シケーダパターンの釣りでは、浮かべたまま待つ「ほっとく派」と、たまにチョンと動かす「誘う派」がいる。浮かべる位置がやはり重要になるが、カケアガリの少し手前という意見が多い。特に水面の虫を捕食するブラウントラウトは、かなり岸際を泳いでいる。「フライが岸に着くまで待つ」という人もいるほどで、実際に岸際で釣れることもある。
シケーダパターンの誘い方
まとめ◎North Angler's
6~7月は、一年で最も支笏湖がにぎわうシーズン。フライフィッシャーの目当ては、水面に浮いたエゾハルゼミを捕食するトラウトだ。静かな湖面が突然爆発する興奮を味わうと、たとえ数日間アタリもライズもない日が続いても、やっぱり湖岸に立ちたくなる。
この記事は『North Angler's』2022年8月号に掲載したものを再編集しています
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シケーダパターンの誘い方
シケーダパターンの釣りでは、浮かべたまま待つ「ほっとく派」と、たまにチョンと動かす「誘う派」がいる。どちらも「ワタシハソレデ釣ッタ」という文体で自身の派閥を推すので、おそらく正解はない、というか両方正解なのだろう。何人かに聞いた限りでは、「基本はほっとく派」が多く、「たまにラインメンディングの際などにチョンと誘うくらい」、「飽きたらちょっと動かすけど、通常はひたすら待つ」という意見がよく聞かれた。
フライを動かすか、それともただ浮かべて待つかは悩むところだが、今回はいずれも浮かべただけでヒットした
「誘う派」の人は、それによって魚が気づいてくれるケースがあるという。
「フライの下を魚が素通りするのが見え、試しに波紋が出る程度に誘ったらフライをくわえた」という話も聞いた。
実際に浮いているセミを観察すると、翅による波紋が出る程度。そのため誘うにしても、大きく動かす必要はないはずだ。
ちなみに支笏湖と同じくシケーダパターンの釣りが人気の栃木県・中禅寺湖でも、「ほっとく派」が多いようだ。場合によっては10分、20分待つこともあるという。
となると浮かべる位置がやはり重要になるが、カケアガリの少し手前という意見が多い。特に水面の虫を捕食するブラウントラウトは、かなり岸際を泳いでいる。「フライが岸に着くまで待つ」という人もいるほどで、実際に岸際で釣れることもある。
長く待つのにはメリットがあり、その間はラインの着水音や人間が歩く音を消すことができる。たとえばライズがあると、すぐにそこへ投げたくなるが、ラインの着水音で警戒される可能性がある。魚は1ヵ所にいるわけではない。フライが浮いている位置がライズからさほど遠くないなら、泳いでくるのをじっと待ったほうがよいケースも多い。
また岸近くまでフライが流されてから投げ直すというのは、魚を驚かせないための配慮といえる。もしかしたら魚は浮かべたフライやラインの下にいるかもしれず、ピックアップで驚かせてしまう可能性もある。湖岸ギリギリでピックアップすれば、川でポイントを流し切ってからフライをピックアップするのと同じで、魚に無用なプレッシャーを与えなくてすむ。
トラブルを防ぐリール選択
支笏湖では、近年シングルハンド・ロッドの人気が高まっている。遠投する必要がなく、ラインが着水するインパクトも減らせるので、6番くらいのロッドを使う人が多いようだ。もちろんより高番手のダブルハンド・ロッドやスイッチロッドでもよいが、6番のシングルハンド・ロッドは掛けた後のやり取りも楽しい。
尾ビレのきれいな魚体が水面のフライをくわえ、激しくファイトする。支笏湖のハルゼミシーズンは熱い
Photo by Souichiro Ura
Hardy
Ultradisc UDLA 5000
ラインにクセが付きにくいラージアーバー。ハーディー史上最軽量のディスクドラグ・リールだという。微調整が可能なマルチパッド・ドラグシステムで大型の疾走にも対応できる。細いラインの使用を可能にしたエンクロウズ・ラインガードを装備。サイズ展開は3000~10000まであり、写真の5000は4、5、6番ライン対応。カラーはBlack/Orangeのほか、Gun Metal Greenもある
オーバーヘッドで投げられるポイントは限られるので、シングルハンドでもスペイキャストができるラインが便利。もちろんフローティングタイプをチョイスする。
リーダーやラインは好みでよいが、長く待つ場合はフロータントを塗ったほうがよい。太さは2~3Xが基本。
支笏湖の魚はパワフルなので、ドラグ性能の優れたリールが欲しい。今回はハーディー『ウルトラディスクUDLA』を使用。このリールを選んだのは、以前に他のリールを使っていて、ヒヤリとした経験があったため。
昨年9月に54㎝のニジマスを掛けたとき、リールのフレーム本体とスプールのわずかな隙間にランニングラインが入り込み、絡んでしまったことがあった。あわてて外した直後、魚は疾走。もし外すタイミングが遅れていたら、おそらく簡単に切られていただろう。
『ウルトラディスクUDLA』は軽量のラージアーバーで、湖の釣りで使いやすいのだが、〝エンクロウズ・ラインガード〟を装備しているのが大きな特徴。フレーム本体のラインが出る部分が隙間なく閉じられているので、細いランニングラインでもフレームとスプールの隙間から抜け出たりしない。もともとは細いレベルラインを使うニンフの釣りにマッチするように設計されたようだが、同じく細いランニングラインを使う釣りでもトラブルを防いでくれる。またドラグの調整もしやすく、ラインの滑り出しがスムーズ。大型ニジマスが走っても対応しやすい。
フレーム本体は個性的な形状だが、ラインが出る部分にエンクロウズ・ラインガードが装備され、細いラインがすり抜けないデザインになっている
ハーディーというと、フライフィッシャーでは知らない人はいないほどの老舗。今年で創業から150周年を迎える。有名なのは『パーフェクト』などのクラシックなモデルだが、近年はラージアーバーのモデルもラインナップされている。
7月号でも触れたように、セミの季節は6~7月だけではない。湖ではさすがに真夏の釣りは厳しくなるが、秋になっても魚は水面の虫をよく食べている。前述のように今季は気温の上昇が遅れているので、7月もまだチャンスはあるはず。炸裂する水面が見たいなら、湖面にシケーダフライを浮かべてみよう。
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