、カワハギ船ではアサリのムキ身が定番のエサ。それぞれ対象魚に見合ったエサなので投げ釣りでも使用したいところだが、そのほとんどが軟らかいため使えない。
それでも虫エサ以外を使いたい時がある。虫エサには食いつかない、もしくは虫エサでは確率がかなり低いマゴチ、ヒラメ、ハマフエフキ、コロダイ、根魚などのターゲットをねらう場合
だ。特にマゴチ、ヒラメは魚食魚なのでやはり魚の切り身などの身エサが効果的で実績も高い。虫エサとはひと味違った釣趣で、大型が期待できるのが身エサ最大の魅力。なおここでいう身エサとは魚類、イカ類、エビ類とした。
魚類のエサではフィッシュイーターがねらえる
「塩イワシ」はマゴチを狙って釣れる
沖釣りでマゴチやヒラメ、根魚、青物をねらう時は生きたイワシをエサに使う。抜群の食いのよさなので投げ釣りでも生きたイワシが使えればいい釣果が得られると思うが、不可能だろう。そこで塩で締めて硬くしたものを使うようになった。それまで投げ釣りでマゴチをねらう場合、イワイソメやユムシを使っていたが、ねらうとは名ばかりで偶然に食ってくる程度でしか釣れなかった。それほど難易度が高かったマゴチが塩イワシの出現によって確率がかなり上がった。
.jpg?width=768&height=432&name=13r%20(%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%A0).jpg)
塩イワシ(基本的にマイワシ)とは身の水分を抜くために塩をまぶしたもののことをいう。スーパーなどで売っている煮干しイワシほど硬くはなく、一夜干しイワシほど軟らかくない。その中間ぐらいが理想的。一見、こんな干からびたイワシに魚が食いつくのか……と思うようなエサだが、これが不思議なことにいろいろな魚が食ってくる。メインターゲットはマゴチだがヒラメ、クロダイ、エソ、根魚などの実績があり、運がよければマダイも食う。エイやサメ、アナゴも食うから魚たちにとっては格好のエサに違いない。
.jpg?width=768&height=432&name=05%20(%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%A0).jpg)
塩イワシは自作
塩イワシはエサ店では販売されていないから自作するしかない。魚屋やスーパーマーケットの魚売り場などで新鮮なイワシを購入して作る。サイズは12cmぐらいが使いやすい。あまり大きすぎると飛距離が落ちるし食い込みもやや悪くなる。腹が割れているものやウロコがはがれているものもよくない。スーパーに手ごろなものがない時はエサ店で販売している冷凍イワシでも構わない。むしろこちらのほうがサイズは揃っている。

塩イワシはタッパーにきれいに並べて入れ冷凍庫で保存する。釣り場で使用する時には解凍されているが、もともと塩締めしているから硬い状態のままなので、あまり気を使う必要はない。それでも氷の入ったクーラーボックスに入れておき、1匹ずつ出して使うようにする。なるべく新鮮なものがよいが、1~2年前に作ったもので釣れたこともある。ただ日が経つと冷凍焼けして食いは悪くなる。
塩イワシの付け方
塩イワシをエサにする場合、1本バリだと投入時に外れやすく、また海底でも安定しないから2連バリ、エサが大きい時には3連バリにする。一番上のハリをエラ付近に刺し、下のハリを背中付近に刺す。2〜3連バリだとハリ外れしにくく、力を入れて投げても外れることは少ない。とは言え、身エサだから力加減は重要。飛行中に外れていないか目視で確認し、もし外れたなら素早く打ち返す。魚はイワシの頭から食ってくることが多いから、上のハリがフッキングしていることが多い。活性が高い時は2本とも掛かっていることもある。ちなみにハリ先が身に埋もれないようにフトコロの広いハリ(ユムシコウジや伊勢尼など)を使うこと。
.jpg?width=768&height=432&name=14%20(%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%A0).jpg)
イワシの一夜干しでも釣れる?
ちなみに知人がイワシ、シシャモの一夜干しを試したところ、イワシではマゴチ、エソ、カサゴ、エイなどが釣れたそうだが、シシャモでは何も釣れなかったとのこと。この違いは何なのかと首をかしげていた。塩イワシがない時は一夜干しを試してみるのもいいかもしれない。
「塩キビナゴ」は小粒なので遠投が効く
塩イワシのキビナゴ版。作り方や使い方は塩イワシと同じ。ただ身が細く小さいから塩加減が重要。塩イワシより少なめがきれいに仕上がる。塩イワシよりひと回りからふた回り小さいから投入時の抵抗が少なく遠投できるのが強み。遠浅の海岸では塩イワシと併せて持参するのが得策。マゴチメインに小型イシダイ、ホウボウなども釣れている。
.jpg?width=768&height=432&name=19%20(%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%A0).jpg)
「サンマの切り身」は根魚などに効果的
塩イワシが出回る前はサンマの切り身でマゴチをねらう人がいた。しかし実績的にはイマイチで、確率的には虫エサと同程度だった。ただカサゴ、ソイなどの根魚には有効だったし、大型マダイやクロダイを釣った人もいたので、まるっきりダメというわけではない。根魚ねらいやダメもとで捨てザオ気味に使用すると思わぬ大型魚がヒットする可能性を秘めている。
.jpg?width=768&height=432&name=21%20(%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%A0).jpg)
「生きアジ」はヒラメねらいの定番エサ
青物ねらいの飲ませ釣りやアオリイカのヤエン釣りで使用されることが多い生きアジだが、投げ釣りでも使うことがある。基本的に生きた小魚しか食わないとされているヒラメをねらう場合だ。確率は低いものの、生きアジ以外ではねらいにくい。ヒラメ以外にもマゴチやキジハタ、カサゴなどの根魚が釣れ、ごくまれに青物もヒットする。いずれも大型なのが魅力。
.jpg?width=768&height=432&name=aji%20(%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%A0).jpg)
生きアジで大変なのが保管だ。弱ったり死んでしまうとまったくと言っていいほど食わなくなるので、生かしバケツに入れてエアポンプで空気を送らなければならない。かなり重いので運搬も大変。エアポンプが止まるとすぐに死んでしまうから要注意。海水もまめに換えてやる必要があり、バケツに多く入れすぎないことも重要だ。サイズは12cm前後が使いよい。小さいとすぐ弱るし、大きいと食い込みが悪くなる。
海中で弱らないようにハリの刺し方にも気を配る。鼻掛け、背掛けなどがあるが、投入時に外れにくい「下アゴ貫通刺し」がおすすめ。親バリを下アゴから上アゴに通し、孫バリは背中に刺す。投入時に身切れしないようにフワッとキャストする。生きアジをエサにする時は軟調ザオや磯ザオの4〜5号クラスが使いよい。
生きアジは自分で釣ってもよいが、釣れないとその日は釣りができないからエサ店で購入するのが確実。
.jpg?width=768&height=432&name=24r%20(%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%A0).jpg)
「豆アジ」「カマス」はハマフエフキねらいの隠しエサ
ごく一部のキャスターは豆アジや小型カマスをエサにハマフエフキをねらっている。これは死んでいてもいいので扱いやすい。10cmほどのサイズが最適で、これくらいだと遠投も可能だから広範囲を探れる。これらを食ってくるのは70cmオーバーの大型が多いそうだ。大型ねらい派はぜひ試していただきたいエサだ。
イカ類は磯魚系ねらいに欠かせない
「イカの短冊」は磯ものねらいの好エサ
スルメイカなどを短冊状に切ったもので、イカ類の中ではもっともポピュラーなエサ。スーパーなどで生のイカを購入して自分で適当な大きさにカットし、タッパーなどに入れて釣り場に持参する。それが面倒という人はエサ店で販売している冷凍イカ(短冊状にカットされている)でもよい。やはり新鮮なほうが食いはよい感じがするものの、冷凍ものでも充分に食ってくる。意外とハリ持ちがいいから遠投も可能。基本的にエサ取りには強いエサだが、フグが多い時はすぐに取られて苦労することがある。そんな時のために取られにくいゲソも持参する。
-1.jpg?width=768&height=432&name=04%20(%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%A0)-1.jpg)
ハマフエフキ、コロダイなどの磯魚系がメインターゲット。カサゴやオオモンハタ、ヒメジなども食ってくる一方、ウツボ、エイ、サメ、アナゴなど招かざる他魚もくる。こればかりは仕方ない。サイズは5cm×1.5cmぐらいが扱いやすく縫い刺しで付ける。大型をねらう時はこれを2〜3個付ける。この場合は当然ハリもかなり大きなものを使うことになる。
.jpg?width=768&height=432&name=31%20(%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%A0).jpg)
「ヒイカ」は大型ハマフエフキに最適
ハマフエフキの特効エサと言えるのがヒイカだ。胴体が10cmぐらいのものが使いよい。新鮮な生があれば理想なのだが、なければ冷凍ものでも充分に食ってくる。魚屋やスーパーでもあまり見かけないだけに、見つけた時はまとめて購入して冷凍保存しておく。一部のエサ店で販売されているが、意外とあまり置いていない。見かけた時はやはりまとめ買いしておくのがよい。
-2.jpg?width=768&height=432&name=03%20(%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%A0)-2.jpg)
小型は1ハイをそのまま縫い刺しにし、大型は縦に切って使う。いずれの場合も「目玉」は必ず付けておくことが重要。目玉を目標に近づいてくるからだ。ヒイカがない場合は小型のスルメイカ、ヤリイカなどでも代用できる。大きめのものはやはり縦切りにして使うが、大きすぎると投入時の抵抗が大きくなるし、食い込みも悪くなるから気を付けること。イカエサにはクエやハタ類が食うこともある。もちろんコロダイも食う。
.jpg?width=768&height=432&name=32%20(%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%A0).jpg)
「ゲソ」はエサ取りに強い
イカの足のことをゲソという。ヒイカや短冊切りと比べると食いは落ちるが、エサ取りに強いのが特徴。大きいものは足1本、小さいものは2〜3本をハリに付ける。短冊切りやヒイカに比べると硬いから遠投が効くメリットがある。ハマフエフキも食うがどちらかと言えばコロダイねらいに向いている。イラやヘダイも釣れている。
.jpg?width=768&height=432&name=34%20(%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%A0).jpg)
多魚種に効果的なエビ類
「海エビ」はいろいろな魚が食ってくる
サルエビや芝エビなど海で採れる小型エビの総称を海エビと認識している。昔は生きたものや新鮮な生がよいとされていたことから、苦労して魚屋を探し回ったものだ。しかし、死んだものや冷凍でもさほど食いに関係ないことがわかり、ずいぶんと楽になった。エサ店やスーパーで手軽に入手できるからだ。
.jpg?width=768&height=432&name=36%20(%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%A0).jpg)
大阪南部のスーパーではジャコエビという商品名で生が売られていて、サイズは4〜5cmと投げ釣りのエサに適している。これを購入して半分は酒のあてに、半分はエサ用に冷凍して保存している人もいる。冷凍でもいいので使う分だけ持っていくことも可能。経済的で効率もよい。頭は付いているほうが、食いがよいように感じる。
海エビではコロダイを始めヘダイ、クロダイ、キチヌ、オオモンハタ、カサゴ、コブダイ、ヒメジ類などの実績がある。ハマフエフキも釣れている。身が柔らかいためハリ持ちが悪そうに感じるが、意外とハリ持ちはよく、ある程度のパワーキャストにも耐えてくれる。エサ取りにも強く、イワイソメがすぐに取られてもエビは残っていることがある。
.jpg?width=768&height=432&name=38%20(%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%A0).jpg)
尻尾をカットしてそこから通し刺しでハリに付ける。先にイワイソメを刺してハリスまでたくし上げ、その後にエビを刺すミックス刺しも効果的。イワイソメの匂いで魚を寄せてエビで食わせる作戦だ。このエサ使いで、南紀で60cmオーバーのコロダイが釣れている。また釣友の湯浅研史さんは南紀の磯で新鮮な生のエビを使って60cmオーバーのマダイを上げている。他のエリアでのマダイねらいで試してみると面白い結果が出るかもしれない。
「バナメイエビ」は意外な好エサ
スーパーで売られている比較的大きなエビだ。頭は取られているが殻は付いたままのものが多い。逆にそのほうがよい。生がよいが冷凍でも充分。4〜5cmの小さいものはそのままで、大きなものは半分にカットして使う。磯魚ねらいに適しているが、中でもコロダイねらいに効果的。イワイソメやイカと併用したがバナメイエビしか食わなかったという話も聞く。
.jpg?width=768&height=432&name=40%20(%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%A0).jpg)
ただ、その日によって当たりエサは変わるので、やはり複数のエサを持参するのが得策。やや身持ちが悪いから軽めのキャストがよい。そのようなことからポイントが近い釣り場に向いている。ハマフエフキも釣れるがイカ類には及ばない。エサ自体が大きいからかクロダイやヘダイはあまり食わない。ただ根魚は食ってくる。コブダイねらいにもよく使われ、高実績を上げている。
.jpg?width=768&height=432&name=42%20(%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%A0).jpg)
「生きエビ」は他魚種が好む
エビ撒き釣りなどで使われる淡水のシラサエビは小さいうえに身が軟らかいから投げ釣りには向かない。販売している店は少ないが体長5〜7cmのサルエビがあればぜひ使いたい。前記したように死んだエビでも充分で、わざわざ生きたエビを持参することはないのだが、やはり生は食いがよいように感じる。コロダイ、クロダイ、ヘダイなどの他にマダイなども期待できる。生きエサしか食わないキジハタなども可能性がある。試してみたいエサだ。
.jpg?width=768&height=432&name=45%20(%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%A0).jpg)
大阪の一部のエサ店で生きたテナガエビを販売している。初冬に一度試したがその時は何も釣れなかった。ただ意外とハリ持ちがよく、ある程度のパワーキャストにも耐え、また、数回回収してもハリから外れていなかった。
夏場のコロダイやマダイねらいに試してみたいエサだ。生かしバケツとエアポンプは必要だが、生きアジほど大きなバケツはいらないから比較的手軽に持参できる。
.jpg?width=768&height=432&name=44%20(%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%A0).jpg)
※このページは『つり人 2025年7月号』を再編集したものです。