数珠シモリ仕掛けを川に振り込むと、水中に沈んでいる部分は真っすぐには伸びず不安定に漂う。一方、水面に出た羽根ウキは半沈み状態で張り付くような姿勢になる。これらが小ブナが底層でエサをついばんだ際、微妙で渋いアタリを察知してくれる能力に長けているように思われる。
ウキ釣りで謳歌する水郷の冬
写真&文◎葛島一美
冬の淡水ウキ釣りといえば、オカメタナゴ(タイリクバラタナゴ)と小ブナが人気だ。共通するのは、どちらも繊細な仕掛けを使いこなすこと。基本を押さえて、昔ながらの「寒の釣り」に挑戦してみよう。
目次
- ・タナゴ仕掛けの親ウキの選び方
- ・タナゴ仕掛けのイトウキ選び&オモリ調整
- ・厳寒期の小ブナ釣りの数珠シモリ仕掛け
- ・羽根ウキシモリの作り方
厳寒期の小ブナ釣りの数珠シモリ仕掛け
寒の小もの釣りの花形がオカメタナゴなら、その脇役を務めるのが越冬中の小ブナだ。釣り場は基本的に野のタナゴ釣り場と同じになる。
この季節、秋から初冬にかけての秋ブナ釣りシーズンのような釣果を望むのは難しいが、むしろ厳冬期に低活性の小ブナを相手にする釣趣は、それはそれで味わい深い。
タナゴに比べると地味な印象もあるマブナ(小ブナ)だが、関東では昔から根強い人気があり、独特の仕掛けを使いこなす釣りは「釣りはフナに始まり、フナに終わる」の妙味がある。写真はコロンとした体形のキンブナらしき柿の種サイズ
羽根ウキ2段シモリ仕掛けの馴染み方。どのウキの位置でウキ下を整えるのかは自由。これは水面からほんの少し頭を出す玉ウキで、川底の凹んだ個所を感知できるようにした時のもの。アタリは水面下に入った複数のウキの動き全体で察知する
アタリ方も消し込みや横走りなどの明確で派手なシグナルは皆無で、水中のシモリウキがじんわりと動く程度の渋いアタリを楽しむ。
釣り場が同じでどちらも「小もの」のタナゴと小ブナだが違いは泳層。そして小ブナ釣りでは、ニワトリや水鳥の羽根の芯で作った羽根ウキが仕掛けの中心になる。
この釣りでは、昔から10個以上の羽根ウキをつないだ、数珠シモリ仕掛けが愛用されてきた。羽根ウキは中が海綿状で水分を含むが、わずかに残る浮力がいい仕事をしてくれる。
数珠シモリ仕掛けを川に振り込むと、水中に沈んでいる部分は真っすぐには伸びず不安定に漂う。一方、水面に出た羽根ウキは半沈み状態で張り付くような姿勢になる。これらが小ブナが底層でエサをついばんだ際、微妙で渋いアタリを察知してくれる能力に長けているように思われる。
おすすめは数珠シモリ仕掛けのバリエーションである、羽根ウキ2段シモリ仕掛け。これは2個の中通し玉ウキを使って3~4個ずつの羽根ウキを挟むスタイル。この仕掛けを振り込むと、下部の羽根ウキからゆるゆると沈んでいくが、途中に通した浮力が大きな玉ウキの影響で一瞬動きが止まり、そののち再びゆらゆらと沈んでいく。小ブナ釣りのオールドファンも納得の使って楽しい仕掛けである。
手作りの味がにじみ出た小ブナ釣り用の羽根ウキ仕掛け。複数の羽根ウキを通した構造は、数珠シモリ仕掛けとも呼ばれ、川底の凹凸を羽根ウキの浮き沈みで判断しやすい。また、水深の変化があってもウキ下を細かく調整する必要がなく、無精仕掛けの異名もある。左2組は今回おすすめしている羽根ウキ2段シモリ仕掛けで、中通し玉ウキは極小サイズの00号がちょうどよく、羽根ウキの長さは7~8mmとやや大きめにする
釣り方は歩いてポイントを捜す探り釣りも、一ヵ所に腰を据えるエンコ釣りも、どちらのスタイルでもよい
今回は主に羽根ウキ2段シモリ仕掛けを紹介したが、親ウキと羽根ウキを組み合わせる小ブナ釣り用の連動シモリ仕掛けも効果的。その際は、板オモリ部分が底に付いたら、親ウキのトップが水面からわずかに出るか、写真のように水面下数cmに沈むウキ下に調節して使う。枯れ枝や枯れ草の障害物が複雑な場所に効果的だ
小ブナ釣りのオモリ調整
オモリバランスは底層に生息する小ブナ相手にエサを効果的にアピールするため、仕掛け全体がじんわりと、ぎりぎりの浮力で沈み切る“遅ジモリ”に調整する。その際は0.1mm厚か0.17mm厚の板オモリで、ていねいに調節することが大切だ。これら羽根ウキシモリ仕掛けは、ホソを転々と歩く探り釣り、好ポイントに陣取るエンコ釣りのどちらでも使える。
なお、もう一つの効果的な方法として、寒タナゴ釣りでも紹介した連動シモリ仕掛けのイトウキ部分をこの羽根ウキに替える手がある。特に小ブナねらいのエンコ釣りでは効果的な仕掛けだが、その際は親ウキのサイズ(浮力)はタナゴ用に比べて2~3倍と大きくし、羽根ウキは5mm前後の小さめを4~6個くらい付けるものが使いやすい。前出の羽根シモリ仕掛け(数珠シモリ仕掛け)とはまた違うバリエーションだが、チャンスがあればぜひ試してみてほしい。
こちらの記事は『つり人』2021年3月号に掲載したものをオンライン版として公開しています。