投げ釣りのスペシャリスト・伊藤幸一さんに遠投できる投げ方の作法を教わった。「投げ釣りのキャストで一番大事なのは“タメ”の意識」と伊藤さん。150m、いや200mを超えるための基本と極意を教わろう。
Over 200!! フルキャストの作法
講師◎伊藤幸一 写真・文◎編集部
投げ釣りのスペシャリスト・伊藤幸一さんに遠投できる投げ方の作法を教わった。「投げ釣りのキャストで一番大事なのは“タメ”の意識」と伊藤さん。150m、いや200mを超えるための基本と極意を教わろう。
この記事は月刊『つり人』2020年6月号に掲載したものを再編集しています
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遠投のための投げ方概要
投げ釣りの一番の見せ場でありハードルでもあるキャスト。この記事では150mを超える本格的な遠投をするための準備と実践を基礎から紹介したい。
ほかの釣りのキャストとの一番の違いは身体の回転運動が加わること(写真参照)。伊藤さんのキャスティングは「V字投法」と「回転投法」の中間といえるもの。最初は投げる方向と逆を向いて構えるが、足・腰・上半身の順で身体を回転させてキャストする。こうすることでサオの振り幅を長くとることができ、なおかつ身体のタメ(≒反発力)を使ってより遠投することができる。
投げ釣りのエキスパートたちの多くは伊藤さんと同じフォームで投げている。200mも射程に入るフォームだ。
「ほかの釣りのキャストの一番の違いは“タメ”を作って遠投する意識です」と伊藤さん。では“タメ”とは具体的にどういうことなのか。写真で追っていこう。
遠投の投げ方:構えるまでの準備
●タラシはリールから30cm上くらいが目安
伊藤さんのタラシはリールの30cmくらい上がレギュラー。「私はパワーがあるわけではないのでタラシは長めです。長いほうが遠心力を使いやすいです。力に自信がある人は短めのほうがサオを曲げやすい。リールから80㎝上を基準にしている人もいますよ」
●リールフットは小指と薬指で挟む
この握り方が指にラインを掛けやすい
●フィンガーグローブは必需品!ラインを掛けるのは第一関節の5mm上
投げ釣り用のフィンガーグローブはマストアイテム。これがないと痛くて投げられないと伊藤さん。ラインを掛けるのは人差し指の第一関節の5mmほど上。関節のあたりだとリリース時に引っかかりやすく、逆に上すぎると途中で抜けやすい
結び目やスプールの高さについて
かつてナイロンラインで投げていたころはスプールの高さや結び目の位置を繊細に気にしていましたが、細いPEで投げるようになった今はとくに気にしなくてOKです」と伊藤さん
着水点が右や左にズレるときは……
キャストが右や左にズレるときはキャストフォームを変えるのではなく、ラインを指に掛ける位置で調節するのが伊藤流。右にズレるときはラインを掛ける位置を1mmほど(力糸1本分)関節に近づける。左にズレるときは上に1mm上げる
●「リール~ロッドエンド」の適切な長さは?
写真のように右手を伸ばしてロッドを持った際、サオ尻がアゴの下あたりにくる長さが振りやすい。サオを選ぶ際の参考にしよう
●サオの握り
右も左手も力強くグリップしよう。とくにサオ尻を持つ手はかなり強く握っている
●投げる前の観察は超重要!
伊藤さんがキャスト時に絶対に欠かしていなかったのが構える前の観察だ。時には1分ほど時間をかけて焦らずじっくり待っていた。神聖なルーティーンの時間といった雰囲気が出ていた。このとき伊藤さんはおもに3つのことを見ていた
①投げる先に船やボードなどがいないか
いたら絶対に投げないこと。「遠いから大丈夫」と判断しても距離感が狂っている場合があるのでキャストはNG。オモリが当たれば死亡事故につながる可能性もある
②オモリを置く場所の見極め
オモリを置く場所はなるべく平坦で障害物がないところ。とくにオモリを置く先60~70cm先(ちょうどオモリが地面を離れるポイント)に石がないことを確認する
③波
大きな波がくるタイミングで投げてしまうとオモリがさらわれてしまう。投げるべきは大きな波のあと(小さな波になりやすい)。地面が波に洗わわれてキレイ(平坦)になっているので一石二鳥だ
●オモリを置く
オモリを置くのは小石などの障害物が少ないゾーンが望ましい。ただし、オモリが地面を引きずられるときに多少の障害物があるのはかまわない。大事なのは「オモリが地面を離れる地点」だ
オモリの助走距離について
「キャスト後に必ず跡を確認します。私の場合60~70cmだと調子がいいな、と判断します。この距離が長すぎるとロッドにオモリの負荷がかかり始めるタイミングが遅れているということなので飛距離が伸びない」
オモリが地面を離れて飛行状態に入るタイミングで大き目の石に接触すると指がラインから離れてしまう原因になる
遠投の投げ方:構え
オモリを置くのは身体の真横のライン延長線上。ここにオモリを置き、ロッドとラインの角度が90度になる位置でロッドを低く構える
伊藤さんのキャスト時の構え。オモリを身体の真横のライン上に置き、タラシを張ってロッドとラインの角度が90°になるように構える。サオ先は低め。慣れないうちはオモリはもっと身体に近くてもOK(その場合のサオとイトの角度は45°と90°の間のどこかになる)。ちなみにこの投げ方は「オモリを浅く置いた回転投法、もしくはオモリを深く置いたV字投法ですね。V字と回転投法の中間的なフォームだと思います」と伊藤さん
後編「遠投の一連の動作を実践」へ続く……
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