偏光グラスは他ジャンルのアイウエアと比べてもかけている時間が最も長いサングラスだろう。自分なりの快適さを追求して偏光グラスを新調したところ、今年最高買い物になったし『シン・仮面ライダー』もばっちり楽しめた。
ストレスが解消され「心スッキリ!」
文◎新井健
偏光グラスは他ジャンルのアイウエアと比べてもかけている時間が最も長いサングラスだろう。自分なりの快適さを追求して偏光グラスを新調したところ、今年最高買い物になったし『シン・仮面ライダー』もばっちり楽しめた。
筆者プロフィール
新井健:つり人社ウェブサイト担当の35歳。月刊『つり人』では漫画「ゆかぴ船長」を担当。バスフィッシングをメインに船釣りも楽しむ怪獣オタク。2023年はアニメ版ガメラや『ゴジラ-1.0』など怪獣作品が目白押しで、来年もレジェンダリー版『ゴジラvsコング2』とかが控えており釣りとの両立に嬉しい悲鳴を上げている。
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偏光グラス新調でストレスすっきり
2023年3月下旬、私はタレックス「トゥルービュー」の度入りレンズで仕立てたばかりの釣り用偏光グラス・ZEQUE「Spike」をかけて、TOHOシネマズ日比谷のIMAX上映の席についていた。公開されたばかりの庵野秀明監督作品『シン・仮面ライダー』を見るためである。
……なんで!?!?
なぜ私がこんな奇特な行動に及んだかを長文で説明する前に、偏光グラスを新調した経緯を紹介しよう。これは偏光グラスのカタログ等でよく目にする「ストレスのない掛け心地」のなんたるかを学んだきっかけでもあり、これから偏光グラスを買いたい人の助けになるかもしれない。
さかのぼること2年前、私は当時かけていた偏光グラスに、ふたつのストレスを感じることが多くなっていた。
ひとつめ。かけてから目がレンズになじむまでにタイムラグがあり、体感では短くて20秒くらいから長くて2分ほど“クラクラする”状態を我慢している時間があること。
これは普段かけているメガネとレンズのカーブが違うのが原因と思われた。カーブとは、レンズの湾曲具合を示すもので、顔に添うように大きく湾曲しているのが8カーブ、メガネのレンズのように平面に近いのが4カーブ、中間的なものが6カーブと分類される。当時のレンズは6カーブだったが、度入りレンズの厚みで屈折率が大きくなっていることもあって、普段使いのメガネとかけ替えた瞬間に違和感が出てしまっていた。
ふたつめ。釣りの最中に耳が痛くなってくること。
耳に乗せているテンプル部が帽子で圧迫されるのが原因。私は紫外線対策のためネックゲーターで鼻から後頭部までを覆って釣りをすることが多く、その伸縮によってさらにテンプルに圧力がかかり我慢の限界に。
そこで、耳痛を防げるフレームに4カーブのレンズを合わせた偏光グラスを探すことにした。
選んだのはZEQUEの「Spike」。ZEQUEは田辺哲男さん、清水盛三さん、秦拓馬さんらも愛用する人気ブランドで、当サイトの「偏光サングラスおすすめランキング」の記事でも複数モデルがランクインしている。
「Spike」は2023年にラインナップされた新モデルだ。大きなスクエアの4カーブレンズが特徴。4カーブながらレンズ両サイドのフレームはひさし状に内側へ張り出しており遮光性も高い。
決め手になったのはバネを利かせた蝶番を採用していることと、テンプルのモダン部(耳掛け部分)の形状を自分で調整できるようこと。
モダン部を自分の頭に沿う形にして、バネの力で両側からホールドすれば耳を圧迫せずにかけていられるのでは? と試してみたところこれが大正解。
フレーム素材は樹脂とアルミとβチタンのハイブリッドでかなり軽いこともあり、帽子の外からホールドする形でズレることもなく一日釣りができるようになった。
一文字隼人(演:柄本佑)なら「心スッキリだ!!」と高らかに述べていたことだろう。
ZEQUEの偏光グラスはタレックスの「CR-39」という素材のレンズが標準装備。ガラスレンズと比べて非常に軽いので、これも快適なかけ心地に寄与している。
「CR」は一般的なプラスチックレンズ素材のなかで、最も透明度が高くガラスレンズにそん色のない光学性能をもつとされる。その性能を実感した実体験として『シン・仮面ライダー』鑑賞時のエピソードにつながる。
“トンネルのシーン”もくっきり
そもそも、なぜ偏光グラスをかけて映画を見たかというと、和真・新宿ANNEXで仕立ててもらった「Spike」が手元に届いて浮かれていた、のだけが理由ではない。タレックスの偏光レンズのなかでも色彩を忠実に再現することにこだわった「トゥルービュー」のレンズを入れていたからだ。
私は怪獣モノ特撮のオタクなのだが、仮面ライダーやスーパー戦隊など等身大ヒーローはこれまで履修することなく生きてきてしまった。
仮面ライダーをスルーしたまま、のうのうと生きていていいのだろうか? そんな気持ちを抱えていたところに『シン・仮面ライダー』が来た。監督は『シン・ゴジラ』で社会現象を巻き起こした庵野秀明。なんでも、庵野監督にとって仮面ライダーはゴジラよりも思い入れがあるキャラクターだそうで、作風も昭和のオリジナルに寄せたものに仕上げてくるだろうという前評判だった。
未履修勢が仮面ライダーデビューするのにこれほど正しい作品はないだろう。というわけで万難を排して観に行くことに決めたのだが、私が普段かけているメガネがブルーライトカットのもので、景色が黄色っぽく見えてしまうのが問題だった。
人生初ライダーは原色で見たい。とくに庵野監督はこじらせたオタク特有のこだわりで昭和ライダーの質感を再現してくるはずで、そのこだわりは色彩設計にも遺憾なく発揮されると思われた。が、予備のメガネもコンタクトも持っていない。
そこで手を伸ばしたのがタレックスの「トゥルービュー」を入れた度入りの偏光グラスだったというわけ。また、SNSのフォロワーさんに視覚過敏の人(釣りはしない)がいて、その人からまさにタレックスの「トゥルービュー」のレンズで映画鑑賞を楽しんでいると教えてもらったこともきっかけになった。
で、私も鑑賞。こじらせたオタク特有のクセの強い作風で、古くからのファンの間では賛否両論の評価になったようだが、なにかと暗い話題の多い昨今において人間の心の善なるものをとことん信じるドラマは私の心に刺さった。映像面でもライダーの鮮やかな紅いスカーフ、ソリッドなグリーンのプロテクター、レッドとグリーンのコントラストが映えるクモオーグのマスク、淡いイエローのハチオーグの着物などなど、余すところなく楽しめた。
驚いたのは鑑賞後にSNSで「暗くてよく見えなかったシーンがあった」との感想を目にしたことだ。問題のシーンは終盤にトンネル内で戦う場面で、劇場によっては暗すぎて見づらかったのだという。このシーンは“否”の感想をもったファンから批判材料にされるほどだったのだが、私の場合、IMAX形式の上映だったとはいえ偏光グラスをかけていたにも関わらずそんなことは気にならず、細部までくっきり見えたのだ。改めてタレックスレンズの明るさを実感した次第。
ちなみに私が「トゥルービュー」を選んだのは、バスの居場所を推理するのに大きなヒントとなるエリアごとの水の色の違いを察知したいから。ただ、最近は動体視力が鈍ってきて、キャスト中のルアーの行方を目で追えないことが増えてきたので、次の偏光グラスはコントラストを強めてくれる「ラスターブラウン」などのカラーにしようかと思っている。
思えば偏光グラスは顔という敏感な部位に触れているアイテムであり、他ジャンルのアイウエアと比べても最も長い時間かけ続けるアイテムだろう。目をケガや紫外線から保護するという役割も大きく、釣り場ではなるべく外さずに過ごしたいものだ。
そう考えると釣りの最中の「ストレスのなさ」が重要になってくる。もしロッドやリールほど真剣に選んでなかったという人がいたら、次のモデルはぜひ自分にあった快適さを追求して選んでみてほしい。
私は自分にあった偏光グラスをかけて釣りをする幸せを知ることができた。もし身内にテキトーな偏光グラス選びで満足している人がいたら「あなたも私と同じアングラー……!なのに、この幸せがなぜわからんのです!?」とクモオーグばりに猛プッシュしてしまうかもしれない。
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