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編集部2021年11月6日

本流のフライフィッシング・イトウ釣り 奥本昌夫「Fish Camp」レポート 前編

PICKUP 魚種別釣りガイド NorthAnglers イトウ

「キャンプ」というのは野外でのテント生活を指すほかに、「合宿」という意味も持つ。本流イトウをねらいながらのキャンプは、まさに合宿と呼ぶにふさわしい。例年、晩秋の短期間だけ楽しめる天塩川のイトウシーズン。スペイロッドを使ったスイングの釣りを、川とイトウから学んだ。

天塩川下流部でのワークショップのようすをレポート

写真と文◎奥本昌夫

 「キャンプ」というのは野外でのテント生活を指すほかに、「合宿」という意味も持つ。本流イトウをねらいながらのキャンプは、まさに合宿と呼ぶにふさわしい。例年、晩秋の短期間だけ楽しめる天塩川のイトウシーズン。スペイロッドを使ったスイングの釣りを、川とイトウから学んだ。

 


Profile 奥本昌夫
1969年、豊浦町生まれ。ソロキャンプ歴35年。1996年より北海道と海外とでフライフィッシングとソロキャンプ生活を行なう。『North Angler’s』、『FlyFisher』で連載多数。著書『北海道の鱒釣り』(つり人社)、DVD『イトウ戦記』など。キャンプとフィッシングガイド「Fish Camp」主宰。ウェブサイトはwww.fishcamp.jp

■関連動画もどうぞ! ドライフライでライズをねらう。【渚滑川/ニジマスのフライフィッシング】

天塩川下流部で開催したイトウ釣りワークショップ

 私が主催するFish Campはガイドサービスの他に、ワークショップも不定期で行なっている。数名の少人数、実釣を実地でレクチャーしながら、参加者にとって新たなフライフィッシングを体験してもらうサービスだ。今回は昨年開催した、天塩川下流部でのワークショップのようすをレポートしたい。

 11月初旬の当日は冷たい小雨が降ったりやんだりで、いつみぞれになるか……と心配していた。この季節特有の空模様だ。釣り人にとってはイトウシーズン到来を告げるものなので、むしろ「こうでないと……」と思わせる。

 天塩川本流のイトウ釣りは、晩秋の猿払川の耐え忍ぶような釣りと似ている。だが、ただ漫然とキャストを繰り返すだけではない。流れを読み、その都度フライを落とす位置や沈める深さを調整する。最も重要なのは、フライのスイングスピードを積極的にコントロールすることだ。

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 まったく釣れない日が続くことも珍しくない半面、同じ場所で何尾も釣れることがある秋の天塩川本流


 川は広大だが、ねらいは流心より手前側。若干下流寄りに60~90度の角度でキャストする。ねらうのは流心付近。きちんとターンオーバーをさせて、フライを一番速い流れに落とす。ラインをタイトに張って、フライからライン、ロッド、そして手もとまで一直線になった状態が望ましい。

 魚が掛かっても、すぐに合わせる必要はない。手もとに伝わるグググッという感触があっても、慌ててロッドを立てたりラインを引いたりせず、充分にフッキングしたと判断してからラインを引いて合わせる。10秒くらい待ってもいいだろう。ただしイトウは口が硬いので、追い合わせはしっかりとした行なったほうがよい。

 ワークショップでは、毎回そんな説明をするのだが、実際のところはいざ魚が掛かれば、そう落ち着いてはいられない。釣り人それぞれが、実践から少しずつステップアップしていくしかない。

 「イトウはそう簡単に釣れるものではない」ということは、すべての参加者が分かっている。この日もさすがにヒットは厳しいだろうなぁという雰囲気が漂っていた。

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 机上では分かりにくいことも、現場なら理解しやすい。これもワークショップの魅力だろう


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 スキニーなシェイプが多い天塩産アメマスも本流の好敵手。飽きない程度に釣れるのがうれしい


 2つ目のポイントへ移動した頃、空には晴れ間が見えてきた。昼近くになって、瀬の一番上でキャストしていたゲストの1人が魚を掛けた。近づくと「イトウのようだ!」と声を上げている。ヒット直後に大きく頭を振っていたらしい。引きが強いのか、その釣り人は下流へ10mほど走り下っていた。なかなか魚は寄ってこない。けっこうな大もののようである。近くには浅瀬があったので、ランディングに手こずることはなさそうだ。

 しばしのやり取りの後、ようやくネットイン。80㎝近いオスのイトウである。婚姻色がうっすらと残り、本流に長く棲み着いていたような、野武士のような風貌をした魚体だった。初めてのトライでのキャッチ。最初のヒットまで何年も通う人が多いことを考えれば、幸運というだけでは足りないような1尾だった。

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 野武士のような風貌のワイルドなイトウ


本流イトウのスイングの釣り

 ここで、改めてこの釣りの概要を説明しておきたい。

 本流イトウをスイングでねらう釣りは、いかにして大きなイトウにフライを食わせるか? ということに尽きる。どちらかといえば動きが鈍重なイトウの性質と、川幅、水量の多い釣り場であることを考慮すると、釣り方は次のようなものになる。

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 流れの中で生活するイトウは1ヵ所で暴れるだけではなく、下流へ疾走することも


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 スイングのイトウ釣りでは、ラインシステムは重要。フライを流す層だけでなく、スイングスピードのコントロールが大切


 まず基本的には、クロスで投げて下流側にフライをスイングさせる。釣り場は50m前後の広い川幅で、水量も多い。ベイトのある場所はどこもポイントになるが、スイングの釣りにこだわる以上、どこでもいいというわけにはいかない。広く長い瀬がスイングの釣りに適しているが、蛇行のカーブ、その内側から続く深瀬がベストの地形といえる。支流や小川の合流点があればなおよい。水流に変化のある緩い瀬は、釣れる可能性が高い。

 その一方で、ガンガン瀬のような激しい流れも無視はできない。イトウは広い瀬を動き回りながらエサを探すので、いずれにしても広範囲を探る必要がある。

 水温は低いほどよく、0℃でも充分な活性があるようだ。ポイントは底付近を探るのが基本だが、ときには水面近くを意識して急浮上するような、ニジマスのような動きをすることもある。

 エサはウグイなどの小魚のほか、底に棲むエビやザリガニなど。ときにはアメマスやカラフトマスも食べてしまう。動くものなら何でも食ってしまうと考えてよい。

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 川底スレスレでフライをスイングさせるとカニがヒット




★後編では本流イトウのラインシステムとタックルを紹介!

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